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3.『成長促進』スキル

「ん……うーん……」


 窓から射し込む太陽の光に反応して目が覚める。

 眠い目を擦りながら少しずつ目を開くと、見知らぬ天井が広がっている。


「やっぱり、夢じゃないんだよね……」


 異世界に転移したのは実は夢ではないのかと思いながら床に入ったけど、どうやら現実だったようだ。

 それならこの世界で手に職をつけなきゃね。


 ……などと考えていると、ドアがコンコンとノックされる。


「あの、起きられてますか?」


 この声はリリーさんか、いったい何だろう?


「あ、今起きたところです。どうぞ」

「お邪魔します」


 リリーさんはドアを開くと、僕の方に歩み寄ってくる。

 その手にはカゴを持っているようだ。


「これ、お父さんが着ていた服です。着替えが必要な時は使ってください」

「あ、ありがとう。いいのかな、僕が使っちゃっても」

「はい、お母さんもシゲルさんなら大丈夫と言ってました」

「ガーベラさんが……分かりました、必要になったら使わせて頂きます」


 お父さんが着ていた、か。やっぱりリリーさんのお父さんは……。


「それと朝食もできてますので、用意ができましたら昨日と同じ部屋に来てください。食べ終わったら『鑑定』の続きをしますか?」

「ありがとうリリーさん。それじゃ、すぐに着替えます」

「では私は先に行って待ってますね。……それと」

「それと?」

「私にはさん付けしなくても大丈夫ですよ、それに口調もかしこまらなくても……シゲルさんは恩人なので」

「え、あ、うーん……ど、努力してみます」


 ……同い年ぐらいの女の子をさん付けしないなんてハードルが高いんだけど!?

 それに、行く当てのない僕を一泊させてくれたリリーさんやガーベラさんも、自分にとっては恩人なんだけどね。


 「えーっと……それじゃあ、り、リリー。」

 「はいっ」


 うう……なんだかすごく恥ずかしいぞ。まるで付き合い始めたばかりっぽい感じになるし……。

 でも、リリーは笑顔になってくれてるし、別の所に住むことになっても付き合いは続くだろうし、できるだけ慣れるようにがんばろう。




**********




「リリー、それじゃあお願いできるかな」

「はい……今は魔力は100ですね」

「それじゃ、薬草の種にスキルを使って……」


 朝食を終えると、僕たちは畑にやってきて早速スキルの調査を始めた。

 僕は魔力が最大値であることをリリーに確認してもらうと、薬草の種にスキルを使い成長を促す。

 そして、徐々に芽が出て、更に大きくなって花を咲かせ……。


「シゲルさん、ここで大丈夫です」

「分かった、ありがとう」


 僕はスキルの発動を止めると、すぐさまリリーに『鑑定』をお願いした。


「ええと……現在の魔力は10ですね」

「なるほど、薬草を1つ育てるのに必要な魔力は90になるんだ、ありがとうリリー」

「どういたしまして。シゲルさんのためですもの、何でもやりますよ」

「それじゃあ、またお昼ごろに『鑑定』してもらってもいいかな? 回復量も見ておきたいんだ」

「分かりました! それと、他に何かお聞きしたいことはありますか?」

「ええと、それじゃあ……」


 僕はしゃがんで薬草の葉を1つちぎり取る。


「これを『鑑定』してもらえる?」

「え? あっ、はいっ!」


 僕はリリーに薬草の葉を渡すと、それを鑑定してもらう。


「えっと……普通の薬草の葉ですね。ランクはE……一般によく出回っているものです」

「ありがとう。それで……この『鑑定』で経験値は入った?」

「はい、未鑑定の薬草ですので……」

「それなら僕が植物を育てて、それをリリーが鑑定したらお互いに経験値がどんどん増えていくってことで合ってるかな?」

「……!」


 リリーが目を見開く。

 それもそのはず、周りの物はみんな鑑定されていて経験値が入らないからスキルのレベルを上げることができなかったのに、僕が『成長促進』スキルで育てればそのアイテムを鑑定して経験値が入るようになったからだ。


「それじゃ、今後の『鑑定』は全部リリーにお願いしてもいい?」

「は、はいっ……! 私でよければ……」


 リリーは少し涙目になりつつも、提案を承諾してくれた。

 これで少しでもリリーの役に立てればいいな。


「ところで、この薬草の葉って1つで銀貨10枚になるの?」

「そうです。それが1つの薬草につき5枚ぐらい葉をつけますね」

「つまり薬草を1つ育てれば銀貨50枚かあ……」


 何か凄いボロい儲け方をしている気がする。

 なんだ1回のスキルで銀貨50枚(約5万円)って。

 ……いや、元々はその1/10だったから値上がりが凄いだけかな?

 1日にどれだけ育てられるかはまだ分からないけど、これならしばらくはお金に困らなさそう。


「それならこれを商品にしようかな……店はまだ持てないから暫くはどうするか考えなきゃいけないけど」

「でしたら、私の幼馴染に錬金術師がいるんですけど、その人に売るというのはどうでしょう?」

「錬金術師……薬草を使って錬金をするってこと?」

「はい。薬草を素材にしてポーションが錬成できるんです。今の薬草の品薄で頭を抱えてたんですよ」

「それなら人助けにもなるし、ある程度数がまとまったら持っていってあげたいな」

「ではその時はご紹介しますね」


 錬金術、か。正にファンタジーって感じだなあ。

 ……ん? そういえば薬草をポーションにした場合って……。


「ところで、錬成したポーションって未鑑定ってことになるの?」

「はい、できたばかりだとまだランクは分かりませんので……」

「それじゃ、その人に売る時の条件に『できたポーションはリリーが鑑定すること』ってしようかな」

「シゲルさん……お気持ちはありがたいのですが、錬金術師の所にいる子も『鑑定』を持っているので、私はその子の経験値にしてあげたいなと思ってます」

「そっか、リリーは優しいんだね」


 自分も長くレベルが上げられず苦しんだのを知ってるから、他人にその苦しみをできるだけ味わってほしくないんだな。


「さて、それじゃお昼まで時間があるし、僕は町に来たばかりなのでよければ町を案内してもらえないかな?」

「分かりました! 準備してきますね」


 リリーは小走りで家に戻って行った。

 宿屋を主にして、あとは食料を買える場所を案内してもらって……お金はあるから食べ歩きもしてみたいかな。

 ……あれ?

 女の子と食べ歩きしながら2人で町を歩くって……これ、傍から見たらデートじゃ……。


 ま、まあ僕とリリーはそんな関係じゃないし、食べ物を奢るのも案内のお礼ということで……。


 さて、それじゃ僕も準備をしなきゃ……。

 と、歩き出したら見事に右手と右足が同時に出たことに気付いた。


 ダメじゃん! めちゃくちゃ緊張してるよこれ! 変なことに気付くんじゃなかった!


 ……この調子で大丈夫なのだろうかと思いながら、部屋から銀貨を30枚ほど持ち出すことにしたのだった。

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