表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕のシュール・ナンセンス・SF・異世界小説作品集

嗤うポーカーフェイス

作者: Q輔

 私は一人暮らしのサラリーマン。会社から自宅への帰り道、私はいつも近所の公園を横断して近道をしている。その晩も、いつものように暗い公園を歩いていた。


 すると、近所でたまに見かける子供が、公園の砂場でスコップを持って立ち尽くしている。

 子供の足元には、何やら大きめの穴を埋め戻したような痕跡がある。


 その横を通り過ぎようとした時、子供が私に声を掛けてきた。


「おじさん、見てた?」


 見た? 何を? 闇の中に浮かぶポーカーフェイス。愛想の無い子供だ。私は聞こえないふりをしてその場を立ち去った。


 翌晩、私がその公園を歩いていると、数人の警察官が公園を捜索している。何かあったのですか? ご近所さんに詳しく話を聞くと、どうやら昨晩出逢った子供の弟が行方不明らしい。親が警察に捜索願いを出したのであろう。


 ピンポーン。私が自宅で休んでいると、インターホンが鳴った。カメラにはあのポーカーフェイスが映っている。


「おじさん、しゃべった?」


 薄気味の悪い子供だ。「今忙しいので」ドア越しにそう返事をして、私は子供の相手をしなかった。


 更に翌晩。テレビを観ていたら、なんと、あの子供の弟が死体で発見されたというニュースが流れていた。犯人は捜索中だ。


 ピンポーン。


「おじさん、ニュース観た?」


 怒涛のような恐怖に襲われる。「帰れ!」 私は布団に潜り込んだ。


 四日目の晩。恐怖で錯乱した私は、まるで吸い寄せられるように公園に向った。砂場では、子供が私を待っていた。手にした二つスコップの片方を私に無言で放り投げる。私は憑りつかれたように子供と一緒に砂場に穴を掘り始めた。


「弟ったらね、僕のゲーム機で無断で遊んだあげく、勝手に最終までクリアしちゃうんだ。ひどいよね。死に値するよね」


「私は何も見ていない。何もしゃべっていない。本当だ、頼む。信じてくれ」


 私たちは噛み合わない会話を続けながら、砂場に巨大な穴を掘り上げた。


「気になるでしょう? いい加減に質問しなよ」


 しばしの静寂。私は唾をごくりと呑み込んで尋ねた。


「……この穴はいったい」


 次の瞬間、漆黒の闇に子供の咆哮が轟く。


「お前が入る穴だよ!」


 子供がスコップで私の額を正面から殴打する。私は後方の穴の中にどうと転倒した。


 穴の上から子供が私を見ている。


 私がこの世で最後に見たのはあのポーカーフェイス。


 子供が砂を埋め始める。


 遠のく。意識が遠のく。

 

 ゆがむ。視界がゆがむ。


 わらう。ゆがんだポーカーフェイスが私をわらう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ