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我儘魔女姫は運命に逆らいたい  作者: 片岡トム
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5.

王都収穫祭


1年の豊作を祝う祭りで毎年規模は違うが国中からいろんな品が集められる。珍しい品を求めて貴族だけでなく商人や観光客またそれを目当てに芸人など町中が人と物で溢れ返る。

祭は7日間続き、その間、城も国内外から多くの品と客人が来て大忙しになる。


私も本来ならお客様を迎えるのだが、エイダン兄様に婚約者ができてからはその方が主に対応する様になった。

私は最終日のパーティーに出るだけでいいらしい。

私、降嫁する予定だしね。


街に行くのはその収穫祭の前日にした。


城内は何処も忙しくしているから私がしばらくいなくても気にしないだろう。護衛は図書館にいるといえば問題ない。  


収穫祭当日は人も多いが前日ならそこまででもないだろう。もしかしたり脱出後に役立つ情報もあるかもしれない。


私はうきうきしながらその日をまった。


―――収穫祭前日



思った通り、城内は朝から騒がしかった。


明日からのお祭りで交代で休みをとるのだろう。いつもよりメイド達が、いつもよりウキウキした空気をまとっている。 


「そういえばメアリは収穫祭のお休みはどうするの?」

「私は休みません。」

「え?お祭りなのに?」

「姫様も行かれないでしょう?」


驚く私に涼しい顔で答える。


考えてみるとこの3年間でメアリが休んでいた記憶がない。


「だ、駄目よ。メアリ、明日から5日ぐらい休んでいいから。私のことは大丈夫。1人でもしばらくは何とかなるわ。パーティーまでに帰ってきてくれればいいから!」

「姫様…」


近い使用人に休みを与えないなんて、なんて酷い主人なんだ。普段あんな態度でも、私に休みたいなんて言えなかったんだろう。


メアリは珍しく優しげな顔をする。


「私が休んだら誰があの甘ったるい紅茶を作るんですか。」


優しくない。声はこんなに優しいのに何でだろう。

だけどメアリの紅茶は好きだ。



午後になり、私はいつものように図書室へ行向かう

騒がしいから一人でのんびりしたいと夕方まで誰も来ないように言っておく。

護衛の方、すみません。


心の中で謝りながらウキウキしながら扉を閉める。


よし!


周りをもう一度確認して隠し扉を開ける。

中に隠していた変装用の服に着替え髪はおさげに結う。本当は帽子とか顔を隠せる物があればよかったのだか、平民に偽装するには派手すぎた。

メアリの目がなければ用意できたかもしれないが…バレた時恐ろしい事になりそうなので絶対に隠し通さなければならない。



隠し通路を抜けていつもの景色を眺める。

今日はここから一歩踏み出す。


外も王城と同様、いつもよりウキウキした空気になっている気がする。

頭の中の地図を確認して賑やかな声が聞こえる中心街に向かった。



「うわぁ」


街の喧騒に思わず声が出る。

前日でこんななのに始まったらどうなってしまうのだろう。


美味しそうな匂いがするのでそっちに引き寄せられる。と、たて続けに人にぶつかった。


「あ」

「気をつけろ!」


転びそうになるのをこらえる。

顔を上げ、ふと気付いた。


私どっちからきた?


あまりの人混みで方向感覚を失っていた。

周りを見るが初めての場所なのでもちろんわからない。


しまった。


だかまだ時間がある。いざとなったら高い所に登って王城の場所を確認しよう。

今の私は、魔術を使えば多少高い所まで登れるようになっている。


仕方ないのでそのままいろんな出店を見る。いろんな見たことがない屋台に目を奪われるが、残念ながらお金が用意出来なかった。

そういえば金貨は街中で使うと危険だとメイドのリリーから聞いたがそれならどこで使うのだろう。


キョロキョロしながら歩いていると音楽が流れてきた。

見ると小さな広場で音楽に合わせて何人かが踊っていた。


パーティーでは見たことないステップだか皆楽しげだ。近くで見ようとふらっと近づくと手をつかまれて気がつくと踊りの輪に入っていた。

見よう見まねでステップを踏む。拙い動きでも皆笑顔で楽しい。思わずこちらも笑ってしまう。

「ふふっ。」

自然と身体が動くようになってきた。

楽しい!

音楽が早くなってくる。気づくと人だかりが出来ていた。

ふっと近くで踊っていた男性に突然持ち上げられた。


「ひゃ?」


あまり可愛くない声がでた。男性はそのまま子供を高い高いする様に持ち上げクルクル回った。

周りに歓声があがる。


しばらく回ると男性はそのまま私を肩の上に座らせ、器用にお辞儀をした。私も控えめに手を振る。周りは歓声で溢れていた。


注目されちゃった…

本来はお忍びのはずなのに。


「お嬢ちゃん、ダンス上手いね。」

「盛り上げてくれてありがとう。」

楽団かなと思っていたが芸人だったようだ。

私を持ち上げた男性はよく見るとすごい筋肉をしている。服の上からでも盛り上がりが良く見える。

そんな人に抱っこされたなんてちょっと得した気分だ。


「楽しかったです。」

「お礼だよ。よかったら食べて」

「ダンスよかったよ。これももっていきな。」

あっと、言う間に囲まれて花や食べ物などいろんな物を渡されて手がいっぱいになる。

見かねて芸人の人が袋に入れてくれた。


「お嬢ちゃん本当によかったよ。よかったらまた来て踊ってくれないかい。」

城を出たら旅芸人になるのもいいかもしれない。

いろんな国に回れるなんて素敵だ。


「ええ、是非」

「疲れただろう。飲みな。」


コップに入った飲み物を渡してくれた。果実水なのだろう。甘い爽やかな匂いがした。

たくさん踊ったから嬉しい。


「ありがとうございます」


コップに口を付けた時、少し離れた所にいる人と目があった。


すらっとした青年で周りと似たような平民の格好をしている。少し長い茶髪で眼鏡をかけているが、その奥の瞳は青で、私のよく知っている、大好きな色だ。





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