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匂わせるのはキミのせい  作者: 薪木燻
3/32

投稿その3

 隣の席の真純くんは読書が好きみたい。休み時間になるとよく本を読んでいる。

 上品なブックカバーをかけて、真剣に本を読んでる真純くん。集中している横顔もカワイイな。

 そういえば“共通の話題”って、距離がぐっと縮まる鉄板のネタだよね。

 ――ということで、今夜の私のインスタのネタは決まりました。


「小説って本当におもしろいよね。#あの人のオススメ」

 文庫本にブックカバーをかけて(模様は真純くんとお揃い)、優雅に本を読みながら自撮りしている写真。

 ちょっと伊達メガネなんかかけちゃってインテリ感もアピール!


 【匂わせポイントその3】ハッシュタグで“彼氏との共通の趣味”と“成長させてもらってる私”を匂わせ!


 これできっと真純くんもライバル心を燃やして、私に小説をオススメしてくれるはず!

 ということで、翌朝登校すると、真っ先に真純くんに話しかけた。

「ねぇねぇ、見た?インスタ」

「見たよ!すごいね!彼氏さんも本読むんだ~」

「そうなの!そうなの!あの人も小説が好きでさ」

「いいなぁ。ボクはラノベしか読まないから尊敬しちゃうな」

「ラ、ラノベ?!」

「香織さんはどんな小説を読んでるの?ブックカバーしてたからわかんなかったけど、あの本のタイトルは?作者さんは?」

 ……ど、どうしよう。タイトルとか作者とか言われても、お父さんの本棚にあった文庫本を適当に持ってきただけなんだけど。

 うーんと、えーっと、なんだっけな、なんか読みやすい簡単な名前だったと思うんだけど……中なんとかだっけ……中、中、あ、思い出した!

「え、えっと……中原……なかや?」

「なかや?」

「真ん中の『中』に『也』って書いて」

「ああ、『中原中也』のことだね」

「そうそう!それ、ナカチュー、ナカチューだった!」

「へぇ、小説好きな人はナカチューって呼ぶのかぁ。勉強になるな~。香織さんも彼氏さんとは「ナカチュー」で通じるんだね」

「も、も、もちろんそうだよ。ナカチュー」

 ふぅ~なんとか乗り切ったかな……

「しかも中原中也って、小説も書いていたんだね!詩人なのにすごいね」

 ひえ~!乗り切れてなかった!!

「そ、そうそう!小説も小説!キングオブ小説の推理小説!すっごい名探偵が出てきてさバッチバチにバッキバキで……」

 ……もう後には引けなくなってしまった。

「面白そう!読んでみたいな。今度ボクにも貸してほしいな」

 あー!せっかく真純くんとお近づきになれるチャンスが目の前に転がり込んできてるのに!!

 ぐ、ぐぅ……これぞまさに「苦渋の決断」って言葉がピッタリのシチュエーションではないですか。

「ご…ごめんなざい。あの本……借り物で……もう……返じぢゃっだの……」

 なんとか泣かないで言い切ることができた!私、頑張った!

「そっか。それじゃしょうがないね」

 あぁ真純くん、ごめんなざい!ごめんなざい……

「でも“返した”ってことは、今朝学校に来る前に彼氏さんと会ってたんだね。相変わらずラブラブで良かったね」

 

 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】せめて中原中也をウィキペディアで調べておくべきだった。


 「ナカチュー」という言葉は一生封印しよう。

 ん?そういえば、なんか似た言葉があった気がするけど……

 あっ「セカチュー」か。(古いな)

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