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匂わせるのはキミのせい  作者: 薪木燻
27/32

投稿その27

 最近は変化球ばっかり使いすぎて、真純くんとの距離が1ミリも縮まってない。

 だから、たまには直球を投げてみよう!


 匂わせの直球って言ったら、縦読み。

 今までこれを使ってこなかったのは、真純くんがピュアすぎて、縦読みに気がつかないと思うから。

 でも大丈夫。今朝の時点で、種を蒔いておいたからね~。


「ねぇ真純くん、縦読みって知ってる?」(直球だな)

「縦読み?なんか聞いたことあるかも」

「ああいうのってどう思う?」

「見つけられたら楽しそうだよね!」

 ……真純くん、それって謎解き的な興味だよね?

 でも興味を引けたみたいで良かった。


 よーし!これで今日、縦読みを仕込んだツイートをしたら、気付いてくれるはずだぞ~!


 ということでさっそく縦読みツイートにチャレンジしてみた。


「まさかの展開!

 すっかり忘れてた!

 みかんが机から出てきた!

 らっきー!

 ぶどうも出てきたらいいな」


 ……なにこれ!?

 本文の意味がわからん!縦読みも直球すぎる!

 これじゃ匂わせじゃなくて告白だよ。

 うーむ、やってみると意外にムズいな~。

 そしたらこんなのはどう?


「すきすき!

 きすきす!

 だんしの中でも

 よんばんめぐらいに好き!」


 いちばんじゃないのかい!

 しかも縦読みと本文が同じ内容だし!


 それに「だ」とか入ってるとキツイな~。

 そういう言葉はなるべく使わない方がいいんだろうね。


 うーん、なんか笑点の「あいうえお作文」みたいになってきたぞ。

 ちょっと楽しいかも。

 それじゃもう一声、いってみようか!


「こんしゅうまつの

 えいがたのしみだよ

 がんばってはやおきするよ

 きっとおもしろいから!

 きゅうじつなのにありがとう

 たくさんいっしょに

 いられたらいいね」

 

 お~!なかなかいい出来なんじゃない?

 ……でもこれじゃ、真純くんに伝わらないかなぁ。

 「声が聞きたい?はぁ?誰の?彼氏の?そんなのいつも聞いてんじゃん!」

 ってなっちゃいそう。(真純くんはそんなこと言わない)

 うーん、困ったな。


 あ、だったらシンプルに考えてみよう

「真純」の文字を使えば良いんじゃない?

 文字数が少ないから、考える時間も少なくて済むしね。


 ということで、結局夜中までかかって投稿したのは、こんな縦読み&匂わせツイート。


「真っすぐで

 純粋な

 君が好きだよ」


 【匂わせポイントその27】これってもう告白じゃない!?さすがに気付くでしょ。


 これを読んだら真純くんもきっと


 「かおりさんが縦読みに書いているのってボクのこと?

  おーまいごっど!

  りょうかいです!

  さいこうだよ!!

  んーたまらん!!

  !!!!!!!!」


 って、縦読みで絶叫してくれるかもしれない。


 翌朝、ドキドキしながら真純くんに声をかけてみた。

「ねえ、真純くん、昨日のツイート読んでくれた?」

「読んだよ。ずいぶんストレートなメッセージだったね!」

「そ、そうかな~」

「彼氏さんも喜んだんじゃない?」

「うーん、そうかな~まだ聞いてないからなぁ~」

「あんなストレートな告白だったら、絶対に伝わってるよ」

 んん~真純くん、もしかして……。

「えっと……何か気付かなかった?」

「何かって?何のこと?」

「えっとあの……縦読みとか」

「えっ?そうなの?ぜんぜん気付かなかったよ!」

 あー予想通り気付いてなかったか!!


 するととつぜん真純くんが、カバンの中をゴソゴソし始めた。

「真純くん?」

「あった!」

 手の中にあったのは、真純くんのスマホ!!

「ねぇ香織さん、もう一回ツイート見てもいいかな?」

「や、やっぱりだめ~~!!」

 私は真純くんのスマホを取り上げると同時に、自分のスマホを取り出してソッコーでツイートを削除した。

 よっしゃあ!!証拠隠滅完了!!

 さすがに目の前で本人に読まれるのは恥ずかしすぎる~!!

 心臓が止まるかと思った!!


 真純くんは何が起こったのかわからず、不思議そうな顔をしていたけど、私が「操作間違えて消しちゃった(テヘペロ)」って言ったら「やっぱり香織さんは面白いなぁ」って笑ってた。

 もういい!今日だけは「おもしろ枠」でも許そう!!

 ……それにしても危なかったなぁ。縦読みはまだまだ早すぎるかも。


 自分だけドキドキ度100%!縦読みは恥ずかしすぎて失敗!


 【反省点】夜中の勢いは怖い!もう少し練習してから投稿しよう。


 真純くんがツイートの文面を覚えていたらヤバいと思って、スマホを返しがてら聞いてみたら、「朝急いで見たから、良いメッセージだなとは思ったけど、細かいところまでは覚えてないよ」だって。

 あー良かった。万が一、文面を全部覚えられていたら大変なことになってたよ。

 夜中とはいえ、あの3行の完成度に酔いすぎてツイートしちゃった自分が恥ずかしい。

 まるで「恋するうさぎとムーンダンス」だよ。


 いい?香織、もう一度ちゃんと思い出して。

 「匂わせ」はあくまでも「匂わせ」であって、直接言えるなら、とっくに言ってるはずでしょ。

 「匂わせ」っていう茨の道を選んだ以上、告白するのはSNSじゃダメ!

 いつか自分の口でちゃんと言えるようになるまで頑張ろうね、香織!

 (結局恥ずかしくなって駆け込んだトイレの鏡の前で)

「何ぶつぶつ言ってんの香織?」

 ――クラスメイトに見られた。

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