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匂わせるのはキミのせい  作者: 薪木燻
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投稿その2

 今日からハンドクリームを変えてみたんだけど、隣の席の真純くん、気付くかな。

「あれ?なんかいい匂いがする!」

 おっ、さっそく来た!さすが真純くん、私のことが気になって仕方がないみたい。

「もしかして、これって……」

 そうそう、私のハンドクリームの……

「焼きそばパンの匂いだ!」

「違うだろ!」

 思わずツッコんでしまった。

「うーん、焼きそばパンだと思うんだけどなぁ」

 いや、よーく嗅いでみると、確かに焼きそばパンの匂いがしている。

 目でその発生源をたどってみると……あいつか!一番窓際の太井くんか!

 あの野郎、朝のホームルームの時間なのに、焼きそばパン食ってやがる!

 窓開いてるし!風向きのせいで真純くんのお鼻にソースの香りが届いっちゃったじゃないか!

 真純くんのかわいいお鼻には、私の「ホワイトコットンの香り」が届くはずだったのに!

 ――結局その日は一日中窓を開けていた太井くんのせいで、私のハンドクリームの匂いが届くことはありませんでした。


 翌朝、私は教室に入るなり、真純くんに話しかけた。

「ねぇ、私のインスタ見てくれた?」

「うん見たよ。すごいね。あんな素敵なプレゼントくれる人いるんだ」

 私がインスタに投稿したのは、イニシャル入りのプレートが付いたブレスレットを手首に巻いた写真。


 【匂わせポイントその2】彼氏からもらった風のイニシャル入りブレスレットでおそろいアピール!


 真純くん、こんなものをくれるのは恋人しかいないよ……。どう思ってんのそこんところ……。

「あ、あの写真見て、ど、どう思った?」

「うーん、そうだなぁ、あの写真見てねぇ……」

 ドキドキ。

「手が綺麗だなと思った」

「えっ!そっち!?」

「そっちってどっち?」

「な、なんでもない!」

「あれ見て思ったんだけどさ、ちょっと手見せてもらってもいい?」

「み、見せてあげなくもないけど……」

 私は手の甲を差し出した。手の平はドキドキして手汗がひどいから、見られるのが恥ずかしい。

「やっぱり綺麗だなぁ」

 や、やめて!そんなにじっくり見ないで!

「あれ?なんかいい匂いがする!」

「えっ?」

「高い柔軟剤みたいな……」

 じゅ、柔軟剤はちょっとあれだけど……

「ホ、ホワイトコットンの香りだよ。いい匂いでしょ」

「うん、いい匂いだね。そっか、香織さんって、今流行の「匂わせ女子」なんだね!」

「い、いや、そ、そう言い切れなくもなくはないけど……」


 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】気付いて欲しいのは、そっちの匂わせじゃない!


 真純くん「匂わせ」の使い方間違ってるから!

 でも手のこと褒めてもらえて嬉しかった。

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