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匂わせるのはキミのせい  作者: 薪木燻
10/32

投稿その10

 最近のいちばんの悩みは、真純くんと話す機会が少ないこと。

 話のきっかけ作りのためにSNSで「匂わせ投稿」をしてるんだけど、ここ数日は朝に少しだけ言葉を交わすだけで終わってる。

 ――香織「見た?」真純「○○だったね」香織「そうなの!」二人「あはは~」ってな感じで、もはやモーニングルーティンになっている。

 だめだだめだ!今のままじゃダメだ!マンネリ打破!もっと積極的にアプローチしないと!


 ……でもたまには、真純くんから話しかけて欲しいな~。

 いっつも私からだもんな~。私が話しかけなかったら話しかけてくれないのかな~?


 ――そこで今回は、匂わせておいてから、しばらく真純くんの様子を見てみよう!

 題して「想いを発酵大作戦!」

 置いておけば置いておくほど、想いが発酵して強い匂いになるかもしれないからね!


 ということでさっそく、真純くんが話しかけやすそうなネタを散りばめた、インスタをアップしてみたよ。

 ――部屋の真ん中で自撮りした写真。棚にもテーブルにも、たくさん物を置いて、気になるところがいっぱい!

 そしてコメントにはこんなメッセージも。

「部屋を模様替え。いろいろ増えてきたなぁ。#プレゼントありがとう #思い出もありがとう」


 【匂わせポイントその10】1枚のインスタでも数撃ちゃ当たる!彼からのプレゼントまみれで匂わせ!


 1枚の写真の中に、食べ物もあるし、本もあるし、インテリア雑貨もあるし、私の髪型もメイクもいつもと違う。

 他にもいろいろ映り込んでるから、どれかひとつでいいから引っかかってくれないかな。


 翌朝、私は登校するなり、自分の席に一直線。座ったまま息を潜めた。

 今日は真純くんから話しかけてくるまで、ずっと黙ってるぞ。でもあいさつもしないなんて、私、耐えられるかな。

 先に登校している真純くんは、私に気付かないで黙々と本を読んでいる。

 うーん、これはなかなか骨が折れそうだな~。

 ……それにしても、こんなにじーっと見てるのに、全然気付かないなぁ。

 まつげ長いなぁ、肌白いなぁ。髪サラサラだなぁ。目立たないけど隠れ美少年だよなぁ。

 このまま誰にも見つかりませんように……。


 なーんて考えてたら、あっという間に放課後ですよ。

 ちょっと!今日ひとことも会話してないんですけど!

 うわっ!真純くんが鞄持って帰ろうとしてる!!

 ど、どうしよう。もう今日は話しかけてもらえないのかな……。

 あぁ真純くんが帰っちゃう……真純くーん……。

「香織さん……」

 えっ!真純くん!?話しかけてくれた!!

「なんか今日、元気なかったみたいだけど……」

「……そ、そうかな」

「大丈夫?もしかして模様替えで疲れちゃった?」

「ち、違うの!そうじゃなくて……ちょっと寝不足なだけ」

「そう、良かった~。心配だったんだ」

 ……『だった』って、ずっと気にしてくれてた?

 そうだったら嬉しい!

 きっと今日は、これが最後の会話になるから、もう私から聞いちゃおう!

「ねぇ真純くん……昨日のインスタ、どうだった?」

「素敵だったよ」

「えっ?」

「香織さんが大人っぽくて素敵だった」

「え、あ、ありがとう。……でも、なんでそう思ったの?」

「うーん、髪型かな。メイクもいつもとちょっと違ってたような……」

 あ~真純くん、私のことちゃんと見てくれてるよ~。幸せだなぁ。

「ねぇ香織さん」

「は、はい!」

「明日は元気な香織さんに会えるかな」

「うん!明日は大丈夫!絶対大丈夫だから!!」

 もう私、真純くんが優しくて、口元緩みまくってる。これじゃ気付かれちゃうよ~。

「良かった。楽しみにしてるね」

「うん!」

「だから今日は、彼氏さんに癒やしてもらってから、ゆっくり寝てね」

「えっ、あ、うん……」

「おやすみなさい」


 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】匂わせたら話しかけること!心配されるたび心が痛くなる。


 今日は真純くんに悪いことしちゃったけど、極上の「おやすみなさい」いただきました!!

 バッチリ脳内録画したから、寝る前に100回リピート再生しようっと!(ドキドキして目が冴えちゃうかも)

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