表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で今日も逃げてます!  作者: (^‿^)> イヤー、アハハハ
第一話
2/3

002  こんにちは赤ちゃん~月は無慈悲な夜の女王~ Scene1

【著作権フリー作品】 3部分完結の2部分め。読み切り短編連載形式ですのでお気軽にどうぞ。


002 Scene1

   CAST 一乃(ひとの) (りょう)挿絵(By みてみん) 




 一つの舞台の幕が降りる時、新たな舞台の始まりが告げられる。


 地球という舞台から、名もなき惑星にある異世界の舞台へと、場を移し。


 一乃(ひとの) (りょう)の物語は幕を開ける。


 それは、寒空に静かに輝く銀色の月の下、人一人いない白い枯れ草の平原に続く道の上で始まる。


 そこに、地球最後の男として地球人類の歴史に幕を降ろし、新たなる異世界へ降り立った了だったが、何故か腑抜けていた。


 腑抜け──臓腑(はらわた)を抜き取られたように、つまりは死者同然という意味の、腰抜けの一段階上の状態である。


 いわゆる虚脱状態、魂が抜けたような表情(かお)で、‘ へのへのもへじ ’そのものの風貌で、木偶ノ坊のように突っ立っている様は、つい先ほどまで地球にいた時の生命力に満ち溢れた姿とは、かけ離れすぎていた。


 その原因は何か?


 この異なる世界に満ちた有害物質のせいか?


 Geen──この異世界、この惑星の大気組成は地球と何ら変わりなく、何より先ほどの地球の大気には致死量の核廃棄物や有害物質が満ちていた。


 そんな物質からも逃げていた了が、既知の有害物質でこの様な姿になるわけがない


 ならば、未知の有害物質、あるいは安直な娯楽( うれすじ )の異世界物語では決して語られない魔力という未知のエネルギーの悪影響か?


 Geen──有害物質などなく、魔力はこの異世界に満ちていたが、了には何の影響も与えていない。


 では、何が了をしてこのような有様に(しか)らしめたのか?


 何がというわけではなく、強いて言うならば…… 気分の問題?


 そう、気力の問題というやつなのだろう。



 気力──目に見える事しか見ようとしない者は、無限にあるか、まったくないかのように扱うが、それは有限で大切に育てないと直ぐにつきてしまう。


 了を了たらしめている‘ 逃気 ’が、一時的に欠乏しているのだ。


 そう、闘気にあらず、逃げる気と書いて‘ 逃気 ’が!


 といっても、MP切れとか、ガス欠とかの類ではない。


 ‘ 逃気 ’とは、そういうエネルギー的な不思議パワーではない。


 意志を保ち続ける気分を、‘ やる気 ’というように、根性を保ち続ける気分を、‘ 根気 ’というように。


 逃げるために必要なのが、‘ 逃気 ’である。


 そう、まさしく、気分の問題!


 つまり、了はだらけた状態なのだった。


 普通の人間が何かをするのに、、‘ やる気 ’と‘ 根気 ’が必要なように、‘ 九頭竜避術逃法 ’を極め続ける事だけを求める了にとって、‘ 逃気 ’がない状態とはだらけきった状態。


 そう! 逃げるための相手や状況がない時のデフォルトな了の状態がこれなのであった!!


 地球では、ただのニートだったので、ある意味似つかわしい姿ではあるが、異世界に来たニートは、腑抜けたままではないだろうから。


 やはり、‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう) ’継承者、一乃(ひとの) (りょう)──とことん、変な男である。


「んー、どこかにいないかな?」


 その変な男の口から出たのは、変な男にふさわしい変な台詞だった。


 どっちに行こうかではなく、何処に行こうかでもなく、()()()()()()()()()、である。


 何がや!? 何でやねん! 


 ここにツッコミ気質の関西人がいれば、思わずそうツッコミを入れただろう。


 もちろん、いないが。


「‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう)探訪(たんぽう)一法(いっぽう)位置人(いちじん)(ほう)


 ツッコミを入れる者がいないので、了は、普通の人間のように近くの街や村へと向かおうなどと考えもせず、‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう) ’の術を使う。


 ‘ へのへのもへじ ’、そのものだった‘ ふぬけ顔 ’も、へのへのもへじを思わせる顔程度には引き締まり。


 そして、何かを達成したらしく、不敵な顔とはいえないまでも、‘ どや顔 ’とはいえそうな表情を‘ もへじ顔 ’に浮かべ、つぶやく。


「あったか──‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう)転逃(てんとう)九法(きゅうほう)天涯許独(てんがいこどく)の封《ほう》」


 そう声が響くより早く、その姿は消えていた。


 天涯許独てんがいこどくの封《ほう》。


 天涯に独りを封じる事を許す──身も蓋もなくいうなら、単独瞬間移動(テレポート)


 何かから逃げるために使われる術だが、逃げるべき相手の姿どころかツッコミ役すらいないせいか。


 やりたい放題というやつである。


 では、この変人は何がやりたいのか?


 それは、’探訪(たんぽう)や、位置人(いちじん)(ほう)という術法の名が示すとおりに人探しである。


 もちろん、ツッコミ気質の関西人がいないので、探したわけではない。


 関西人でなければツッコミ気質の人間もいるかもしれないが、‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう) ’にしか興味がなく、しかも思い切りその秘術を使う事を()()()()事で味をしめた了が探すのは、()()()()()しかない。


 そう! 位置人(いちじん)(ほう)とは、‘ 逃気 ’を探訪(たんぽう)するための秘法であった。


 不思議な力の源である不思議パワーで、物理現象や心霊現象や精神状態に影響を及ぼすのではなく。


 不思議パワーで、不思議な力を使うための気分を盛り上げるために、‘ 逃気 ’を探す。


 そして、‘ 逃気 ’がないという了にのみ通じる‘ 逃げたい状況 ’から逃げるために、瞬間移動(テレポート)


 意味不明である。


 変人が使う秘術秘法は、やはりヘンテコだった。


 変人だから、変なコトをするのか、変なコトをしているから変人と呼ばれるのか?


 卵が先か鶏が先か?


 科学的に考えるなら卵だが、不思議パワー界隈の話は、全て科学的に考えるならやはり意味不明なのだ。


 ‘ 九頭竜(くずりゅう)避術(ひじゅつ)逃法(とうほう) ’の継承という意味では、変な竜が伝えたらしいので、それを信じるなら変な術という卵が先。


 つまりは、変な竜だから変な術を授けたのだろう。


 だが、そんな変な術を科学の時代()()()地球で一心不乱に追い求めるのは、変態……いや、変人でなければ、ありえないだろう。


 変な外国人なら、「オー、HENTAI! ア・リ・エ・ナ~イ♪」と変な発音でいうはずだが……。


 もちろん、変な外国人は、いない。


 だが、そう考えれば、了は、変……人だから変な術を学んだ。


 つまり、変な鶏が先だ。


 卵が先か鶏が先か?


 変人だから、変なコトをするのか、変なコトをしているから変人と呼ばれるのか?


 よく考えると煩瑣な(ややこしい)話である。

 

 実に瑣末な(どうでもいい)話でもあるが。


 どうでもいいと無視するには、変すぎる話でもあった。


 だから、地球で‘ 逃し屋 ’をしていた了に、「何故、逃してくれるのか」と尋ねる者は少なくなかった。


 人は、理不尽を嫌う者だから、当然といえば当然だろう。


 野生の獣や獣物(ケダモノ)同然の人間には、‘ 理に適うかどうか ’というのは意味がないけれど、人には(ことわり)というのは大切な基準なのだ。


 だから、誰もを平等で公平に扱う事が前提の(ことわり)を捻じ曲げる言葉は理屈と呼ばれる。


 了は、理不尽ではなくても理外の術法を使い、理解不能の行動原理で動くから、そう問いたくなるのだろう。


 その問いに対する答えは、いつも一つ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ