人助けです
「私に助けを呼ぶ声! 念願の魔法少女としての活躍のチャンス来た!」
グっとスティック握り高らかに掲げる。
「ちょっと待って、折角の魔法少女としての初仕事だし、やっぱりただ助けるだけじゃあインパクトにかけるよね。虹でもかけて駆けつけちゃう? それとも後光を光らせながら空から舞い降りる?」
「おい、そんなことしてる場合じゃないだろ、早く助けに行けよ」
魔法少女デビューを飾るのだ。
どうせならド派手に演出したかったけど、グラさん早く早くとぐいぐいと引っ張ってくるので向かうことにする。
声の聞こえた方向に行くと。
木を背に座り込む女の子と先程見た二足歩行の狼が3匹が女の子を囲んでいた。
「リアン、女が狼に襲われてるぞ。早く助けてやれ」
「いや待ってグラさん、ここはもうちょっと女の子がピンチになってギリギリになったところで華麗に助けに入った方がきっともっと輝くと思うの私が」
「こいつヤベェ」
その時薄暗かった木々の隙間から光が差し込み、女の子の姿がよく見えた。
顔に多少の泥がついているが金髪のショートボブに薄青色の瞳の小柄な体には不似合いの大きな胸の大人しそう美少女だった。
(薄汚れてるのにそれが逆に庇護欲をそそられる、多分私の次くらいになんて可愛い!)
「よしグラさん作戦変更、あの子を助けるよ」
「なんだいきなり」
「だってあの子すごい可愛いんだもん、私の次に!」
「だから何だというんだ」
「可愛いは正義、助けない理由はない。そして助けた私に感謝してちやほやして欲しい! んでもって一緒に魔法少女してくれるかもしれない」
1人で戦う魔法少女物も好きだけど私は複数人が仲良くチームを組んで戦う魔法少女物も大好きなのだ。
私は持っているスティックを近距離から遠距離モードにし、女の子の近くにいた二足歩行狼に向けてスイッチを押した。
「待ちなさい!」
『ガルルルル!?』
「え? な、何?」
「よってたかって一人の女の子を襲おうだなんて、例え全世界5千万人のもふもふスキーが許しても、この美少女仮面……じゃなかった魔法少女プリティリアンが許しません。魔法少女ファイヤー!」
伝説の特撮仮面マントヒロインの決め台詞を叫ぶと、既にスティックの先端から出ていた火の玉はまっすぐに狼に直撃し、先程同様狼の火だるまが出来た。
そのまま私は思い切りジャンプをした。
その瞬間私が履いているブーツからハート型の光の輪が手前にいた二足歩行狼に向かって放出され狼を拘束した。
「魔法少女キーック!」
動けない二足歩行狼は真正面から私の蹴りを受け吹き飛ばされた。
最後に左手のグラさんを最後の狼に向け大きく口を開けた。
「はぁ!?」
「グランリベルオンシュート!」
瞬間グラさんの口から大量の閃光弾が発射され狼が一瞬にして蒸発した。
どうみてもオーバーキルだ。
「うん、可愛いは正義! 私超可愛い!」
私は華麗にウインクで決めポーズを取った。
「ちょっと待て何か俺の口から何か飛び出たぞ! あとさっきの『プリティリアン』ってのはなんだ」
「いやぁ、ぬいぐるみを作った時にちょっとした裏ワザみたいなのがあった方がいいかなって思って、こっそりを加えてみました。『プリティリアン』ってのは私の変身後の名前かな、変身している時は名前が変わるものなんだよ」
「なんでだよ」
「変身するってことは違う自分に変わるってことなんだよ、違う自分なら名前が違うのは当たり前でしょ」
「そんなもんか」
「その方がカッコいいでしょ」
「そっちが本音じゃねーか」
私は再びジョウロ魔道具を取り出すと燃えている狼の火を消した。
それにしても私が撃った火の玉は鍛冶師が窯に火を入れる時に使われる、ドワーフなら誰でも使える一般的な火魔法だ。
それを圧縮して連発出来るようにスティックに保存しているだけなので別段すごい魔法でもない。
もしかしてこの狼って火が弱点かもしれない?
とにかく二足歩行の狼は倒せたので私は座り込んでいた女の子に近づいた。
「大丈夫だった?」
「助けて頂いてありがとうございます」
女の子はポカンとしていたが私の声にガバリと頭を下げた。
よく見るとこの巨乳美少女は馬車で一緒だった冒険者っぽい女の子だった。
全身泥だらけの革鎧を着て、腰には二本の短剣が下がっているので近接戦闘職なんだろうけど、大人しそうな女の子には似合っていない。
(この金髪美少女には……そう、あのお菓子とライフル銃がトレードマークの魔法少女の衣装がよく似合うはず……)
「私はユーリエと申します。ワイルドウルフの群れを一瞬で倒してしまうなんて、それにそのお召し物も見慣れないデザインですし、もしかしてかなり有名な冒険者か魔術師様ですか?」
どうやら二足歩行の狼はワイルドウルフという名前らしい。
私は立ち上がりスティックをくるりと背後に回すと私の背後に光の翼が浮かび上がった。
ユーリエさんはビクリと体を震わせたが、私は構わずウインクとピースサインで可愛くポーズを取った。
「私は魔法少女プリティリアンだよ」
「え? 魔法……少女?」
「魔法少女だよ」
「あ、はい、ありがとうございます魔法少女プリティリアンさん」
(決まった。今の私超魔法少女っぽい……)
私が感動をしているのをよそに、ユーリエさんは頭に?マークをだした顔をしていた。
ドワーフの村でもそうだったけど魔法少女っていう単語はこの世界には無いみたい。
「それでユーリエさんはここで何を?」
「……私、一応冒険者なんですがまだ駆け出しで、別の町に届け物をする依頼の帰りなんですが」
「ですが?」
「その、宿に泊まるお金がなくて、それで森に薬草でも見つけることが出来たら売ってお金になるかなと……」
不遇美少女! ますますあのキャラみたいで美味しい。
やっぱりこの子とは仲良くなって魔法少女に勧誘するしかない。
そして私の手で育て上げるしかない。
「それで薬草は見つかったの?」
「それがまだ……」
「じゃあ、私が一緒に探してあげるよ」
「ほ、本当ですか!?」
「困っている人は助けるのが魔法少女だからね」
「その魔法、少女……ってなんですか?」
薬草を教えて貰いながら手分けして取りながら懇切丁寧に魔法少女について説明をした。
説明をするたびにユーリエさんの頭の?マークは増えていく。
「……なるほど、魔法少女とはつまり困っている人を助け、悪者を懲らしめる少女のことなのですね」
「うん、そんな感じかな」
「素晴らしいです。私感動しました」
ユーリエさんは更にキラキラとした目をこちらに向けてくる。
ある程度集まったのでそろそろ村に戻ることにした。
鞄から魔道具のランタンを出しユーリエさんに先導して貰いながら村に向かって進む。道すがら冒険者についての話も聞いておいた。
「プリティリアンさんは冒険者になるんですか? 魔法少女? ですよね」
「魔法少女だけど、冒険者をやってれば自然と困っている人の助けにもなるでしょ、だけど冒険者ってどうやってなればいいのか分からなくて」
「なるほど、それなら私に任せて下さい。ウエルズピークで冒険者登録出来ますから私が案内しますよ」
「ありがとう。あ、そうだ、宿取ってないなら私の部屋で一緒に寝ればいいよ」
「え!? いいんですか?」
「うん、どうせ同じところに行くなら旅は道連れだしね」
「ありがとうございます!」
これでウエルズピークについてからもユーリエさんと一緒に行動が出来る。
巨乳美少女を魔法少女の仲間入り作戦の野望に1歩近づいた。でもまだ勧誘する時じゃない。あくまで自分から仲間に入りたいと言ってくれるようにはならないと真の魔法少女と言えないのだから。ふふふ……。
そんな話をしている間に村に着くことが出来た。