ルシア・ファルアード
俺は神崎 優。
うん、記憶はきちんと残ってる。
思考は出来るけど喋れない。目の前も真っ暗だ。
「ーー!ーーーっ!ーーー」
「!ーー!ーー!ー」
「ー!」
辺りが騒がしい。
でも何言ってるのかさっぱりわからん。
眠いから寝よう。お日様あったかい。
それから食って寝て、食って寝ての生活を満喫しています。
ありがとうございます!!
「ルシアお嬢様。お召し物をお取り替え致しますね。」
はい。どうやら俺、女の子になったみたいです。
これは天照に猛抗議するしかないですね。
あぁ!まって!脱がさないで!恥ずかしい!!
「あぁー!うぅー!」
「あらあらルシア様はお転婆ですのね。クスクス」
恥ずかしいんじゃい!!
見た目は赤子でも中身は27歳のおっさんやぞ!!
「はぁい。綺麗になりましたよー。」
まぁこの人も好き好んでおっさんの下の世話なんぞしたくねぇか。
「あー♪」
両手を伸ばして精一杯の感情表現をしておけばいいかな。
「まぁまぁ!ルシア様ったらお転婆かと思ったら甘えん坊さんだなんて!なんて愛らしい!」
抱っこされました。
つか俺、ルシアって名前なの?
いいえ、神崎 優です。
まぁこの世界ではルシアなんだろうなぁ。
社畜にならないように生きればいいか。
【のんびり過ごして7年経過】
「お嬢様ー!ルシアお嬢様ーー!!」
カバッ
「ふぁーーい」
やっべ寝過ぎた。
さっとベッドから降りて髪を櫛でとかす。
転生する前にはやらなかった行為なのでたまに忘れるが、忘れて寝癖のまま朝食の席につくと母親が酷く怒る。
顔を洗うための水などはメイドさんが部屋に持ってきてくれる。
ガチャ
「おはようございます。ルシアお嬢様」
「おはよう、トールマン執事長」
この人は俺が産まれた家でお手伝いをしている人達を取りまとめるリーダーさんだ。
「先に着替えてから朝食の席に着きます。お父様とお母様達にそうお伝えください。」
「かしこまりました。」
トールマンが部屋を出て行ったのを確認して【ルシア・ファルアード】と刻印されているクローゼットを開ける。
ルシア・ファルアードとは俺の名前だ。
どんな手違いが起きたのか、俺は女として転生した。
しかも結構な美少女で。
ぷっくりした頬にちっちゃな口、若干垂れ気味な眉毛にクリッとした目、瞳は碧眼。
腰まで届くかと言うほど長い金髪。
(天照が見る目麗しい姿ってこーゆーことかぁ?)
そして、産まれた生家が天界の有力貴族の家系であること。
両親は天使。
「あれ、てことは俺も天使なのか…?」
コンコン
「ルシアー?お着替え終わったかしら?」
げ、お母様!!
「た、只今ドレスを着ています!」
「まぁ!お手伝いをつけずに1人で着るなんて自立心がもう芽生えたのかしら…」
着慣れたドレスをさっさと着て母親に入室を促す。
「あら、ルシア…リボンが曲がっていてよ?」
「あ、申し訳ありません。」
「クスクス…はい!可愛い!」
「ありがとうございます。お母様。」
この母親の前では嘘はつけない。
そーゆー天使らしい。
「さぁ、朝食にしましょうか。」
「はい。」
早く、天照に猛抗議しなくちゃ。
「時に、ルシア。」
「はい、お母様」
「あなた、昨夜髪を櫛でとかすの忘れましたね?」
「うっ……はい。ごめんなさい。」
この母親に嘘は通じないのだ。
「貴女の髪は綺麗な金色なのだから大切になさい。」
「はい。お母様」
食堂に入ると既に父と姉と兄が席に着いていた。
父「ルシアか。お寝坊だったな。」
姉「あら、おめかししたんじゃなくて?」
兄「……いいから座れ」
三者三様の反応を示したが答えは1つだ。
「お父様、お姉様、お兄様、おはようございます。」
ドレスの裾を摘み、軽く会釈をする。
「「「おはよう」」」
そうして席に着く。
ようやく朝食にありつける。
(なんつー堅苦しい家なんだ。ふざけてんのか。)
運ばれてきた朝食を口にしながら今日やる事を考える。
・書庫で魔法の勉強
・語学の勉強
・父による体術の稽古
ざっとこんなものか。
項目を少なくして密度の濃い時間を過ごす。
それが一番効率がいい。
(アレスの権能を使うにはどうすればいいのか聞いてなかったなぁ。)
後悔先に立たずとはまさにこの事だ。
父「ルシア、1週間後に試験を受けてもらう。」
「え、なんの試験ですか?」
父「神子登用の試験だ。相応の素質と実力が必要とされる、励みなさい」
「神子登用…?」
姉「この世界が、3つの世界で成り立っているのは知っているわね?」
「はい。天界、魔界、人間界の3つの世界ですね。」
姉「そう、その3つの世界がバランスよく育っていればこの世界は平和なの。でも38年後にはこの3つのバランスが崩れてしまう事が予想されているのよ。」
あー…これが原因が。
「そんな!それってこの世界の終わりを意味するのでは!?」
姉「そう。だからこの世界じゃない違う世界に住まう事にしたの。」
「それは可能なのですか?」
父「出来るともさ、私達天界の者の力ならね。」
母「かの世界を侵し、私達が暮らすに値する土台を築く。そうでしたわね?」
兄「…あぁ、一言で言えば侵略戦争だ。」
つまりこの天界がヘラの言ってた要因って事だな。
あまりにも規模がデカすぎだろ。
どうすんだよ。俺1人じゃなんともならんぞ…。
父「その戦争において、重要視されているのはかの世界を如何にして攻略するか、だ。」
「…それはつまり、かの世界からお客様をお招きして戦争のお手伝いをして頂く。という形なのでしょうか?」
父「ルシアは賢いね、その通りだよ。かの世界の住まう住人を召喚し、かの世界を攻略する手助けをしてもらう。神子はかの世界から住人を召喚する役割を担うのさ。」
(なるほど、敵を崩すには内側から…か。)
「わかりました。神子になれるよう励みます。」
父「あぁ!頑張ってくれ。」
そうして俺は席を立ち車庫へと向かう。
ゼウスが言っていた侵攻してくる世界はこの世界。
そして地球人を召喚し、地球の神々と戦わせる。
なるほど兵器のような扱いをするわけだ。
そもそもどうして、この世界は3つの世界で成り立ってんだ?
調べてみるか。
ーーー書庫ーーー
【エルシア史書】
これだな。
俺がいる世界、エルシアは元々は人間の住む地上と、
天使の住む天界の2つで成り立っていた。
しかし天界に住まう天使達は人間の支配を望み、
天界で対立が起きた。
天使が人間を支配し、管理すべきという【支配派】と、
人間と天使は共に共生していくべきという【共生派】の対立だ。
この対立は【支配派】が勝利した。
議論ではなく物理的な戦闘もあったが、結果的に【支配派】が【共生派】を下した。
【共生派】の天使達は持っていた能力を奪われ、地上に墜とされた。
後に記述する【魔族】の誕生である。
魔族となった天使達は人間よりも強いため、容易く領土を奪うことが出来たと言う。
徐々に広がっていった魔族の領土は人間、天使から【魔界】と呼ばれるようになった。
個体数を増やしていった魔族は魔法を独自の魔法を編み出し繁栄を続け、この世界の基幹となる世界へと成長した。
このエルシアは天界、人間界、魔界の3つの世界で成り立ち、均衡を崩さぬように存続している。
3つのうちの1つでも欠けた際には残りの世界で衝突が起こることは必須である。
何故なら、3すくみは崩れたのだから。
ーーーーーー
なるほど。
要は天使同士の諍いから起きた問題ってことか。
で、現在世界の危機って事は…人間界か魔界のどちらかが崩壊しそうってことかな。
そもそもどういう理由で崩壊しそうなんだ?
戦争でもしてるのか?
魔王が人間界を攻めてるのか?
うーん…わからん。