英雄の話をするとしよう
剣『天照様、ゼウス様からお電話です』
『あの人しょっちゅう電話してくるけど暇なのかしら』
あー…ゼウス、ギリシャ神話の神様で全知全能。
女たらしで有名なギリシャ神話のゼウス。
でも全知全能。
『もしもし?』
ーーーOH!!アマテラス元気?こんどお茶しようって約束してから2185年経ったぞい!!ーーー
「声デケェなおい。そして天照さん約束すっぽかしすぎ」
ゼウスの大きな声が受話器から漏れてくる。
『だってゼウス様、私の身体しか見てないでしょ?』
ーーーソンナコト無いぞ!?ーーー
>全知全能のゼウス、急所を突かれた!
「あーコイツ、完全に身体目当てのパターンだわ。」
鏡『わかるんですか?神崎さん。」
鏡さんが俺を覗き込むように聞いてきた。
「まずお茶しようで外に連れ出して、そっからは強引なデート開始だな。最後まで行ってしまおうって腹づもりだろう。」
勾玉『まぁ!そんなのって!!』
ーーーHEY!そこのうら若き乙女とむさ苦しい男よ、ワシの綿密に練られた計画をいとも簡単に看破するでない!ーーー
受話器から聞こえるゼウスの声で俺の推測が正しい事が証明された。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
突如俺たちの空間が揺れた。
「な、な、なんだぁ!!?」
???『ァァああなァァたァァァァ!!?』
何処からともなく聞こえた叫び声に俺は思わず身を縮こませた。
この声はどことなく似た感覚がある。
「母さんがブチギレた時の声だ…」
三種の神器『神崎さんのお母さん怖すぎ!!』
ミシミシ…ミシミシ…
「ちょ、なんかミシミシって!!ミシミシいってる!!」
『不味い…この声、ゼウス様とお話ししてのこの流れって事は…』
「どーゆー事や!!」
『ヘラ様よ。ゼウス様の奥様。』
「……ギリシャ神話のおとんとおかん降臨の悪寒」
ミシミシ…バキィィィィ!!!
ソレは「空間」をぶち破って俺たちの元にやってきた。
その手にはボロ雑巾の様になったおっさん的な何かを手にしている。
ヘラ『私の夫に色目を使った愚かな女神はあんたかしら?呪うわよ?』
『色目を使った事など一度としてもありませんわ。』
ヘラ『証拠は?』
グイっ
「ちょ!?」
『彼が私の伴侶です』
三種の神器『『『は?』』』
「はぃいいいい!?」
ヘラ『あなた、人間ね……。』
「はい。人間です。神崎優と申します。」
ヘラ『ふーん……あなた…雰囲気がアレスに似てるわね。』
「アレス?」
勾玉『ゼウス様とヘラ様のご子息でローマでは軍神として信仰されていたそうですね。』
あ、軍神マルス!!
「軍神マルス!?」
ヘラ『アレスよ。息子の名前を間違わないでちょうだい。』
「すみません。」
『ヘラ様、現代ではアレス様の事をギリシャ語とラテン語の2つの呼び方で信仰されています。ギリシャ語ではアレス様、ラテン語ではマルス様です。』
ヘラ『時代が進むと息子の名前まで変わってしまうなんて嫌だわ。
ところでアレス、あなた天照の伴侶になるのに異議はないの?』
「神崎です。」
ヘラ『アレスに似てるからアレスでいいじゃない。』
この神、かなーり大雑把な性格してんなぁ。
あ、だからゼウスは「神としての仕事は」キチンとこなしてたんだ。
ゼウスやるじゃん。
ゼウス『なんじゃ、ワシの美貌が目を引くかな?』
ダメだこのおっさん。早くなんとかしないと。
ゼウス『時に、天照よ。そちにしなければならない話があったのだよ。』
『なんです?』
ゼウス『なに、些細な事だ。この地球に干渉しようとする世界がある。』
『えっ!?それって…異世界侵攻ってことですか!?』
不穏な言葉を耳にした。
「剣さん、異世界侵攻ってなに?」
剣『簡単に言うと、自分らの住む世界が危ういから異世界を乗っ取ってそこに住もうって事だな。』
戦争じゃねぇか!!
ヘラ『そうでした!この未曾有の危機をあなたに伝えるために夫に連絡させたのにお茶の話なんて…』
「なんで大事な要件を先に言わないんですか!!」
ヘラ『夫が浮気してると思って…』ショボーン
ヘラは神話上でも嫉妬深い女神で有名だからなぁ。
ゼウス『だが憂いは断てたようじゃな!!』キリッ
『何か対策案でも思いつかれたのですか?』
ゼウス『そこにいるじゃろ?我が息子が。なぁアレスよ?』
「神崎です。しかも世界の危機に人間1人でどうにかできるわけないでしょ。バカですか?」
ヘラ『出来るじゃない。向こうの世界に行って危機たる要因を排除してくればいいのだから。天照の夫で私達の子供なら出来るでしょう?』
「できねぇだろ!天照さんの夫の時点で突っ込みどころ多いがあんたらの子供ってなんだよ!」
『嫌なの?』
腕を引っ張られた。
『私の伴侶いやなの?』
勾玉『あぁ!天ちゃんが泣きそう!』
剣『神崎ぃいいい!!』
鏡『岩戸に隠れるのはやめて下さいね。』
え?俺が悪いの?
でも俺人間じゃん?異世界行って危機の要因の排除って魔王討伐とか?
それ勇者の仕事やん?普通ありえなくない?
うわ天照ガチ泣き寸前じゃんか!!
どうすんの!!どうすんの俺!!
あぁぁぁあもう!こうなったらヤケクソだ!!
「わかった!!俺は天照の契約者で、ゼウスとヘラの息子だ!!世界でもなんでも救ってやるよ!!
これで文句ねぇだろ!?」
ゼウス『それでこそアレスじゃ。』
ヘラ『では、アレスとしての権能は与えておきますから。』
三種の神器『イエーーイ!作戦成功!!』
この時初めて自分がヘラの策略に乗せられたと気付いた。
拝見、生前の母上。
あなたの息子は天照の夫になり、
ついでにゼウスとヘラの息子になりました。