第6話《ハチ公伝説》
それから・・・
シャルムが光の水晶球を作っているあいだに…ポチは、室内を片付けていた…
。
…とはいえ…手間取りそうなものは、
子供達の物を置いた棚や、本棚ぐらいなものだったので…
たいして時間が、かからなかった…
。
そのあと…ポチは、テーブルの方を見てから
…
テーブルの上に置いた台のようなものを使って、固定してある水晶球に…
右手から発する魔法の光を吸収させている…シャルムに向かって
…
「終わったぞ…。」
…と、一言告げると…
シャルムは、
「早かったね。」
…と、そっけなく答えたあと…ポチに
、
「じゃあ、本でも読んでなよ。」
…そう言うので
…
ポチは、
(…確かに、寝るのには、まだ早いな。
言われた通り…本でも読むか…)
。
本棚のあるところへ移動してから…少し、しゃがんで…
それから、棚の中に置かれている本を見てみると
・・・・・・
(おっ!犬客商売があるな…
でもこれ…もう読んだ奴だ…)
。
他に何かないのかな…と、さがしてみると…
一冊の本が、ポチの目に止まる…
それから…ポチは、
「忠犬密教入門…」
。
本棚から、その本を抜き出したあとに…
立ち上がって…その本に、さっと、目を通してみると…
・・・・・・
「どれどれ…忠犬密教とは、180年前…
【ハチ】というコボルトが、何十人もの弟子に説いたと言われる教えの事である…」
。
さらに目を通してみると…宗教的な内容の他に…
修犬道と言われる魔術的な力の事や…
100年前から、秋田犬派や土佐犬派などの…さまざまな流派に分かれていた事が書かれていた…
。
ポチ
(流派か…
こうしてみると、コボルトも…けっこう家柄とか血統を気にする奴が多いんだな…)
。
その証拠にコボルトの王が…コボルトキングと呼ばれている事は…誰もが知る話だ…
。
ポチ
「眠くなってきたな…」
、
ポチは、ふあっ…と、その大きな口で、欠伸をしてから…
バタン…と、本を閉じると…
そのあと、しゃがんで…本棚の下の方の棚に、本を戻してから、立ち上がり
…
そして・・・
(…さて…これからの事を少し考えるか…)
…そう思ったポチは、
これからの事を…少し考えてみる事にした
・・・・・・
…まずポチは、2人の子供のように…魔法は使えない…
。
(だから俺の役目は、光の球を持つ事や、子供達をサポートする事が中心になるだろうな…)
。
いや…もし戦闘などに、なったら…
身を守るのが精一杯で、子供のサポートすらも難しくなるのかもしれない…
。
(せめて、子供達の…足を引っ張らないようにしないとな…)
。
そう考えたポチは、居間の中で正座しながら…
もしも地下通路で、敵との戦闘になった時…どういう行動をとるべきか…頭の中でイメージする
…
そんなポチの様子が…
円形のテーブルのところで座る、シャルムの目に映ると…
シャルムは、右の手の平の前から放つ魔法の光を…
テーブルの上に置かれた水晶球に吸収させる作業を、一旦止めて
…
それから…椅子から立ち上がると…
石で出来た台の上で、料理しているシャリムのところへ行って…
、
シャルム
「ねえ、シャリム。
ポチが見た事もない座り方で考えこんでるようだけど…」
あれって何?と、シャリムに聞くと
…
シャリムは、一旦、料理をする手を止めてから…ポチの方を見て
…
シャリム
「あれは…正座と呼ばれる東洋の国の座り方ですよ
心を落ち着かせる効果が、あるそうです。
でも変ですね?」
、
シャリム
「どうしたの?」
、
シャリム
「正座は、確か地面には、両手をつけないはずですけど…
ポチさんは、何故か両手をつけています…」
。
何か意味があるのでしょうか?…と、考え込む
白いローブを着た少女の隣で、シャルムは
、
「なんか犬のオスワリに、形が似てるね。」
、
…不思議な座り方だ…と、青い目でポチを見つめる
、
シャリム
「でも…ポチさんらしいですね…」
。
可愛いです。…と、口元に左手の4本の指先をそえて、笑うシャリムに
…
「シャリムは、
本当にポチの事が、大好きなんだね。」
…と、シャルムが言うと
…
その緑の目の少女は、頬を薄紅色に染めながら
…
シャリム
「えっ?えっ?何言ってるんですか!
そ…そ…そんな訳!ある訳ないじゃないですか!」
…
そうあわてるシャリムが、あまりに予想通りの反応だったので…シャルムは
、
「またまたあー照れちゃってーシャリムってばー」
…と、いたずらっぽい笑みを浮かべながら、からかうと…
シャリムは、
「しりません!」
…とばかりに、シャルムに背中を向けるので
…
その様子を、ほんの少し前から…正座しながら見ていたポチは
…
「な…何やってるんだ…
あいつら…」
。
子供のケンカを驚いたような…犬の顔で、見つめるのだった…
。
そして…その話題で、シャリムをからかい過ぎたせいか…
シャルムは、これが原因で…
次の日になるまで…シャリムに、口を聞いてもらえなかったという
・・・・・・
。
《そして寝室へ…》




