第4話《シャルム。シャリム。まぎらわしい名前でゴメンナサイ》
――――《3話の続き…》―――
…
円形のテーブルの席の一つに座っていたポチは、
ペロペロと舌を使って…自分の両手で持った皿の中のアップルティーを全部、飲み干したあと…
その皿を、コトン…と、テーブルに置くと…
シャリムが、それを、お盆に乗せて、片付けてくれた…。
・・・・・・
そして、台所まで…お盆を運んでくれた、シャリムが、ポチの向かいの席に着くと…
座ったシャリムの隣の席にいたシャルムが
、
「それにしても…ポチが、閉じ込められていた部屋から…この部屋に来るまで…
出会った衛兵が二人って…なんか出来すぎてる気がするなあ。」
…
そう話すので、それを聞いていたポチも…
「確かにそうだな…」
シャルムの話に賛同すると…
ポチの向かいの席に座る、シャリムが
「別の可能性もありますが…
この場合…まさかここから脱出する事を…考えている人なんていないって…
油断があるのかもしれませんね…」
。
そう言ったあと…ポチの方を見て
…
シャリム
「じゃなきゃ他に囚われている人がいるなんて情報を、わたし達に教えるはずがありません…」
。
…地下の部屋の一つに、コボルトの試験体がいる…
シャリムの話では…
これは…シャリム達に関わっている人達から、教えられた話の一つらしい…
。
そして、それに頷くように…シャルムも
…
「確かにポチの事は、彼らに聞いていた…」
。
そう言っているところをみると…
、
ポチ
「俺の事を、他人に話すという事は…
俺自身は、もう用済みだと言う事か…」
。
子供達が助けにこなければ…いずれ処分されていたのかもしれない
…
そんな自分自身の境遇を思ったポチは、哀愁を、おびた犬の顔でうつ向く
…
シャリムは、そんな自分の気持ちを…表情として出す事のできない…コボルトの想いをくみとり
…
「ポチさん…」
、
緑色の大きな目を曇らせていた…
。
銀の髪のシャルムは…そんなポチとシャリムの様子を見比べたあと
…
「だからさ…」
グッ…と、右の拳を握って
…
「僕らと一緒に、ここにいる奴らに、一泡ふかせてやろうよ。」
…と、言葉を続ける
。
その迷いのないシャルムの青い目の輝きは、まるで…サファイアのように美しかった…
。
ポチは、そんなシャルムの青い目を見て
…
(こいつ…)
子供のくせに良い目をしている…と、頭の中で、つぶやいていると…
ポチの向かいの席に座る…シャリムが
、
「言いたい事は分かりますが…まずは、部屋の中では、サンダルを脱いで下さい。」
、
そう言って、それまでの話の流れに水を差すので…
それで、納得のいかないシャルムは
、
「くそう…せっかく燃える話の展開にもっていこうとしたのに。」
…と、くやしそうに言ったあと…ポチの方を見て
、
「ポチだって
靴を脱いでないんじゃ…」
ないの?と、言おうとした時…
隣の席に座るシャリムが
、
「ポチさんは、足に何も履いてません!」
…そう言うので、シャルムは、
「それはそれで…問題なんじゃ…」
。
そうシャリムに言うと…今度は
、
「い…いいんです!!ポチさんは…」
…
そんな答えが返ってきたので…シャルムが
…
「ええ!!何?その差別!?」
…抗議の声をあげると…それに対してシャリムが
…
「もともとシャルムは、女の子みたいな姿をしてますから…
サンダルとかより…靴とか履いた方が、男らしくて…良いんじゃないでしょうか?」
…と、そう言うので
、
それを聞いて…シャリムの向かいの席に座るポチが
、
(いやいや…それは関係ないんじゃ…)
ないのか?と、考えているうちに…
シャリムの隣の席から、シャルムが
「男女差別だ!」
…と、抗議の声をあげるので…それには、ポチも
…
「言葉の使い方、間違ってるぞ。お前…」
…でも、こういうところは、年相応なんだな…と、思いながらも
…
ポチ
「話を戻すが…脱出を考えるのは、良いとして…
この部屋での会話とかは…何らかの方法で奴らに監視とか…されてる可能性も、あるんじゃないのか?」
…
敵にも魔法使いとかいるだろうし…と、
思っていた事を、シャルム達に話すと
…
「その心配はないよ。」
…と、シャルムに
、
「よく思いだしてみてよ。この部屋の扉に、描かれていた魔法陣や、魔術文字の位置…なんか変じゃなかった?」
…
そんな事を言われたので…その時の事を、思い出してみると
…
ポチ
(そういえば…魔法陣も、他の記号も、ずいぶん下の位置にあったような…)
、
そこまで考えて…
「まさか?」
!
ハッ…と、ある事に気づく…
。
ポチ
「部屋の扉に魔法陣を書いたのは…」
、
シャルム
「そうだよ。僕達さ…
魔法使いが魔法を使って…外部から、この部屋の中を監視したり…
盗聴しようとした時に、嘘の情報が流れるように…細工したんだ。」
…
だから…魔法使いが、この部屋の中を、見ようとしても…
扉に描かれたの魔法陣の力で…現実とは違う部屋の中の風景を見せられ
…
魔法の力で、部屋の中の会話を聞こうとしても…
部屋中に流れている魔法陣の結界の力で、嘘の会話が聞こえるようにしてあるのだと…シャルムは話し
・・・・・・
「それに…こうしていれば、僕らが部屋を空けていても…僕らより魔力が高い人じゃない限り…
部屋に入る事が出来ないからね…」
。
そんなシャルムの話を聞いて…ポチは
、
「この部屋の扉には、そんな秘密が…」
…と、言うと同時に…頭の中で
…
(なるほど…どうりで俺達とは、待遇が違う訳だ…)
。
パンテオンの連中にとって…
この二人の子供は、自分などより…はるかに重要な存在なのだろう…と、あらためて思うのだった
・・・・・・
。
《第5話へ続く…》