最終話《予定調和》
周囲12メートル四方はあろうか…
薄暗い部屋床の中心に3メートルはある大きな五芒星が描かれている…
その赤い五芒星の上に立っていた星宮という紫色のローブを着た初老の男が
…
「ナインクールの気配が消えた…」
。
そう話すと…青いローブを着たフェルゼという銀髪の青年も
…
「コボルトと子供達の気配も消えたようです」
。
そう答え…それを聞いた星宮が
、
「相撃ちか…だがどちらにしろ助かった…
これで思惑通りに事が進む…」
。
ニヤリと笑みを浮かべると…フェルゼの
「ええ…本当にこちらの思惑通りです」
。
その言葉と共に星宮の背中から心臓を射抜くように…ひんやりとした何かが貫く…
「こ…これは…
何の真似だ…フェルゼェ!」
。
剣を背後から突かれ…しぼり出すように声を出す星宮は、フェルゼに
、
「ここを守る兵士達が少ない事を本当にあなたの思惑だけの事だと思っていたのですか?」
、
そう言われて…青ざめた顔に、ハッとした表情が宿り…
「ま…まさか…」
。
その答えを言おうとした途端フェルゼに
、
「冥土の土産に覚えておく事です。
他人を騙して落としいれようとする者は、常に他の誰かにおとしいれられる…」
。
背後から両手に持った剣を引き抜かれた事で…
胸から吹き出るように血が流れ…仰向けに倒れる星宮を青く冷たい目で見下ろしたフェルゼは
、
「これを因果応報と言うのですよ…」
。
そう言って…人を騙そうとした者の報いともいえる哀れな結末を見届けるのだった…
。
そして薄暗い中で赤く光る五芒星の中で、仰向けに倒れる星宮の死を見届けたフェルゼの部屋に…
やがて部屋の扉が開く音と共に、黒いローブを着た老人が入って来る…
。
そしてフェルゼの背後に近づいて来た、その老人が
…
「ナインクールの復活とその滅亡…すべては、あの占い師の予言通りとなったな…」
。
そう声をかけると…フェルゼも近づいて来る老人の気配を背中に感じながら
…
「魔導士ヘレルが復活し…ナインクールと共にはてるだろう…
…ニンフを失ったのは惜しいですが…ナインクールの事を考えれば安い買い物です。
予言通りに子供達をおよがせた甲斐がありましたよ」
。
そう話し…それを聞いた黒いローブを来た老人こと元老の一人は、
胸から溢れでる血の海の上で、仰向けに倒れている星宮の死体を見ながら
…
「死んだこの男が責任を取ってくれるおかげで、この神殿を放棄する理由が出来たしな…
評判の良くないこのパンテオンの噂を終結させるにはいい機会だろう…」
。
だが元老には、どうしても気がかりな事があった。
それは…
(予言の最後でダーナは、過去の因果が消えた時…それを見届けた神の子は新たな旅路を歩むだろうと言っていた…。
しかし今ニンフの気配は、ここからは感じられない…だとすればこの予言が意味する事は一体…)
。
銀の腕のノーデンスと魔眼のバロールに並ぶ東方より来たりし三賢人の一人にして…この国の皇帝直属の占星術士ダーナ…
予言を読み取れなかった元老は…その真意は、はかりしれないと…
フェルゼのうしろから天井を見上げるのだった…
。
―――――――――――――――
。
あれから…一月は経っただろうか…
移転装置のある地下の奥深くに、松明のような物を持ちながら足を踏み入れる2つの影があった…
。
一人は松明を左手に持った190センチくらいのの金色の短髪をした男で…
大柄な体格に金の彩色豊かな黒い鎧を着ていて…まさに皇帝と呼ぶにふさわしい風格をその身にまとっており…
もう一人は、シャリムと歳が変わらない小柄な少女で、外行きだからだろうか…
少年達が着るような服装で身をかためていた…
。
松明を左手に持った皇帝らしき男が移転装置の中に足を踏み入れて
…
「ここか…お前が夢に出てきたと言った場所は…」
。
皇女らしき少女に声をかけると…
その金の髪の少女は、その先にある巨大な穴を見ながら
…
「ええ…確かに夢の中で…ここで白い魔法衣を着た魔法使いと、黒いローブを着た魔法使いが激しい戦いをくりひろげていた光景が映ったのです」
。
それを聞いた皇帝らしき男が、
「そうか…」
左手に持った松明でその先を照らすと…なんとその先に人形らしき物が落ちていたので…
その隣で立ち止まっていた肩に届くくらい髪の長い少女が、その場所まで進んでから…しゃがんで、その銀髪の人形を両手で抱えあげる…
。
そしてその人形から香る…ほのかの香辛料のニオイを感じた少女が、その口元に緑色の目を向けると
…
「カレー?」
。
それを見つけた同時にある感情が少女の中に溢れてくる…。
そんな少女の変化に気づいたのか…
松明を持った皇帝らしき大柄の男が少女に近づいて
、
「なぜ泣く?」
。
少女に声をかけると…しゃがんだ少女は人形を抱えたまま…
「わかりません…。
でも何故か頑張ったねって…この人形を褒めてあげたいんです」
。
かつてヘレルの魂が宿っていたその人形を労るように涙を流すのだった…
。
《fin》
正直…全部書き直してから最終回にしたかったのですが…
すいません(涙)