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最終戦《ケムダー…それは不死の身体を持つ者》

忘れてはならない事がある…

理想とは、多くの人々が追い求めるものであり…個人の理想は他の者を傷つける場合もある…

ナインクールの場合もそうだった。

彼は、自分の理想を過信かしんするあまりに他の理想を偽善と呼び…ひき戻せない自分だけの理想の道へ突き進んでしまったのだ…。

もしかしたら、その引き戻せない自分の理想へ進んだ時からナインクールは、ケムダーに取り憑かれていたのかも知れない…

だがそうだとすれば…どうしても分からない事がヘレルにはあった…。

だからヘレルは、入り口の近くで

(本に書かれていた伝承では…

ケムダーに取り憑かれた者は、取り憑かれる元となった欲望にふさわしい姿に姿を変えると聞く…

だけどナインクールには、今まで姿を変える事はなかった…)

何故だ?と考えているところで、また多重音声の女性らしき声が、まるでヘレルの考えを読み取ったかのように

《欲望が理性にまさった時、憑かれた者はケムダーへと姿を変えます。

おそらくあの者は、その強靭きょうじんな意思で、今までケムダーを意識の底へ封じこめていたのでしょう…》

つまりヘレルがナインクールを倒した事が引き金となって、ケムダーに身体を乗っとられたのではないか…と、ヘレルの意識に伝えてくるので…ヘレルは

(そうか…私が倒したせいもあるが…おそらく私が…ナインクールがシャリムの策にかかった事を告げた事で、奴の意識を支えていたプライドが傷つき…

ケムダーに意思を乗っとられるきっかけを作ってしまったんだ。

くそっ…まさかそれが裏目に出るなんて…)

そう…かつてヘレルが、ナインクールと戦った時…

ナインクールがケムダーに変わる気配は、一度もなかった。

だからこの推論で正しいはずだ…と考えたヘレルは、8メートルくらい先にいるケムダーの姿を見据みすえて

「さて…これからどうするか…」

いつ相手に攻撃されるかおびえながらも…これからどう攻撃すべきか考えているところで…例の頭に響く多重音声の声から

《ならば先制に、この2つの魔法を使いなさい》

そう伝えられたあと…急いで!と、急かされるので…ヘレルは、

「…わかった…」

その言葉を信じて…

右手の手の平の上に、手の平サイズの小さな竜巻を出現させて

「我が右手に風のうず…」

そう言ったあと、今度は…左手の手の平の上に、重力球のような黒っぽい球体を…光と共に出現させて

「我が左手に範囲を固定させる重力の証を…」

そして…ケムダーに向けて両手を突き出した事で、重ねた手の平の前にある2つの魔法を組み合わせ

「そして生まれたエリアの風は、触れる者すべてを切り裂く刃となる…」

ナインクールの姿をしたケムダーの3メートルくらい上空に向けて

「ウィンドカッターディメイション!」

いくつもの風の刃が渦巻うずまく2メートル以上もある球体を放ってから…その2秒後に無詠唱《合体魔法で良く使うセリフを省略して魔法を使う事》で

「ファイヤアストォム」

突き出した右の手の平の前の光から…ケムダーに向かう火柱を、

左手の手の平の前の光から…ケムダーに向かって突き進む螺旋状の風が巻き込んだ事によって生じた、炎の竜巻を放つ

何故?いくつもの、かまいたちで出来た球体を放った2秒後に、炎の竜巻を放ったのか…

それは…威力が高いが敵に向かうスピードがゆっくりな幾つものかまいたちで出来た球体に比べて、炎の竜巻は敵に向かう速度が速いために…

ケムダーに向かって突き進んだ炎の竜巻は、ケムダーのいる場所の手前で、幾つもの風の刃で出来た球体を追い越し…

向かってくる炎の竜巻をかわそうと、背中の二枚の黒翼でヒラリと舞ったケムダーを、

炎の竜巻の上空から来た…幾つものかまいたちで出来た球体が吸い込んで…

かつてナインクールが落ちた後ろの巨大な穴の上まで移動しながら…その中に吸い込まれたケムダーの身体を、幾つもの風の刃で切り刻んでいく

そして幾つものかまいたちで出来た球体が、その役目を果たして消えた時…

それらの風の刃に切り刻まれたケムダーの身体が巨大な穴の上空にいたために…ケムダーはその穴の底まで落下して…

穴の底に広がる地面に身体が激突するのだった…

だがヘレルには分かっていた…。

これが終わりではない事を…

それから10秒後…そのまま入り口の近くにとどまっていたヘレルの青い目の視界に…穴の底から飛び出して来たケムダーの姿が映る…

そして穴の前の地面に着地したケムダーの身体には、幾つものものかまいたちで全身を刻まれたせいで…身体のあちこちで傷口が開き…血が流れている…。

特に穴の底に落ちた時の地面にぶつけた頭部の部分は、その時の衝撃で天頂のところが少し失われていた…。

だが全身にあった傷口は…少し時間が経つにつれて、徐々にふさがり…

欠けていた頭部から噴水のような血が飛び出し、それが新たな肉を形成して…その肉が頭部を形成していく…。

そして50秒後には、ケムダーの身体は何一つ傷のない完全な身体へと戻っていた…

そしてその再生される光景を…

「なっ…」

呆然ぼうぜんと見ていた…ヘレルの顔に向けたケムダーの左の人差し指の指先が光った時…

ピッ…と熱いものがヘレルの右の頬をかすめる。

一瞬ヘレルは何があったのか分からなかったが…すぐにそれが光弾が頬をかすったためだと知る。

しかもそれは、ヘレル等が放つ高速の光のエネルギー弾ではない…

本当に光の速さで飛ぶ光弾なのだ。

だからいくら腕の立つ魔術師のヘレルでも…

(どうやって勝つんだ?こんな化物に…)

勝てるはずがない…と絶望していたが、そこに

《いいえ、今ならまだ勝つ可能性があります》

またあの多重音声のような声がヘレルの頭の中に聞こえて

《本来のケムダーの再生能力なら…あの穴の底に落ちたわずかな時間のあいだに身体の傷を完全に回復させて戻ってくるはず…

おそらく変化したばかりなので…まだケムダーとしての力が弱いのでしょう》

そう伝えてくるので…ヘレルが

「だけどそれでも不死身に近い事には変わりはないだろう…。

どうやって倒すんだ?そんなものを…」

倒しようがないじゃないかと、話すと

《方法ならあります》

ヘレルの頭の中に聞こえる多重音声の声の声と共に、ヘレルの1メートル手前の天井近くが光り輝くと…

その光の中から…剣身を下にした形で、白い翼の剣が出現し…

天井近くの光の消滅と共に地面に落ちて…剣先が地面に刺さる

それを見てヘレルは、

「こ…これは双翼の剣アルウ"ィド。

シャリムが召喚した剣が何故こんなところに…」

驚いていると…多重音声の小さな声から

《すぐに半歩。左に移動しなさい》

ヘレルの頭の中に聞こえてくるので…ヘレルはすぐに伝えられた通り左の方へ移動すると…

ヘレルのいた場所のすぐ右側を光が通りすぎる…。

それで、ぞっとしてるあいだに多重音声の声から

《今のうちに剣を取りなさい》

頭の中に伝えられたヘレルは、

「分かった。」

その返事と共に…剣が刺さった場所まで移動して、右手で剣を引き抜くと…

ヘレルの頭の中に聞こえる…

《さあ貴方が取った剣の刃に精霊すら斬れる神殺しの力を与えましょう》

その声と共に、ヘレルの右手に持った双翼の剣の刃に白い光が宿るのだった…

《つづく…》



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