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最終戦《今明かされる勝利への布石》

この世界で人は精霊と契約して魔法使いになると…

魔法を使えるようになるが…その変わり身体に使った分だけの疲労が加わる仕組みになっている…。

それゆえ攻撃力を上げる魔法などは、魔法がかかっている時間がすぎて…元の状態に戻ると…そのぶん多く疲労がかかる欠点があった…

なので…20メートルはある巨大な円形の穴の前にいたナインクールは…

入り口の近くにいたヘレルに向かって

「だから…ハァ…お前は、ハァ…それに…気づかなかった…オレを…ハァ…利用して…

攻撃力が上がる魔法が…かかっているうちに…ハァ…出来るだけ…多くの…魔法を…使わせるように…ハァ…挑発…した訳か…」

そう言うと…それに対してヘレルは

「そうだ…。復活直後のお前なら…まだ体力は、万全ではない…

だからお前と戦っていた時のシャリムの目的を知った私は…その作戦をそのまま利用させてもらったのさ…。」

そう言うものの…ナインクールにはどうしても、ふに落ちないがあった…。

それは…

「だが…ハァ…それなら…オレが…いつ…強化…ハァ…の魔法に…かけられ…たか…気づい…たはず…だ…それ…なのに…」

何故気づかなかったのかを息切れしながら話すナインクールに…ヘレルが

「おそらく…シャリムは、効果が徐々《じょじょ》に出てくるように魔法を少し変えたのだろう…」

そう言うので…それでナインクールは、

(そうか!?

確かに魔法の効果が少しずつ出てくるようにすれば、魔法をかけられた本人も…自分の中で起こっている変化に気づきにくい…

くそっ…まさかサポート魔法の利点を…こんな形で使ってくるなんて…)

効果が少しずつ出てくる事に比例して、かけられた本人の体調の変化も少しずつである事に気づき…

さらにヘレルに自分の周囲の空気を減らされて…絶対絶命のピンチになっている今の状況に

「くそっ…」

そう一言はき捨てて

(しかも身体に重力をかける魔法と一緒にかけた事で、強化の魔法をかけた事に意識がいかないようにしたのか…

まさか幼い小娘一人に、ここまで翻弄ほんろうされるとは…)

入り口の近くでかけられた魔法に二重の意味がある事に気づき…

頭の中でなげいていると…さらにヘレルから

「お前は今、始めてシャリムにハメられたと思っているだろうが…

実は、お前があの子の魔法にかかったのは…その前に一度あったんだ…」

そう言われて…

ハァハァ…と、空気が薄い事に苦しみながらも

ナインクール

「どういう…事だ?」

離れた場所にいるヘレルに聞くと…

そんなつぶやくような小さな声でも聞きとれたのか…ヘレルは

「お前…私が前にシャリム達を逃がすためにった雲の弾幕を吹き飛ばした時…

いつ私がお前に幻覚を見せる魔法をかけたのか…不思議に思わなかったか?」

そう言ったので…ナインクールは、それを聞いて

「そう…いえば…」

シャルムだった頃のヘレルが罠にかけたのかと思っていたが

(気にしなかったけど…確かにそうだ…

あの時のヘレルに、オレを幻術にかける様子は一度も無かった…)

なら…あの時ナインクールに幻覚の世界に閉じ込めたのは、誰だったのか?

それはヘレルの言う

「良く思い出してみろ…

その前にシャリムの推理を聞いてた時…お前はあの子と一緒にあの子のオーラを見ていたはずだ…」

その時の状況を回想する事で…ナインクールは、

「…あっ…」

誰に幻覚を見せられていたのか、始めて気づく…

ナインクール

(そうだ…確かにあの娘が推理する途中で…

黄色だったオーラが赤い色が混ざったような色に変わっていたような気がする…。

もしかして…あの時オレに暗示をかけるような情報を、あのオーラの光の中に入れていたんじゃないか…

そしてオレがその暗示のようなものによって、幻術にかかっている事に気づくのを遅らせるために…

幻術にかかるまでの時間を予測したあの少女は、一定時間後に雲の弾幕を張るように…事前にヘレルに指示を出していた…)

おそらくそれは、魔力を使い果たしたシャリムが意識を取り戻してから…ナインクール達の元に行くまでの間に話し合われていた作戦じゃないか…と、

サブリミナル効果のようなものを利用したシャリムの作戦について…ナインクールが考えているあいだに、ヘレルから

「今思えば…あの時から、あの子は気づいていたのかもしれないな…

常に強気で、相手を自分より格下に見ているために…敵の目論見もくろみを甘く見がちな、お前の欠点を…」

そう言われた事で…ナインクールが

(くそっ!くそっ!くそおおお!)

欠点を指摘されて、くやしがっているところでヘレルは

「お前の敗因は、ただ一つ…シャリム=アリア=アーシュロット…

あの少女にかかわった事だ…」

すべてシャリムの手の平の上であった事を告げて

「そして…」

さらにナインクールに向かって、右手を突き出し

「最初の位置取りの時から…お前はもう…負けていた…」

そう言って…それに気づいたナインクールが、

「!?しまっ…」

穴の近くに位置するその場所から逃げようとした時…そうさせまい!と…ヘレルが、

「遅い!」

突き出した右手の手の平の前から、突風を放ち

その吹きすさぶ突風でナインクールは、うしろの方に広がる巨大な穴のところまで吹き飛ばされた事で…その穴の中に落下してしまったので…

そこで地面に直撃した時のダメージを少なくするために、残りの魔力をかき集めて…物理的なダメージを防ぐバリアのようなものを身体の周りに張ろうとしたが…その時…

「何!?」

上の方から…

ヘレルが放ったであろう…30センチくらいの大きな火球がナインクールに向かってせまり…

ナインクールの頭に一瞬、このまま物理的なダメージを防ぐべきか…それとも穴の上から降ってくる火球に備えて対魔法のバリアを張るべきか迷いが生じてしまい…

結局けっきょく二兎にと追うものは一兎も得ずという…ことわざが示す通り…その一瞬の迷いが致命的なミスとなり…

何もできないままナインクールは、火球をくらって

(ちくしょおおお!!)

火の球の炎で黒い魔法衣が燃え上がった事で…

一瞬で全身に火が燃え広がり…火だるまになりながら落下したせいで…

穴の底に広がっている鉄の地面に、後頭部から背中にかけて強打し…絶命するのだった…

そして火球を放つために穴の近くに行ったヘレルが

「終わった…」

そう言って、ナインクールが落ちた大きな穴に…クルリと背中を向けて

入り口の近くまで行った時…ヘレルの頭の中に

《いいえ…まだ終わりではありません…》

多重音声を含んだ女性らしき声が聞こえてくる…。

その声を聞いて…

「誰だ!?」

ヘレルが後ろを振り向くと…

ナインクールが落ちたはずの大きな穴の中から…何者かの黒い影が飛び出してくる…。

そして少し距離があるとはいえ…その姿を見たヘレルは、

「バカな…」

…と息を飲んだ。

なぜなら…死んだはずのナインクールがそこにいたのだから…

いや…そのままの姿といえば、それは少し違う…

ナインクールの身体は、どす黒い雲のようなオーラにおおわれて…

その背中には…大鷲おおわしのように大きな2枚の黒い翼がえていた…。

そしてそれを見たヘレルに…多重音声の誰かの声は

《あれこそがケムダー…

マーズを世界を支配できるほどの大国にしたいというナインクールの野望に取りき…純血主義の理想という名の欲望を、あの者に吹きこんだ真の敵です…》

そのナインクールの姿を借りた何者かの名前を告げるのだった…

《つづく…》



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