最終戦《仕組まれていた強さ…》
「アイスットオンム!」
、
「ぐっ!」
…
それからもナインクールが放つ魔法を防いでいたヘレルは
…
「ルァイトボオゥッ!」
。
「くっ…」
。
右手に作った青いガラス色の壁でナインクールの魔法を受け止めながらも…
いくら何でも復活直後にナインクールの魔力が強まっているのは変だ…と考えて、
(調べてみるか…)
。
サーチと…青い目を紫色の目に変えてナインクールの状態を調べてみると
…
(これは…)
ナインクールに、魔法の威力を五割ほど高める魔法がかかっているを知り
…
(これは、確かに威力は5割ほど上がるが、一定時間がすぎると…疲労が2倍になる短期決戦に向いた魔法のはず…)
。
一体どうして?と…考えたヘレルは、そこで
…
(そうか!?そういう事か!)
。
何故その魔法をかけたのか…そのからくりを知って
…
(なら…ここは…)
。
突き出した右の手の平の前から…ナインクールの足元を狙って
、
「ルァイトボオゥッ!」
。
光弾を放ち…その放たれた光弾をバックジャンプしてかわすナインクールに向かって
、
「お前は、また暴力で人々の誇りを呼び起こすつもりか?ナインクール!」
。
そう叫ぶと…ナインクールは、お返しとばかりにヘレルの胸を狙って、右の手の平の前から光弾を放ち
…
「それの何がいけない!
国を強くするのは、国に対する忠誠であり…プライドだ!
友情?対話?今さらそんなものにすがったところで!マーズの何が変わると言うんだ!!」
。
その言葉と一緒に放たれた光弾を、
シャルムは光弾を放ったあとの…右手の前に出現させた青いガラス色の壁で防いでから
、
「道は1つじゃない!!
お前の勝手な思い込みを!人々に強制させるな!」
。
手の平の前の青いガラス色壁を消してから叫ぶと…
そのあと何故か叫んだヘレルに向かって…風が集まっていくので…
それを不思議に思ったナインクールが、
(なんだ?)
赤い目を紫色に変えて、その原因を調べると…
あらゆる方向からヘレルの方に向かっていく…流れ雲のようなものが見えて
…
(空気を自分の方に集めているだと?
そうか…確かにこの状態で長期戦になれば…
周りの空気が少なくなるだけでなく…魔法の元となるエネルギーも減少して不利になる事は確実だ…)
。
しかし逆に考えれば…
(流れが奴に集まっているあいだに攻撃すれば…
この流れが追い風になり…オレの有利な展開になるはずだ…)
。
だから周囲の空気が集まってるあいだに…どれだけヘレルに攻撃できるかが勝利の鍵になる…と考えたナインクールは、
身体が大の字になるほど…力いっぱい両手を横に広げて
、
その右の手の平の先に球の形をした雷を…
左の手の平の先に青い光を出現させると…
ヘレルの方に向かって右と左の手の平を重ねる事で、球体の雷と青い光を重ね合わせて
…
「紫電雷光波!」
その叫び声と一緒に、重ねた両手の前から青い稲妻を放つ
!
そして光線のように突き進んだ青い稲妻は、ビシャアアー!と、入り口の近くにいたヘレルに襲いかかるが…何故かそれは…ヘレルの身体をすり抜けていき…
そのヘレルの姿も…徐々《じょじょ》に薄くなって、消えていくので…
それを穴の近くの場所で見ていたナインクールは
、
「バカな…ビジョンだと!!」
…と、一応驚いて見せたが…
「なーんてな」
。
そう言って、両手の前から放射していた青い稲妻を止めて…ヘレルの方に突き出していた両手の構えを解くと…
それから右手の前を光らせて…その光の中から出現させた手の平サイズの火の球を…
ヘレルの幻が消えた場所の左側の方に向かって
、
「ファイヤァボォル!」
。
張り手をするように右手を突き出した事で…その火球を放ち…
それはただ…何もない場所に向かって放ったように見えたが…それがヘレルの左側までいった時…
ドン!!
何かがぶつかった音と共に、うっすらとだが…その場所にヘレルの姿が現れ…
時間が経つにつれ…その姿がハッキリと見え初めると…
さらにナインクールは、追い討ちをかけるように…
手の平の前に火の球を出現させた左手を、また張り手のように押し出した事で
…
「ファイヤァボォル!」
、
ヘレルの顔を狙って火球を放ち…
その火球を、ヘレルは顔の前で両手を交差させた事で防いだが…さらにナインクールは
、
「うおあああああ!!撃つべし!撃つべし!撃つべし!」
、
左手から右手、右手から左手と、火球を出現させた手の平を連続して押し出す事で…何度も火球を撃ち出し…
その火球の連弾がヘレルの…
顔をガードした両腕や胸や腹などの身体のあらゆる場所に直撃し
…
連続して火球の直撃を受けたヘレルの黒いローブは…燃えたりはしなかったものの…
少し焦げたりしてボロボロになり…
そんな黒いローブを着たヘレル自身の身体も…何度も直撃を受けた事で物理的なダメージを受けていた…
。
そんな不利な状況の中でヘレルが、
(なるほどな…
確かに空気が集まる場所では火が良く燃えるから…
火属性の攻撃をされると…直撃した着衣の場所の発火を防ぐので手いっぱいになる…
おまけに私は大気中の空気を集めている状態だから…物理的なダメージにまで魔力をまわす余裕がない…。だが…)
。
そんな考え事をしている中…そのまま攻撃を続けていたナインクールが
、
「11!12!13!14!じゅうごおっ!」
、
右、左、右と、一気に押し切ろうと…何度も張り手をくり返した事で、
さらに撃ち出す火球を連射させていたが…
しかし…顔をまもろうと両腕を交差させた事で、顔への直撃を防いでいたヘレルの
「そろそろ…タイムリミットだ。」
…という言葉通り…ナインクールの身体に
「うっ…」
一気に疲れが走る…
。
そして…先ほどとは対照的な疲れた顔で両手を下ろしたナインクールは
…
(な…何だ?この疲労は…それに…息が…く…苦しい…
くそっ…オレの周囲から奴の方へ空気を移動させたのは、こういう意味があったのか…
しかし…)
。
そう考えている最中に…攻撃が止んだ事で、顔の前で交差させていた両手を下ろしたヘレルに
、
「追い風のうちに私を倒そうと攻撃に集中するあまりに…
自分の状態に気をまわすのがおろそかになってしまったようだな…」
。
そう言われた事で
…
ナインクール
(そうか!道理で復活直後にもかかわらず…魔法が冴えているとは思っていたが…
いつの間にか魔法を強化する魔法にかかっていたのか…)
。
その事に気づき…そのあとすぐに
…
「そうだ!あの時…」
。
(思い返せば…あの少女に紫電雷光波を使ったあとから…調子が上がっていたような気がする…)
。
「まさか!?」
、
そのまさかを証明するように…入り口の近くにいたヘレルは、
「そう…
お前は私と戦う前から…すでにハンデを負わされていたんだよ」
。
ナインクールの考えを察したように…そう答える
…
だがそうなると…1つの疑問が生まれてくる…
だから白い靴を履いたナインクールは
、
「だが…ハァ…いつだ?
ハァ…いつ…魔法にかかった?」
。
激しい息切れを起こし始めながらも…ヘレルに答えを求めて
…
良いだろう…とヘレルも
…
「これはあくまで私の推測にすぎないが…」
。
仮説をたてて…当時の状況にせまるのだった…
。
はたして攻撃を強化する魔法をかけたシャリムの目的とは?
そしてそれはヘレルの言うハンデと、どんな関係があるのだろうか?
…
《つづく…》