第6戦《シャリムの賭け》
ナインクールは、移転装置のある建物の中で…
シャリムが何らかの仕掛けをしている事を予想して、どんな魔法にも対応できるように…
自分の中に眠る魔力を最大限に高めていた…
。
だから、シャリムが入り口の近くに仕掛けた…見えない円柱の中で…
「何!?」
…
何倍もの重力がかかる魔法に、身体が押し潰されそうになっても…
(ククク…
用心深い娘の事だ…これくらいの罠は、仕掛けてある事は読んでいた…)
。
腰まで届きそうな長い黒髪をしたナインクールが
、
「はっ!」
烈破の気合いを入れると…ナインクールのまわりからポチを吹き飛ばした風が吹いて、
ナインクールの身体にかかっている…魔法の重力を吹き飛ばしてしまった
。
そうして、魔法を吹き飛ばしたナインクールは…この建物の中心部にいるシャリム達の方へ目を向けて
…
(なるほど…反撃を受ける 事を考えて距離をとったか…
確かにあそこなら…中距離から長距離の魔法じゃないと届かないからな…)
。
それでも試しに、シャリム達の方に右手を突き出して…広げた右の手の平の前から光弾を放つと
…
その光弾は…シャリムの前で、ガキィン!という金属の音と一緒に弾かれて…
それでナインクールが
(まさか…)
、
気にしているところを読み取ったかのように…離れた場所からシャリムが
…
「あなたの考えてる通り…この魔法陣の上に立つと…見えない金属が出てきて、魔法陣の中にいる人を守る仕組みになっているんです。」
…
そう話すので…ナインクールは
、
(それは、厄介だな…)
。
考えていたが、そのあと…シャリムの足元を見て…
(待てよ…
あったじゃないか…金属系のものでは、防ぐ事が出来ない強力な魔法が…)
。
そこから、何か思いついたのか…
両腕を横に広げてから、両の手の平を開くと
…
右の手の平のところから、球のような形をした雷を…
左の手の平のところから、青白い光を出現させて
…
「我が右手に雷を、我が左手に波動の光を、そこから生じる波動の雷は…
すべてを貫く新たな魔法となる…」
。
シャリムの方に向かって両手を突き出して…
その両手の手の平の前にある…雷と青白い光を重ね合わせると
…
「紫電雷光波!!」
その叫び声と共に…魔力がつづく限り放射し続ける事ができる青い稲妻を放つ
!
だがその魔法は…シャリムにとって
…
(よし!うまく引っかかってくれた)
…事を意味していた。
…
なぜなら…見えない金属の壁があると言うのは、
この状況を作り出すためにシャリムがついた嘘にすぎず…
本当は、1つ目の円柱の周りに築いた…もう一つの円柱が、ナインクールの光弾を防いだ時
…
―――――――――――――――
・・・・・・
ガキィン!という金属の音が出るように細工した、シャリムは
…
(あと2、3発光弾をもらえば…この円柱の結界は、間違いなく崩れる…だからその前に…)
。
「あなたの思ってる通り…この魔法陣の上に立つと…見えない金属が出てきて、魔法陣の上に立つ人を守る仕組みになっているんです。」
…
そう言って、ナインクールが雷系の魔法を放つように誘導していたのだった…
。
―――――――――――――――
……
だから雷と混ざった波動の光が青い稲妻となって、円柱の外側に作ったもう1つの円柱を貫いて…シャリムの方へ迫ろうとした時…
その状況を予想していたシャリムは、その直前に、手の平を広げた両手を前に突き出して
、
(準備は整った!ここで隠し玉を発生させる!)
、
そう考えたシャリムは、それから…
「えい!」
気合いを入れると…まるで魔法を放つ前に出現する光のように…
シャリムの突き出した両手の前に、1メートルくらいの虹色球体がまぶしい光と共に現れて
…
光線となって…見えない円柱を突き破ってきた青い稲妻を、ギュオオォーと、吸い込むが…
その青い稲妻の威力がすさまじいだけでなく…放射された時間が長いために…
それを魔吸いの球で吸い込んでいるシャリムの履いたサンダルが、中心部の足場の上で…
「くっ…」
ズ…ズザザ…と、うしろへ押されるように滑っていく
…
一方…両の手の光の前から、紫電雷光波を放ち続けていたナインクールが…それに気づいて
…
「魔吸いの玉ときたか」
…
隠し玉の存在を知っても…口元に余裕の笑みを浮かべる中…
まだ止む事のない稲妻の光線に…押され続けているシャリムは
、
(まずい…予想より魔法の力が強い…)
何とかしないと…と思っているところで、ガシィッ…と何者かが肩を掴む…
それで、シャリムは、
(ポチさん…)
うしろにいるポチの方を見ようとするが…振り向く前にポチから
…
「まだ足場は、余裕があるから気にしなくていい…
俺がしっかり支えてるから…シャリムは、そのまま光を受け止める事に集中してろ…」
。
そう励まされたシャリムは…
「はい!」
突き出した両手の先にある魔吸いの球に意識を集中させる。
だがナインクールが、突き出した両手から放射し続ける青い稲妻を、受け続けていたせいで…
青い稲妻を吸収していた虹色の魔吸いの球に…ピシィッと、亀裂が入り…シャリムも
「くっ…」
氷の槍に貫かれた傷口が開き…
。
(だ…駄目!このままじゃポチさんも…)
。
着ている白いローブの…お腹と背中のところが、シャリムの血で染まる…。
だが10秒以上も…光線のように突き進む青い稲妻を放射し続けていたナインクールが、
「これで終わりだあ!」
。
一気に押しきろうと、叫んだ時…
突然!建物の入り口の方から飛んで来た火球が、ナインクールの後頭部に、ドン!!と当たり…
「誰だ!」
気がそらされた事で…魔法に対する集中力が、一瞬途切れてしまい…
そのせいで、突き出した両手の前から出ていた…光線のような稲妻が途切れた事で…
放射されていた青い稲妻は、すべて魔吸いの球に吸収されてしまった
…
そしてシャリムは…その時、前に突き出していた両手を…
(今だ!)
、
「く…くあああっ!!」
…と、上の方へ伸ばすと…前にあった虹色の球体も、天井の方にある…ビームライフルの先端のようなものの近くまで浮かび上がって…そこで
…
バリイィーン!!…と砕け散った事で、球の中にたまっていた魔法のエネルギーが、分散した青色の稲妻となって飛び散り
…
その事でポチと…ポチから離れた場所にいたナインクールは、とっさにしゃがみこむ…。
しかし…しゃがみこんだポチの前で、平気で立っていたシャリムが
、
「大丈夫です。」
…と言う通り…分散した稲妻の多くは…
端にある壁の…上の方についた四方の避雷針のようなものに向かって、それに吸収されていき…
そのためだろうか…
立ち上がったナインクールの赤い目に、周囲にあるすべてのランプが点灯し…
エネルギーを測定するためのゲージも…MAX《最大値》のところまで光っている光景が映る
…
一方、ポチも周りの壁から機械のように稼動しているような音を聞いて…立ち上がると…
視界を始め…さまざまな感覚に違和感がある事に気づいて…前にいるシャリムに、
「なんか…
まわりが、グニャッと曲がってるように感じて…気持ち悪いんだけど…」
何とかならないか…聞こうとした時に、シャリムから…
「ポチさん。
これから大きなエネルギーが光と一緒に流れてきます。
だから、わたしの肩をしっかり掴んで、目を閉じて下さい…」
。
そう言われたので…ポチは、
「わかった。」
言われた通りにシャリムの肩を…うしろから両手で、しっかり掴んで、目を閉じる
……
すると、ナインクールの赤い目に…
まるで円柱の形をした立体魔法陣のように…多くの光の文字が、シャリム達の周りを囲みこんで…
さらに、その多くの文字で出来た円柱の外側を…黒い稲妻がいくつも走っている光景が映り
…
「空間が断絶されているだと…」
。
その時、ビームライフルの先端のようなものの所にエネルギーが集まって…その発射口のところが光始めたので…
「まずい!」
、
まともにその光を見たら目が潰される…と思って、目を閉じると…次の瞬間!
…
ずごおおおん!!という…轟音と共に、足場が地震のように揺れる…
そして、その揺れがおさまり…閉じていた目を開けると…
明かりが一切なくなって、暗闇に包まれていたが…
少し時間が経つと…この建物の予備の電源が働いて…パッと、電気がついたように明るくなった…
。
しかしこの時代には…まだ電気という知識がなかったため…ナインクールは
、
「な…何だ?何が起こった?」
、
不思議に思って、まわりを見てみると…
なんと四方から伸びていた…橋のような足場が途中から無くなっているではないか…
。
当然その先にいたポチ達も…中心部の足場ごといなくなって
…
「一体なにをしたんだ?奴らは…」
考え込んでいるナインクールの耳に、うしろから
…
「ワープシューターを作動させたんだ…」
。
誰かの声が聞こえたので
「誰だ!」
身体をうしろの方へ向けると…
入り口の方から…人影が近づいて来て…
それが明らかになると…ナインクールは、
「お前は!?」
…と驚いた顔をする。
それもそのはず…近づいて来たのは、彼が倒したはずのシャルムの姿だったのだから…
。
《31話へ続く…》