第29話《たどり着いた場所…》
周囲が、銅のようなもので出来た…トンネルみたいな洞窟を進んだポチが…
シャリムを背負って、明かりのある場所まで進むと
…
その先には…ちょうど人が入れるくらいの、入り口があり…
さらにその先には
…
――パンテオン=移転装置―――
ポチ
「こ…これは…」
。
天井までの高さは、10メートル以上…
周囲は、30メートル平方にも及ぶ、広い場所となっていて
…
入り口の10メートルくらい先には、20メートル近くはあろうか…円の形をした巨大な穴がある…
どうやら…光は、この穴の底の方から出ているらしい…
。
そしてポチに、おんぶされたシャリムが周りを見渡すと…
銅のような金属で出来た壁の中に…機械のようなものがはめこまれている場所が多い事に気づく
…
そこから考えると…
どうやらここは、ドーム状の建物になっているらしい…
だから…シャリムが
、
(まさか…こんな地下深くに、こんな場所が建てられていたなんて…)
。
もしかしたら…ここに来た人が、この建物に驚いて、他の世界に行けるなんて…都市伝説が生まれたのかもしれないな…と考えているあいだに…
ポチが、その中心の穴の方に向かって、歩いて行って…その穴の下が見える所まで近づくと
…
底の方で、シャルム達が…ファイヤーボール等の魔法を使う時に現れる光が、液体となって…
マグマのように、グツグツ…と沸き立っていたので
…
(この狭い池みたいなところから…光が出ていたのか…)
。
この周辺が明るかった秘密を知ると同時に…
足元の近くに、この穴の上を渡るための足場のようなものがある事にも気づき
…
ポチに、おんぶされていたシャリムも…
鉄で出来た…その足場の先に、金色の六芒星が描かれた場所があり
…
その場所を支えるように…反対側や右斜め前、左斜め前から伸びている…その橋のような足場が、十字に架けられている事に気づく
…
そして、四方から伸びている橋のような足場に支えられた…その中心の場所の上の方を見ると…
天井に、巨大なビームライフルの先端のようなものがあるのも確認できて…
それの大きな発射口を見たシャリムは、
その発射口の真下にある…六芒星のあるところに描かれている魔法文字が、変換式のものである事から…
ライトボーンに、ホーリーライトの魔法を使った時の事を思い出し
…
(なるほど…あそこから、真下にある六芒星に向かって、何らかの力が放たれて…
的となった六芒星が、放たれたその力を利用する事で…別の力が作動する仕組みになっているのか…)
。
だからシャリムが、両目を紫色に変えて…この場所について調べていると…
そのシャリムを背負ったポチから
…
「なんか、変なニオイがするし…かすかに音が聞こえたりしてるけど…
どんな場所なんだろうな…ここ…」
。
視界が、白黒でしか映らないし…ぼやけて見えるので…
人間だった時に見たかったな…と、残念そうにつぶやくと…
それがシャリムの耳に入って
…
(お腹のところの血も固まってきたし…)
そろそろ良いかと思った、シャリムは
…
「ポチさん…もう大丈夫ですよ。」
…ポチに声をかけて
、
「そうか…無理するなよ…。」
心配そうに答える…ポチの背中から
…
「はい。」
…と返事をしながら…降りたあと…
ポチの背中に、左の手の平を当てて
…
「ポチさん。入り口の方に身体を向けて、目を閉じてもらえませんか?」
…
そうお願いしてきたので…ポチが、
「わかった…」
。
穴の見える場所から…入り口の方に、身体の向きを変えたあと…
シャリムに言われた通りに…目を閉じると…
そのポチの背中に、シャリムの左手が当てられた時に…
(何!?)
、
なんと!頭の中に…見知らぬ景色が浮かんでくるではないか…
。
しかも…たまに視点が、ところどころ変わっている所を見ると…
これは、誰かの見ている景色のようだ…。
その事から…ポチは、自分の背中の下の方に、左手を当ててるシャリムに
…
「…これって…もしかして…」
聞こうと思った事を、言い終わる前にシャリムから
…
「はい。サーチの魔法を使っている時のわたしの視界です」
…そう聞かされたので、そのままシャリムと
…
ポチ
「なんか…景色と一緒に、光る文字が映っているんだけど…」
。
シャリム
「ああ…それは、サーチの魔法で、この建物についての情報を引き出しているんです」
。
ポチ
「まわりの方に見えるあれは、何なんだ?」
、
シャリム
「あれは、ランプというものですね…。
この建物の装置が稼動すれば、点灯とかしたりするのでしょう…」
。
ポチ
「じゃあ、あれは?」
。
シャリム
「あれは…ここにあるエネルギーを計測するための目盛りです。
これもランプと似たようなもので…
ここのエネルギーが、貯まれば貯まるほど…光のゲージが上がっていく仕組みになっているようですね…。
0から100パーセントまでありるようです…」
。
ポチ
「四方に、1つずつ突き出ている…あの細長いものは?」
、
シャリム
「あれは、避雷針?…いや違うか…
どうやら雷を吸収するためのもののようですね…。
そこから考えると…ここを稼働させるには、電気とかが必要になってくるのかな?」
、
ポチ
「うわっ!なんか見ている景色が…光の文字で、いっぱいになってきたんだけど…」
、
シャリム
「ごめんなさい。ごめんなさい。ここの建物の情報が、いろいろ複雑だから…
頭の中の処理が追いついていないんですよ」
。
ポチ
「なんか…さっきから、景色の中の文章の入れ替えが激しいな…」
。
シャリム
「さっきの魔法で、頭の中の情報処理を倍速にしているから…そうなっているのでしょう…」
。
ポチ
「うぉふ…うぉふふ…」
。
シャリム
「こ…今度は、なんですか?ポチさん…」
。
ポチ
「いや…考えてみれば、これって…
俺の背中に、手を当てながら…キョロキョロしてるって事だよな。
なんか想像するとシュールな光景だな…と思って」
…
シャリム
「も…もぉ…失礼ですよ!ポチさん!」
、
そんなやり取りをして…そのあとのポチの…
「なあ…
なんか俺の頭の中に星の船の中みたいだ…って、情報が入って来てるんだけど…。」
、
その質問に…
「い…いえ…つまりそれは、オーパーツ…この時代にしては、偉く先進的なものだな…と思って…」
。
答えるのに困ったのか…
シャリムにしては、えらく歯切れの悪い口調で答えた時…
ポチの耳が、
「ん?」
ぴくぴくっと…まるで犬のように小刻みに揺れて
…
「向こうの方から、誰かの足音が聞こえてくる…」
。
そう言って、さっき自分達が入って来た…この建物の入り口の方へ意識を向けたので
…
その先にある…何者かの気配を感じとった、シャリムも…
頭の中を…建物の情報から…その何者かを調べる情報に切り替えると
…
(こ…これは…)
。
その大きな気配を持つ者が誰なのかを知り…
せまりくる脅威に身体を震わせるのだった…
。
《31話へ続く…》