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第26話《シュナウゼンの賭け》

周囲12メートル四方は、あろうか…

薄暗い部屋の床に…

3メートルはある、大きな五芒星が描かれている…

その赤く光る魔法陣の上に…

紫色のローブを着た黒髪の男が立っていた…

「ライトボーンの思念が途絶えただと…

まさか…ライトボーンが倒されたというのか…」

動揺する星宮の近くにいる…

青いローブを着た長い銀髪の青年が

フェルゼ

「驚くのは、それだけではないようです。

奴らのいる地の底から…

圧倒的な気配を感じます…」

そこまで話した時…

パンテオン中が地震が起きたかのように、ゴゴゴ…と大きく揺れる…

それで、ますます動揺した星宮が

「くっ…この強大な魔力は…」

そこまで言った時…

地の底から這上はいあがるような不気味な声が聞こえてくる

???

「闇が広がる地の底から…我は今、よみがえった。

誇り高いマーズ帝国を新たにきずくために…

我を封じた者達すべてを滅ぼしてくれるわ!」

それを星宮の隣で聞いていた、フェルゼは

「頭の中に直接聞こえる、この声が…ナインクールの…」

…薄明かりの中で…

初めて聞くその声に、寒気のようなものを感じるのだった…

―――――――――――――――

そして…その地下の鉱洞の中では…

いているくつまで白くなったナインクールが、

ジリジリ…と、7メートルくらいまで、距離をつめて来るシャリムに

「いつ…オレがナインクールだと気づいた…」

その事にれると…シャリムは

「幻覚の壁を通りすぎて…それについて、わたしが聞いた時…

あなたは、わたしが何も話していないのに…

催眠術にあやつられているかも知れないと言いました」

そう言って、そのあと

「催眠術にかかった者が、操られている事を自覚している例は少ないんです。

まして…記憶がないあなたが、催眠術について知っている事など…普通は、考えられない…

つまり…あなたは、あの時すでに、記憶を取り戻していたんです」

そこまで話すと…

7メートル先にいるナインクールが

「仮に、その話が本当だとして…オレの記憶は、いつ戻った?

まさか最初から戻っていた…なんて事は、言わないだろうな…」

黄色から桃色に変わった光のオーラで、洞窟の中を照らすシャリムを

ためすように…その事を聞くので、シャリムは、

「そう…

確かに、あなたは最初…わたし達と会った時に記憶を失っていた…

でもまぼろしの壁を通った時に…あなたの記憶は戻っていた…

それまでにあった事といえば…幻の壁に刻まれていた文字を読んだ事…」

そう言って…そこから…

「そうです。

あの壁に刻まれていた文字には、2つの意味があったのです」

この答えを導き出した…シャリムは、さらに

「壁は、汝の心の中にあり…汝の真実は今、目覚めん…

この言葉には、あの壁が幻で出来ている事を、気づかせるためのヒントが隠されていただけではなく…

あなたの記憶を目覚めさせるために必要な言葉も含まれていたんです」

つまり…壁に刻まれた文字の前半の…

壁は汝の心の中にあり…は、幻の壁だと気づかせるための言葉であり

後半の…汝の真実は今、目覚めん…は、

シュナウゼンが、ナインクールとしての記憶を取り戻すためのパスワードだと…言うので

それまで、シャリムの話を聞いていた…ナインクールは

「なら…オレ自身が、あの文字を何故、読めなかったんだ?

わざわざそこまで、まわりくどいする事の意味は、あるのか?」

そこまでする理由は、何かとシャリムに問いかけ…

それに対してシャリムは

「それは、あなたを見つけた時に…

あなたの足元にあった紙に、書かれた事が関係しています。

おそらく…あなた自身が自分の記憶を封じたのは、

あなたを見つけた人に…自分がナインクールだと、気づかせないようにするためでしょうが…

そこには、もう一つの考えがあった…と、わたしは、思うんです…」

そこまで話すと…

6メートル先で、ナインクールは、興味深そうに

「ほう…それで?その考えとは…」

何だ?…と聞き返すので、シャリムは

「あなたほどの人なら…

記憶を失ったふりをして…相手をだます事も出来るはずです。

でも、ここにいたら…いつ人が来るのか…わからないし…

ねずみを食べ続ける事にも抵抗がある…

だから…あなたはそこで、ある賭けに出た」

そこまで言うと…シュナウゼンが

「その賭けとは?」

最後まで、シャリムの推測すいそくを聞こうとするので…シャリムは

「まず記憶きおくを失った時の自分自身の状況を、想定そうていした、あなたは…

それを解除するためのキーワードが刻まれた、幻の壁を作り上げてから…

あなたを見つけた人が幻の壁まで行って、そのキーワードを読むように仕向けるためのメモを残し…

…そのために…何年かは、生きられるようにするための知識も一緒に、そのメモに書き残した…」

そうは言ったものの…まだ肝心かんじんな事が残っていた。

だから…ナインクールは

「だが、いつ来るかわからない人を待つ理由は、何だ?

もしかしたら…オレは、まったく人が来ない事も…想定していたかもしれないだろう…」

その事について聞くと…

それが聞かれるのがわかっていたシャリムは

「だから、賭けに出たんです」

そう言ったあと…

シャリムが、ポチが倒れていた場所に近づいた事で…すでに5メートルくらい後方にいるシャルムに

「シャルム!!魔法使いが最後に頼るものは、何ですか!?」

大きな声で呼びかけて…

それについて、シャルムから

「それは、直感だよ!」

…そんな答えが返ってきて…シャリムは

「あなたを助ける人が来る事が…直感的にわかった、あなたは、

その直感にしたがって…計画を実行したんです」

そして…そこで現れたのが自分達だ…と、ナインクールに話し…

それを聞いたナインクールは

「大したものだな…」

そう言って、そのあと

「そうやって、推理する事で、オレの注意を話の方に集中させて…

そのあいだに自分は、あそこに倒れているコボルトを助けようと考えている…

しかし、一気に行けない事を考えると…

お前…身体のどこかをケガしてるな?」

今度は、ナインクールが…シャリムの状態を推理すると…

そのあと右手に、フッ…と、小さな氷の槍を出現させて

「ただオレが話を聞いてるだけだと思ったか?」

ポチの方に向けて…

肩の上で、右手に持った槍を投げようとする…槍投げの態勢に入る

それを見て、シャリムが走ろうとしたものの…

まだポチまでの距離は、5メートルくらいあり…それに

(うっ…)

動くたびに…右足に激痛が走り…思うように身体が動かない…

しかし…ナインクールが右手に持った氷の槍を

「そこで見届けるがいい!コボルトの死に様を!」

洞窟の壁に、もたれかかったポチを狙って、ブン!…と、投げた時

ポチを助けようとする想いに、つき動かされて…シャリムは

(ポチさん!)

まだ残っていた…素早さを上げる魔法の力を借りて、槍よりも速く動いていた

―――――――――――――――

一方…その10秒以上前に

壁に背中をつけたまま…目を閉じていたポチは、

そのまま、やられたふりをしようと…

両足をダラーンと伸ばしていたが…

シャリムの推理が終わって…周囲があわただしくなってきたようなので

両目を開くと…

なんと!ナインクールが、ポチを狙って…氷で出来た槍を投げようとしているではないか!?

それを見て、ポチが…

(やややヤバい!このままじゃ死んじゃう!)

あわてて、立ち上がろうとするが…

無情にも、その途中で

「そこで見届けるがいい!コボルトの死に様を!」

ナインクールの投げた氷の槍が…

早く立ち上がろうと…あせったせいで…

かえって立ち上がれなくなった…ポチの胸をつらぬこうと…せまってきて…

終わりを覚悟したポチは、強く目を閉じた

だが次の瞬間!

氷で出来た槍はポチにとどかず…

変わりに…ポチの顔や茶色の衣服に、ぴぴっ…と血がかかる

一体?自分が目を閉じてるあいだに何があったのか…確認しようと…ポチが目を開くと

「シャリム!?」

そこには…氷の槍に、お腹に貫かれた…小さな少女の背中があった…

《第5戦へ続く…》



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