第25話《その希望は、見方を変えれば絶望となる…》
ポチと一緒に、子供達がいた場所を追い越したシュナウゼンは、
そこからさらに50メートルくらい先に進むと…そこで一度、立ち止まり
…
「うん。この場所だな」
…そう言って
…
そんなシュナウゼンの隣で立ち止まって、ポチが
…
「どうしたんですか?」
、
シュナウゼンの足元を、光の球で照らすと…
シュナウゼンから
…
「ここの下に希望の箱が埋まっているんだ。
オレは、疲れてて…あまり体力が残ってないから…君が掘り出してくれないか?」
。
そう言われたのだが…ポチとしては、地面が固そうなので
…
「やっては、みますけど…掘れないかもしれません…」
。
右手に持った光の球をシュナウゼンに渡してから…
あまり期待しないで下さいね…と言おうとした時…シュナウゼンに
、
「大丈夫だ。穴を掘っても…手が傷まないようにオレが魔法をかけるから…
まずは、リュックを置いて来てくれるか?」
。
シュナウゼンにそう言われて…ポチは、
「うぉふ。」
…そう返事をしたあと、
少し離れた場所に行って…そこで、背中に背負ったリュックを地面に置くと
…
そこから元の場所に戻ったところで…
ポチに向かって、広げた右手を突き出している…シュナウゼンが
、
「英雄の母たる銀足の女神よ…鋼の源たる汝の息吹を我が手に集め…
鉄の器となるための祝福を彼の者に与えよ」
。
突き出した右手の手の平から青白い光を
…
「オーラメタリオン!」
…ポチに向かって放つと
その放たれた青白い光は、次第にポチの全身を包み込んでいく
…
そして、魔法を使ったあとで…シュナウゼンが、その場所を離れる中
…
その青白い光に包まれた両手を広げて…その手の平を見ながら…ポチは
、
(なんだろ?身体の周りを何かが包み込んでるような…この感覚は…)
。
これなら思った通りに穴を掘れるような気がする…と、自分の着ている茶色の服の両手の腕の袖を巻くし上げてから
…
その場所に両足の膝をついたポチの両手が
…
「俺の両手よ!モグラのように突き進め!!」
。
ココホレワンワン!!ココホレワン!…と両手を使って、地面に穴を掘ると
…
その両手が…まるで畑の中を耕す鍬のように…地面を、サクサクと掘り進んでゆく
…
シュナウゼンは、そのポチの雄姿を見ながら…両手をギュッ…と握りしめて
…
「頑張れポチ!ここが君の最大の見せ場だ!!」
…と、叫び声をあげるのだった…
。
―――――――――――――――
ちょうど、その頃…
地面の上に正座したシャルムの膝の上で…横になっていたシャリムが目を覚まして…
緑色に戻った瞳を、うっすらと開けると
…
「シャルム…」
膝をかしてくれたシャルムの名前を言ってから…身体を起こして…
そのあと…キョロキョロと辺りを見てから…シャルムに
、
「…ポチさん達は?」
、
珍しく少し動揺した顔で確認すると…
それを聞いたシャルムが
…
「シュナウゼンさんと一緒に、先に言ったよ」
。
それがどうかしたの?…と聞こうとした瞬間
シャリムは、あわてたように
…
「いけない!」
駆け出そうとするが…その時
…
「うっ…」
右足に、ズキィン!…と痛みが走り…
そのせいで前の方に転んでしまう…
。
そして…近くで、それを見ていたシャルムが
、
「シャリム!」
うつ伏せに倒れた金の髪の少女の名を叫びながら…側に寄ると…
その少女であるシャリムは、ググッ…と立ち上がりながら
…
「シャルム!!肩をかしてください!」
。
自分の身体の左側にまわりこんだシャルムに頼んだシャリムは、シャルムの左肩に左手を置いて
…
そのまま肩をかして一緒に歩いてくれるシャルムに
、
「え?い…一体どうしたの?」
…と聞かれた事に対して、シャリムは
、
「説明は、あとです!今は、とにかく急いでください!!」
。
そう答えながら…身体の右側で支えてくれるシャルムに…
「わかった」
。
歩いている足を早めてもらうのだった
…
シャリム
(ポチさん…)
。
―――――――――――――――
一方、20センチくらいの深さに掘り進んだ時だろうか…
両手を、犬かきのように…使って、地面を掘っていたポチの右手に、その時…カチッ…と何か当たった
。
どうやらそれは、石で出来た何かのようなので…ポチは
、
「これか…」
それが取れるように…周りを掘った事で…
ポチの掘った穴の中から…20センチくらいの石で出来た箱が姿を現す
。
ポチは、土で汚れたコボルトの両手で、それを穴の中から取り出して…地面の上に置くと
…
その石で出来た箱のフタのところに…
古代文字のようなものが、数多く刻まれていたので…シュナウゼンに
、
「もしかして…これって、シュナウゼンさんが昔、埋めてた物なんですか?」
。
タイムカプセルみたいな物じゃないか?…と、近くにいたシュナウゼンに聞くと…
黒い靴を履いた…長身のシュナウゼンは
、
「まぁそんなところか…
実はさ…その箱に、オレは、あるジンクスをかけてるから…出来れば、その箱を埋めたオレ自身は、開けたくないんだ。
だから君が、その箱を開けてくれないか?」
。
そうポチに頼むので…
頼まれたポチは、その箱を両手に取ったまま
…
「うぉふ。わかりました。」
立ち上がった、その時に
…
(あれ?思ったより軽いな…これなら片手でも…)
。
そう思ったポチは、そのあと…右手の上に置いた
その箱のフタに左手をかけて開けると
…
ピカッ!!
。
突然!開けた箱の中から光が飛び出してきたので
…
「うおっ!」
。
思わず目を閉じたポチが、それで、びっくりしたせいで…思わず左手に持っていたフタも落としてしまう
…
しかし…ポチの間近にいたシュナウゼンが…
「この時を待っていた!!」
。
その光を浴びながら…目を閉じると
・・・・・・
ファサ…と、腰まで流れる白い髪は、漆黒の色に染まり…
黒い魔法衣は、その色とは逆の…純白の色に染まる
…
そして、そんなシュナウゼンが、閉じた目を開いた時…
青かった瞳の色は、血のような…赤い色に変わっていた…
。
一方…白黒の視界だったにもかかわらず…
箱を開いた時の光が、あまりに強かったために…
びっくりして、目を閉じたポチが…目を開けた瞬間
!?
ゴオォ!…と、突然吹いた強烈な風が、ポチを周囲の壁の方へ吹き飛ばし
…
吹き飛ばされたポチの背中が、ドン!…と壁にぶつかった時…その衝撃で
…
「がっ…」
。
犬のような口を開いたポチが…
そのまま、ズルッ…と、壁にもたれかかるように…くずれ落ちる
。
そして…ポチを吹き飛ばした強風が影響してか…
リュックと一緒に置いた光の球が、コロコロ…と地面を転がっていく中
…
ポチが壁にぶつかった時に、ポチの右手から離れた…石の箱が地面に落ちた時
…
「ポチさん!」
。
少女の声と共に、黄色の光と青白いオーラの光が近づいてくる
…
そして…青白いオーラを放つシャルムに
身体を支えられたシャリムが10メートル近くまで近づいた時…
シャルムに肩をかしてもらいながら歩くシャリムは
…
「やっぱり神の見えざる手は、あなただったんですね…
シュナウゼンさん…いえ…ナインクール=シュナウゼン…」
。
シャルム
「えっ!?」
。
驚く、少年の青い視線の先で
…
光の球が遠のいたせいで…薄暗い闇に包まれた男は、口元に、ニヤッ…と笑みを浮かべた…
。
《26話へ続く…》