第4戦《シャルムの誤算》
シャリム
「羽つきを、呼び出します」
。
その言葉を聞いて、
シャルムが
「今まで、みんなのために魔法を使って、疲れているのに…
ここに来て、精神力を大量に使う物質召喚をやるなんて…無茶にも、ほどがあるよ」
。
…他の手を考えよう…と、シャリムを説得するが
…
それでもシャリムの決意は、変わらず
…
「あれを見てください」
、
シャルムに鎧剣士の方を見るように言うので…
シャルムも、その方向に顔を向けると
…
10メートル先で、鎧剣士は、シャルム達の方に向けた左手を裏返してから…
…親指以外の4本の指を、クイクイと、曲げる事で…シャルム達を招き入れるように、挑発していた…
。
シャルムは、その挑発を見て
…
「シャリム。」
身長が、90センチちょっとしかない…シャリムの方に、顔を向けると…
シャリムは、瞳の色を、緑から…紫色に変えて
…
「売られたケンカは、買わないと失礼です。」
…と、紫色の両目を静かに燃え上がらせていたので
、
その様子を見た…シャルムは
、
(ナイトモードに、なっちゃった…)
。
もう…こうなったら、誰にも止められない…と、諦めたように…
シャリムから…3歩うしろに下がり…
、
そうして…シャルムが、うしろから見ている前で
…
シャリムは、左手の人差し指と中指を立てて…
…その立てた2本の指を使って
…
「パーテル、アウ"ェクレド」
。
上から下へ…そのあと、右から左へと十字を切る
。
すると…十字を切った場所に、青い十字の光が浮かび上がり
…
シャリムが、その十字が光輝く場所へ…左の手の平を合わせて…
それから…
…
「セドトゥア、ペル、ジェセム、クリスタム、フィリウム、ウニゲニトゥム。
純白の乙女の名を持つ翼の剣よ。
我が前に姿を現せ!」
。
呪文を唱えると…
…
シャリムの左手の手の平の前で、さらなる青い光と共に…
等身の幅が9センチ。そして、長さが50センチくらいある…双翼の剣が現れる
。
シャリムは、手で握る所の上の方に…
白い2つの翼がついた剣を、左手で握りしめて
…
「恐れる心に勇気を示せ!
双翼の剣アルウ"ィド!!」
。
雄叫びをあげながら、その左手に持った剣を掲げると
…
左手で掲げた剣を、下げると同時に、うしろの方へ振り向き…
その先にいるシャルムに
、
「シャルム。少しの間、これで時間をかせいでくれませんか?」
…
わたしは、他にする事があるから…と、シャルムに、その剣を差し出し
…
差し出された剣の前で、シャルムが
、
「でも僕、剣は…」
やった事がない…と、迷っていると…シャリムが
、
「あのメタルグリーンさんは、一発狙いの、力押しタイプです。
シャルムが持っている、スピードを生かせば、十分に戦えるはずです」
。
そう言ってるあいだに…鎧剣士が5メートルくらい近くまで、迫って来たので…
、
それで覚悟を決めたのか……シャルムは、シャリムに差し出された剣を、右手に取ると…
、
(軽い…ナイフより軽いかもしれない…)
。
それに身体も少し軽くなっている事に気づき
…
シャルム
「いける!これなら!」
、
シャリムを追いこして…鎧剣士のいるところまで、走っていき…
、
剣を持って迫る、シャルムに対して…鎧剣士が右手に持った刀を、ブン!…と、振り下ろすと
…
シャルムは、振り下ろされる直前に、バックステップをする事で、
その斬撃をかわし…同時に、鎧剣士の頭部に、シャルムの左の手の平を向けて、そこから…
、
「ルァイトボオゥッ!」
、
光の弾を放って…その光の弾を、鎧剣士の頭部に、ぶつけると…
そのせいで、鎧剣士の足元が、ふらついて…隙が生じた事で、
…シャルムの頭の中に
…
(いける!これなら僕でも!)
…欲が生まれていた。
、
だが…シャルムは、気づいていなかった…
。
…その心理こそが、戦いの中で、多くの人の命を奪ってきた…心の罠だという事を…
。
シャルムが、向かい合う鎧剣士の左足を狙って
、
右手から両手に持ち変えた双翼の剣を……まるで野球のバットを振りぬくように…左側から、ガキィン!…と打ち込んで
、
鎧剣士が、バランスを崩すのを狙っていた……だが、それでも…鎧剣士は、バランスを崩さず…
。
頭の上に持っていった刀の刀身を…ブン!と、兜割りのように……シャルムの頭部を狙って、叩きつける!
。
しかし、シャルムも右手を使って、頭部を守るように、横に構えた双翼の剣の、刃のうしろに、左手の手の平をそえて…
ガキィーン!という音と共に…
向かってくる刀の刃を防ぐが…
、
…そのせいで…シャルムのサンダルを履いた両足に、ズン!と体重が、かかり
…
シャルム
「くっ…」
、
シャルムの足元に痺れが走っているあいだに…
その隙を狙って
…
腰の右横の方に…右手に持った刀を、もっていった鎧剣士が…
そこから、シャルムの首の左側めがけて、
スパッ!と、刀で斬ろうとするが…
だがそれは、鎧剣士と向かいあったシャルムが、首の左側を守るために…
、
剣の刃のうしろに、左手の手の平をそえながら…
縦に構えた双翼の剣に、受け止められて
、
ガキィーン!と、鎧剣士の刀と、シャルムの剣の刃が、激突すると…
、
縦に構えた剣で、刀を受け止めたシャルムは、体重が軽かったせいか…
、
その衝撃で、横の方に、体が吹き飛ばされて……
その先にある洞窟の壁に、ゴン!…と後頭部を打ってしまう…
。
…そのあと、シャルムは、ズルッ…と壁に、もたれかかるように…倒れながら
…
(ダメだ…目の焦点定まらない…)
。
脳震盪のようなものを起こしているところで…
、
鎧剣士は、追い討ちをかけようと…シャルムの方に向かって歩いて行き
、
そして、そんなシャルムに迫った…鎧剣士の刀が、振り上げられて
…
洞窟の壁に、もたれかかるように倒れた、シャルムに向かって…
今にも、その刀が振り下ろされようとしていた…
。
ポチ
「シャルムウゥー!!」
。
ブン!!
、
・・・・・・?
はたして、シャルムの運命は……
…
《つづく…》
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双翼の剣アルウ"ィド。
、
羽つき、とも言われる…
白い鳩の羽のような2枚の翼を持つ剣で…
、
持ち手のところが、頭部にあたるのか…
その手に持つと…翼が逆になる特長がある…
。
この剣は、羽毛のように軽く…
その手に持つと、身体が、鳥のように軽やかになると、いわれている…
。
そして…この剣は、持ち主が、遠くにいると…
…
持ち手のところが、上になって…
持ち主のところまで…パタパタと、羽を羽ばたかせて…空を飛ぶという逸話があるため…
パタパタ剣とも呼ばれている…。