第23話《コボルト屋。ポチもワルよのう》
《22話の続き…》
。
ポチ
(ああ…くそ…俺の視界、白黒画面だから…
光の球が遠いと、ホント、キツイわ…)
。
広くなった洞窟の中…
シャリムの前に一歩、踏み出ると
・・・・・・
2メートル手前にいた…ベンチュウが
うしろの2本足だけで、立ち上がり…
「お前…誰だチュウ。」
、
ポチの事を聞いてくるが…ポチには、何を言っているのか分からず
…
斜め後ろにいるシャリムに…
、
ポチ
「俺にも言葉を通じるようにしてくれ…」
、
そう頼みこむので…シャリムは
、
「わかりました。」
…と、リュックを背負ったポチの、左側に立って…
ポチの左手を、小さな右手で繋ぐと
…
ポチが繋いだシャリムの小さな右手から…
、
シャリム
「ん。」
自分の魔力を…微弱な電流と共に、ポチに送り込んで…それからポチに、
…
シャリム
「今、わたしがベンチュウさんと会話をするために、必要な力を…
ポチさんにも送りました。これで、ポチさんも
ベンチュウさんと、お話できるはずです。」
、
そう話し…
、
それを聞いたポチは…前にいるベンチュウに…
、
「私は、ポチという…ケチな商人でして…
あなた様は、見たところ…ネズミ達の生存競争を生き残った立派な方のようですね…」
。
おだてて持ち上げると…ベンチュウも
「お前…なかなか話の分かる犬だチュウ…
確かに、おれは、
この身体の大きさで、生存競争を生き残った…鼠の中のネズミだチュウ…」
。
すっかり機嫌を良くしたようなので…
…さらにポチは、
「犬ではなく…コボルトです。」
一言
断りながらも
、
ポチ
「それに、なかなかのイケメンでらっしゃる…
隣にいるシャリムなどは、あなたの事を
カッコイイ…素敵な人だ!結婚したい!…と、言って聞かないんですよ。」
、
まったく…困ったものです…と、
わざとらしく…ため息を吐き
…
手を繋いでいるシャリムから
…
(そ…そんな事…わたし、一言も言ってないですよ。ポチさん!?)
、
非難する思念を送られながらも…
、
「よっ!色ネズミ」
…と、さらにベンチュウをおだてると…
、
前にいるベンチュウから
…
「確かに、おれは生存競争の時にメスも、殺してしまったから…
生活にゆとりが出来たら、嫁がほしいと、思っていたチュウ…。
でも今は、その日ぐらしが精一杯で…
そんなゆとりが、どこにもないチュウ…。
それに、おれは年上が好みで、
乳くさいガキには、興味がないチュウ。」
、
無駄に良い話を、話して聞かされ…
シャリムの
(うう…わたしってば…
踏んだりけったりじゃないですかあ…)
。
落ち込んだ思念を、左手に感じながらも…ポチは、
いよいよ本題とばかりに
…
「チーズの事ですが…
申し訳ないのですが…
実は、ただ今
在庫が、切れてまして…」
、
チーズの事を話して
…
それを聞いた、ベンチュウから
「在庫切れって…また
あの魔法みたいなもので、出せないチュウ…」
。
やはり、その事を聞かれたので…
ポチは、
「いえ…あれは、実は…
本物のチーズがないと出来ないものなんですよ。」
、
あれは、あくまでも魔法ではない…と、ベンチュウに話して聞かせ
…
それでベンチュウが、
「うう…残念だチュウ」
、
落ち込んでいるところで
ポチは、
「そこで、そんな
あなたに耳寄りな情報が、あるのですが…」
、
そう話を持ち出して
、
「な…なんだチュウ?」
、
その話に食いつくベンチュウに…
ポチは、
「実は、私ども、ただ今
見逃しキャンペーンというものをやっておりまして…」
、
なんと!見逃しキャンペーンなるものが…実在している事を説明し
…
そのあと…さらに畳み掛けるように…ポチは
、
「今、私達を見逃すと…
7日後に、チーズ100個が送られる他に…
なんと!?特典として!
ここから脱出する方法が、私達から教えられます」
そのあと…
どうです?お徳でしょう…と、
ベンチュウに向かって、話すと…
、
それを聞いたベンチュウは、
「チュウウウー…
確かに…お徳だと思うけど…
何か保証出来るものがないと、信用できないチュウ…」
。
たとえば保証金とか…と、例を出すので
…
それを聞いたポチは、そこで……
―――――――――――
シャリム
(うう…わたしってば…
踏んだりけったりじゃないですかあ…)
…
今、ポチの左手を、右手で繋いでいるシャリムが…涙を流していた時の事を、思い出し…
・・・・・・
、
ポチ
「シャリム…」
、
シャリム
「はい。今、避けますね。」
、
…シャリムの右手を…ポチの左手から離す事で…
…ベンチュウとの通信を、一回中断して…
、
それから…
、
ポチ
(あの時…確かにシャリムの足元に、何かが落ちたような音がした…。)
、
だから…きっと、シャリムの足元に…
ダイヤモンドが、落ちてるはずだと…しゃがんでから…
、
左側にいるシャリムに、そこを避けてもらって…
その足元周辺を、調べると…
・・・・・・
ポチの予想通り…なんと、そこに…
約1センチくらいの小さなダイヤモンドが、落ちていたので…
…
ポチは、それを右手で拾ってから…
立ち上がって、
……
ポチ
「シャリム。」
、
シャリム
「はい。」
、
…またポチの左側に立ったシャリムに、手を繋いでもらうと…
、
右手に持った、小さなダイヤモンドを、ベンチュウに見せびらかして…
、
「それは、なんだチュウ。」
…興味深げに、
ポチの右の手の平の上を、見つめるベンチュウに…
ポチは、
「丸いですけど…これは、ダイヤモンドですよ。」
…と、答えると
…
それを聞いたベンチュウは、
「だ…ダイヤだチュウ!?」
…
覗き込むような…姿勢で、ポチの右の手の平を見つめ…
、
ベンチュウ
「…た…確かに、ダイヤだチュウ…。」
…
そう言って、姿勢を戻すと…
、
ベンチュウ
「だからと言って…金で、ネズミの心は…」
…
動かせないチュウ…と、言う前に…ポチから無言で、そっと…
左の前足に、そのダイヤを持たされて……
、
…小さいダイヤを手渡したポチから…
「…マーキングをすれば、どこに置いても、大丈夫なはずです。」
、
そう言われたので…
、
ベンチュウ
「ポチも、なかなかのワルだチュウ…」
、
ポチ
「いやいや…ベンチュウさんには、およびませんよ。」
、
ベンチュウとポチは、そんなやり取りをしたあと…
まるで…どこぞの悪代官と、悪どい商人のように…
、
ベンチュウ
「チュウーチュッチュッチュ!」
、
ポチ
「ウォオーフォッフォッフォ!」
、
ワルそうな高笑いを、するのだった
・・・・・・。
《24話へ続く…》