第18話《四人目の仲間?》
《17話の続き…》
シャリムを抱えたポチと一緒に大穴の中へ飛びこんだシャルムは、
胸の前で両手に持った光の球を落とさないように配慮しつつ
…
シャルム
(ゴーレムに合体魔法を放った時のように、空中停止を使って…)
、
地面に着地するまで、50メートルはあろうか…
一気に18秒止まった…あの時とは違って、今度は、1秒…2秒…と何度も小刻みに止まる事で…まるで車のブレーキを小刻みに何回も踏んだ時のように…徐々《じょじょ》にシャルムの落下する勢いを殺していき…
その一瞬の空中停止を5回くらいやった時に、チラッと…下の方を見ると…
そこには、ポチに抱えられたシャリムの姿が映っていたので…シャルムは
、
(ポチに捕まれている事で今、倍以上の体重がかかっているだろうに…
良くあそこまで減速できるなあ…)
。
自分には、とても無理だと感心しながらも…
そのあと…何度も一瞬の空中停止をくり返す事で
…
(あの時と違って、ほんの一瞬だけしか空中で止まる事は出来ないけど…
一度ソレを使うたびに…確実に落下するスピードが落ちてきている…。
これならきっと…)
…
かなり減速してから、着地するのだった
・・・・・・
。
そうして足に履いたサンダルを…地につけたシャルムが、光の球を両手から右手に持ち変えたあとに…
ポチ達が着地したところに青い視線を向けると…
ポチの手を離れたシャリムが、上の方を見上げていたので…
それが気になったのか…シャルムが
「どうしたの?」
…と声をかけると…シャリムは、シャルムの方を振り向いてから
…
「この高さを昇るとなると…かなりの魔力を消耗します。
7日も戦ったあとに…ここを魔法で昇ったら…普通の人に殺されてしまってもおかしくないと思って…」
。
シャルム
「でも…確かヘレルは、友達であるナインクールの名前を勝手に名乗って…
元老の名の元に純血主義に逆らう人をたくさん殺して…
そのあげくに…それを止めようとしたナインクールをここに呼び出して殺してしまったんだろ。
純血主義を進める事に反対した元老を暗殺したって、噂もあるし…
そんな奴、死んで当然じゃないか…」
。
そう話すシャルムに
…
シャリム
「シャルム…本当にそう思っているのですか?
あなたは…」
。
シャルム
「えっ?」
。
キリッ…と、真剣な目で、自分を見つめるシャリムを見て…シャルムは、
なぜか自分が大切な事を…忘れているような気がしたのだが…そこに
…
ポチ
「話は、それくらいにして…そろそろ先に行かないか?」
…と、茶色い服装をしたポチが声をかけてきたので…二人は…
…
シャリム
「はい。」
、
シャルム
「分かった。」
、
ポチに返事を返して…この先に続く洞窟の道を歩き始めた…
。
・・・・・・
。
高さも…横幅も…3メートルくらいはあるだろうか…空洞の大きさは、
ここに落ちる前に歩いていた時と…たいして変わらなかった…
。
そんな洞窟の道を…金の髪の少女の前で歩いていたポチが、隣を歩く銀の髪の少年に
…
「なあ、シャルム。
さっき話してたのって…前に話してたヘレルって奴の事か?」
、
そう話しかけると…
右手に持った光の球で、あたりを照らしていたシャルムは、自分の方に犬みたいな顔を向けているポチに
…
「うん。
ナインクールを倒したあとのヘレルの行方を知る人は誰もいない…
元老の一人にナインクールの仇を討たれたと言う噂もあるんだけどね…」
。
そう話して聞かせながらも…
(でも…
シャリムが疑ってる通り…この話は、何かうまくいきすぎている気がする…。
それになんだろう?
何かひっかかるんだ…何かが…)
。
そう考えているシャルムの目に…
「ん?」
、
…これから歩く…洞窟の道の右端の方に一瞬、人影が見えたような気がしたので…
その方向に右手に持った光の球をかざすと…
埃だらけの黒い魔法衣を着た男が…洞窟の右側の壁に背中を押しつけたまま…あぐらをかいているのを発見する
。
シャルムの隣で歩いていたポチも…
あぐらをかいたまま…うつ向いているようにも見える…その男の存在に気がつき…
「大変じゃないか!」
、
駆け寄って、しゃがんでから…
その黒い魔法衣を着た男の背中に右手をかけて
…
「おい!!しっかりしろ!」
背中にかけた右の手の平をゆさゆさと揺らしながら…助け起こすと…
その揺れで
…
???
「うーん…」
、
白くて長い髪をしたその男が、ゆっくりと青い両目を開き
…
ポチ
「気がついたか…」
。
男が目を覚ました事でポチがほっと胸をなでおろす
…
(俺の目は白黒でしか映らないから…なんとも言えないけど…
それにしても…)
きれいな顔をしてるな…とポチは思う
。
ポチのうしろに立つシャルムの光の球で照らされた男の肌は…年頃の娘のように白くて美しい…
年齢は、見た目には、20代と言ったところだが…
男の雰囲気には、もっと上の年齢を感じさせる何かがあった…
。
腰にとどくぐらい長い髪をしたその男は、目の前にポチがいる事に気づくと…
。
???
「コボルト!?」
、
青い目を見開いて…一瞬、驚いた表情を見せるが…そのあと…
すぐに落ち着きを取り戻してから…立ち上がると
…
???
「きみは?」
、
低音の整えられた美声で、ポチに声をかけてきたので…ポチは
、
「俺は、ポチ。」
、
自分の名前を告げたあと…うしろの方を振り向いて
、
「そして、うしろの二人の子供のうち…
男の方がシャルム。女の子の方がシャリムと言います」
。
シャルムとシャリムの名前を告げたあと…
自分より少し背が高い…青い目の男の方に…犬のような顔を戻す。
一方、その青い目の男は
、
「そうか…」
…と頷いたあと…
「オレはシュナウゼン」
…自分の名を告げるのだった
。
―――――――――――――――
…
美しい男シュナウゼンとの出会い…
はたしてこの出会いは、ポチと子供達に何をもたらすのだろうか
・・・・・・
?
《19話へ続く…》