《星宮の思惑》
周囲12メートル四方は、あろうか…
。
薄暗い部屋の床に3メートルはある…大きな五芒星が描かれている…
その赤く光る魔法陣の上に…紫色のローブを着た黒髪の男が立っていた…
。
???
「まさか…ゴーレムの部屋を脱出するとはな…」
。
魔法陣の上で、そう話す…その青い目をした少し長めの黒髪の男のところに
…
???
「このままでは、パンテオンの警護の人数を減らして、わざと行かせた子供達を…あの洞窟で殺して、
脱出を手引きした者として、元老の一人を失脚させる星宮様の計画にも…支障が出るのでは、ないのですか?」
…と、黒髪の男を星宮と呼ぶ…青いローブを着た長い銀髪の青年が近づいてきたので…
その腰まで届きそうな長い銀髪をした青い目の青年を見た星宮は、
「フェルゼか…」
。
その銀髪の青年の名前を告げたあと、ニヤリと笑って
…
「その事なら心配ない…
あの先にあるのは、ヘレルがナインクールを封じたといわれる場所だからな」
。
そう言うと…フェルゼと呼ばれた長い銀の髪をした青年は
、
「ナインクールですか…確か当時もっとも若い元老で…
純血主義を主張して、それに逆らう者をつぎつぎ殺していった男ですよね…」
。
過去にあった出来事を星宮に話し…それを聞いた星宮は、魔法陣の上から
…
「それだけではない…
奴は、純血派の勢力を拡大するために…他の国の血が混ざった元老や星宮達を、つぎつぎ暗殺していた。
私は純血の星宮だが…奴は、殺しの対象がいつ変わってもおかしくない危険な男だからな…。
それに奴は、強力な魔術師でもあったから…戦っても勝てるはずもない…
だから当時は、いつか殺されるんじゃないかと…身体を震わせていたものさ」
…
自分のすぐ近くまでやって来たフェルゼに…当時に思っていた事まで説明する。そして…
。
フェルゼ
「だから…いつそのほこ先が自分に向けられるかを恐れた純血の元老院や星宮の方々《かたがた》は、
ナインクールの親友でもあった魔術師ヘレルに…彼の討伐を願い出たのですね。」
…
足元に黒い靴を履いたフェルゼが、その話をすると…
同じような靴を履いた星宮が
、
「奴は、ナインクールの…いきすぎた行為に胸を痛めていたようだからな…
私達が皇帝陛下に働きかけた事もあって、奴は、親友を倒す覚悟を決めたようだった…」
。
フェルゼに…ヘレルとナインクールが戦うようになった訳を説明して
…
「それで、あのパンテオンの奥深くまで呼び出されたナインクールと、
そこで待っていたヘレルが戦った訳ですね…」
。
フェルゼがそう話すと…星宮は、
「そうだ。
ヘレルとナインクールの戦いは、7日間にも及んだが…
結果は、我々の予想通り…ヘレルが勝ち…
その戦いで魔力を封じられたナインクールは、
魔力を封じたヘレルによって…パンテオンの地下の洞窟の奥深くに閉じ込められた…。
あのゴーレムもどきも、万が一の事を考えて…我々が置いたものだ」
。
なんと、あのゴーレムもナインクールを恐れた星宮達に置かれたものだと話し
…
フェルゼ
「それで、そのあとナインクールを倒したヘレルは、どうなったんですか?」
…
その後のヘレルの行方が気になったフェルゼに…星宮は
、
「暗殺者を送りこんで…彼にも死んでもらったよ。
彼は正義感の塊みたいな男で、
生かしておくと…いろいろ厄介な相手だったのでね…。
まあ彼は、ナインクールとの戦いで、力を使い果たしていたようだから…殺すのは簡単だった…」
。
なんと、ヘレルがすでに殺されていた事を暴露したので…
話を聞いたフェルゼは、そこでニヤリと笑って
…
「なるほど…ケンカ両成敗という訳ですね…」
。
自分達に都合のいい解釈をすると…そこで星宮もまた…ニヤリと笑い
…
「ああ…確かにケンカ両成敗だ。
元老の一人だったナインクールがやった事が世間に広まれば、元老達の評判を落とす。
だから元老達は、元老ではない者に、その泥を被ってもらう必要があった訳だ…」
。
フェルゼ
「それがヘレルだと…」
。
星宮
「そうだな…彼には悪魔になってもらった…」
。
フェルゼ
「同じように…あなたも元老の一人に泥を被せようとしてらっしゃる…」
。
そう言う…青いローブを着た青年に
、
星宮
「時代は、繰り返すってね…。私が元老になるためには、一つ空席が必要なのだよ…」
。
紫色のローブを着た男は、そう言って…さらに
…
星宮
「コボルトと子供達は、おそらく異なる扉と呼ばれる場所を目指すのだろう…
まさか…ナインクールがヘレルの話に釣られた理由と同じとはな…」
。
これも運命のいたずらか…と、つぶやいたあと
…
星宮
「だが、あそこに行くためには…
ヘレルが封印した、ナインクールの魔力を守るために…用意された剣士がいるところを通らなければならない…
そして…あの剣士と最初に戦う時…魔法使いでは勝てない…。
…アレに気づかない限り…魔法使いでは、絶対に勝てんのだ!」
。
そう言って、フハハハハ!と高らかに笑うのだった
・・・・・・
。
《13話へ続く…》