第3戦《調子の乗りすぎには、注意しましょう》
3本の円柱が折れて、1本の柱が残った…その空間の中で…
シャルムは、自分に向かって右拳を放つゴーレムから…すり抜けるように移動して…ゴーレムの背後に立つと
…
ゴーレムに背中を向けながら…
「無駄だよ。
パワーもスピードも元の状態の半分以下となった君の動きは、もう見切った」
…
そう言ってから…ゴーレムの方を振り向いて
…
(でも…見切ったのは、単発の攻撃だけで…
コンビネーションみたいな繋げる攻撃がきたら…今みたいに、かわせるかどうか分からない…。
それに…)
。
しばらくのあいだ、息をつく間もなく、動きまわっていたので、シャルムの表情にも疲労の色が出はじめていた…
。
そしてシャルムは、ギギッ…と、自分の方へ身体を向けるゴーレムを見ながら
…
「でも、このままだと…
攻撃を避けるのが精一杯で、柱を攻撃できないよ。
一体どうすれば…」
。
八方ふさがりの今の状況に…シャルムにしては、珍しく弱音を吐いていると…そこに
……
「じゃじゃじゃーん!」
。
自分登場のテーマを、口ずさむポチが現れた…
。
そして胸の部分が砕かれた鎧を着たポチは、
ここに登場する前に…シャルムの困った顔を見ていたので
…
「仲間のピンチにテーマに合わせて登場するなんて…なんて俺…クオリティ」
。
ゴーレムから距離をとりながら…どこかの3流男のように自分に酔っていると
…
今、ポチが自画自賛をしているその登場テーマに…シャルムは
、
「さすがだ…さすがだよ。ポチ!
自分登場のテーマなんてものを、躊躇いもなく使いこなせるなんて!そこに痺れるう!あこがれるううぅー!」
…
思わず手に汗を握りながら叫んでいた!
。
そしてまるで魂の叫びのように…意識の最も深い場所から放たれたシャルムの雄叫びは、
遥かな勇気となって、ポチの頭の中に響き渡り
…
ポチ
(シャルムが…あのシャルムが…俺に憧れている…
これは…なんという俺のターン…)
。
臆病なポチの胸の奥にかすかな灯火を与えてくれた…
。
だが本番は、これからで…ゴーレムから距離をとっていたポチは、
シャルムが右奥に残された1本の柱を攻撃する時間を稼ぐために…
5メートル近くあったゴーレムとの間合いを少しずつ詰めてゆき…
その距離が2メートル近くになった時…
ポチの顔を狙ってゴーレムの右拳が、ビュッ…と放たれる!
そしてその一歩前に踏み出した右足と共に放たれたゴーレムの右の拳に…ポチは、
(キター!)
…と反応して…上半身をおもいっきり右に傾ける事で、かわそうとするが
…
次の瞬間!?
放たれたゴーレムの右拳は、途中で、ひっこめられて…変わりに
…
シャリム
「!?違います!ポチさん!左からの攻撃です!」
。
血の円の中から…立ち上がったシャリムが、叫ぶ通り…
クルンと、背中ごしに回転しながら放つゴーレムの裏拳が…ポチの左側から襲ってきたので、
ポチは、右側に傾けていた上半身を無理やり起こしてから…横顔を守るために構えた左腕で、ガシィッ!と、
ゴーレムが左足と共に…背中ごしから踏み込んだ左の裏拳を防ぐが
…
「うおっ!」
、
いくら弱ったとはいえ…2メートルクラスのストーンゴーレムの裏拳なので…
思わず足が2、3歩、右側の方によろけてしまう…
。
―――――――――――――――
だが、そのあいだに…
サーチの魔法を使ったシャリムから、テレパシーのようなもので…右奥にある柱の情報を伝えられていた…シャルムは、
今、自分から2メートル以内の場所にある…その柱に向けて、右手を突き出し…
その右手の手の平の前で、エネルギーを集めて…そこから
…
「ルァイトボオゥッ!」
!
20センチくらいの、光弾を発射して!柱の一部を破壊したので…
そこから上の柱の部分は、ドズゥン!…と、床の上に落下して…すべての柱の機能が停止すると
…
その光景に、気をとられていたポチが
、
(よし!これでゴーレムに、魔法攻撃が通じるようになるな。)
あとは、ゴーレムだけだ…と、ゴーレムもどきがいた場所に視線を戻す
。
しかし視線を戻すと…そこにゴーレムの姿はなく
…
シャルム
「左だ!ポチ!!」
、
シャルムの叫ぶ声に反応して、左側に顔を向けると
…
!?
そこには、空中で逆さまになっているゴーレムの姿が、ポチの目に映っていたので、
(上か!?)
…と、ポチが左側に顔を向けたまま…少し上の方へ視点を移すと
…
逆さの体勢で宙に浮かびながら…左足を曲げた反動で…ポチの頭の方に振り下ろされたゴーレムの右足が…今にもポチをとらえようとしていたので
…
(オーバーヘッドキックだとおおぉ!)
。
ポチは、どちらかの方の腕でガードしようと考えるが…このままでは、間に合いそうにない
…
ポチ
(俺のターン…終わった…。)
…
はたして、すでに短い人生だったと嘆く…ポチの運命は
・・・・・・?
《そして!戦いは、クライマックスへ…》