第8話《大事な事なので2回微笑みました》
食事中・・・
シャルムとシャリムのスプーンの運び方が…どこか、ぎこちないと感じたポチは、
「お前達…ひょっとして、スプーンの使い方に慣れてないのか?」
…
それともカレーに食べ慣れないだけか…と、
子供達に話しかけてくるので…
ポチの向かいの席に座るシャリムが、
「そうですね…。
わたし達にとって、こういう食事は…
体重を調整するために、すぎないものなんです」
。
そう言って、複雑な表情を浮かべるので…
それを聞いたポチが
、
「どういう事だ?」
…と、その事について尋ねてみると
…
シャリム
「わたしとシャルムの普段の食事は、イドゥンの実だけなんです。
もちろん水も、それなりに飲む必要があるんですけど…」
。
イドゥンの実については、ポチも聞いた事がある
・・・・・・
イドゥンの木の枝に生る…青リンゴのような形の実の事で…
その味も、バニラを薄めたような味で…非常に美味である…。
そして、この食べ物には、少しだけだが…食べると、魔力を高める効果もあった…
。
ポチ
「しかし…それでは、栄養も、偏るだろう…」
。
そんなポチの問いかけに、シャリムは
、
「イドゥンの実には、わずかだけど、魔力が含まれているので…
わたし達は、イドゥンの実に含まれている…その魔力のエネルギーを利用して…体内でビタミンやカルシウムを作り出しているんです。」
…そう説明すると、ポチも…
「なるほどな…」
…と、シャリムの言う事を理解する…
。
どうやら…二人の子供達は、イドゥンの実に含まれている…魔法の力を源にして…
自分達の身体を構成するために必要なものを…
自分自身で作り出せるらしい…
。
だからポチも…
(まっ…これまでのこの子達の行動からでも、
何らかの特殊な環境にいた事が分かるからな…)
。
そう思って…たいして驚かなかったが
…
ポチ
(だが、そうなると…)
。
「じゃあ、昨日の晩は、
ほとんど、俺の携帯食を作るために…」
。
これでは、ただの足手まといではないか…と、
心配するポチに…シャリムは
、
「少し違います。」
ニコッ…と、一瞬、子猫のような笑顔を浮かべてから…
元の表情に戻ると…ポチに、
「実は、昨日は、
水不足に困らないように…まわりの空気を、魔法の力で水に変化させる…
魔法の水筒も作っていたんです。」
…
きのう何をやっていたのか、説明して…
その話を聞いたポチが
、
「りょ…料理のほかに…
そんなものまで、作っていたのか!」
。
犬みたいな口を、あんぐり開けて…驚いていると
…
シャリムは、そうですよ…と、また子猫のような笑みを浮かべるので…
ポチは、その笑顔を見て、もはや…あきれるしかなかった…
。
・・・・・・
その後…
そんな、話のやりとりを続けていくうちに…シャリムは、
ポチもシャルムも、食事を終えた事を確認し…
。
シャリム
「みなさん。食べ終わりましたね…」
。
食事を運びますね…と食後の、あとかたづけを始めたので…
…その様子を見ていたシャルムは、
寝室のところで、鎧を着ているポチと
…
シャルム
「そろそろ出かけるよ。
あっ!衛兵から取った槍は、ここに置いてって…」
。
ポチ
「なんでだ?」
、
シャルム
「ここを出るんだから…
ポチには、いろいろ道具を持ってもらわなきゃならないからね…」
。
そんなやり取りをしたあとに…
シャルムは、部屋の端っこの方から…
シャルムの身長の半分は、ありそうな…大きなリュックを持って来て…
それをポチの近くの場所に置くので…ポチは
、
「これに荷物を入れれば、いいんだな。」
…
シャルムに確認して…それに対してシャルムが、
「うん。」
…と返事したので
、
ポチは、棚の方に置いてあった…2つの水晶球を持って来て…
その2つの水晶球と一緒に入れるものを…リュックの中に詰め込むと
・・・・・・
その詰め込み作業を続けていた…ポチを、見ていたシャルムも
…
「あとは、あれだけか…
よし!!シャリムが片付け終わったら…出かける準備をしよう!」
…と、言うので…
そんなシャルムの様子を不思議に思ったのか…
ポチは、
(これから出かけるのに…後片付けをする必要があるのか?)
一瞬、そう思ったが…
(まっ…
やってる事が人として正しいしな…)
。
たぶん、そういう性格なのだろう…と、優しい目で、シャルムを見る
。
そして、すべての荷物を…リュックの中に詰め込んだポチは、
…そのリュックを背負って、
「うんしょ…っと!じゃあ行くか!」
。
そう吠えると…そのあと
…
(やっぱり…無茶だと思うんだよな…。
パンテオンから、脱出するなんて…でも…)
。
こいつらとなら…と、
自分の胸の奥に、かすかな希望が生まれている事に気づくのだった
・・・・・・
。
《第9話へ続く…》




