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なぜ俺が闇の魔法少女?  作者: めーる
第1章 仲間探し編
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1章 第8話 『来客者』

人目の少ない所で着地をすると、俺は空中でプカプカと浮いているパルの姿を見て、他人からするととても奇妙な光景で驚いてしまうだろうと思い、幼女がぬいぐるみを抱くように両手で優しく抱きしめた。


「絶対に家族とかの前で声を出すなよ」


パルにそれだけ言うと、俺は家にまでの道を少し早歩きで駆け抜ける。

家に着くころには、すでに夜が明けていた。


家族は俺のことを心配して警察に捜索願いを出していたらしく、近所中に数人の警官がうろついてて、とても大ごとな状況になっているのが視界に広がった。 俺は警官達に迷惑をかけたことについて謝罪をし、玄関から自宅に入ると、世話焼きの妹が姿を見るなり、すごい勢いで飛びついてきた。


「お兄ちゃん! どこに行ってたのよ! とても心配したんだよ!!」



俺の体がよろけ、服が千夏の涙を吸収して濡れる。


(というか、一晩いなくなっただけで何故こんな状況に……俺は過保護だったのか?)


そう思いながら、俺は密着して離れようとしない千夏を身体から引き離しこう言った。


「なぁ、千夏……何で一晩姿を消しただけでこんな大ごとになっているんだ?」


「そりゃ、お兄ちゃんの部屋にコスプレをした知らない女の人が居て、お兄ちゃんが居なかったらこうなるよ!」


当たり前でしょ! という表情で、俺の顔を背伸びをしてグイッと見上げる。

そして共働きの両親が俺の姿を見るなり、家の奥から喜んで走って此方まで来た。 今日は休日の土曜日で仕事が休みなので、朝の七時半という時間なのに家に居るらしい。


「幹雄! ケガはないかァアアアアア!?!?!?!?」


心配して叫ぶ父に,俺は心中ふざけて人差し指にできた切り傷を見せる。


「コレ、指切れた……すごい痛い……」


その時だ。


『ピンポーン!』


家にインターホンの呼鈴が響き渡る。

すると何かを思い出したように千夏が口を開く。


「あ、忘れた!! 今日から明日までの土日、学校の友達が(うち)に泊まりに来るんだった!!!」


「おい忘れるなよ」


俺は苦笑いしながら、ツッコミを入れる。

その言葉に反応して、千夏はテヘッと可愛らしく舌を出すと、駆け足で俺のことを横切り玄関のドアを全開に開けた。

それと同時に泊まりに来た友達の姿が一人、家族みんなの視界に映る。

と、


「初めまして、千夏の友達の “中村 時雨” です……土日の二日間、この家でお世話になります」


セミショートの黒髪で、色白で穏やかな顔立ちの美少女が、玄関の前で丁寧にお辞儀をした。


両親が挨拶を返す中、俺は少々焦りながら抱いていたパルを急いで背中(うしろ)に隠す。


体型、髪の色や髪型、身長は違ったが、昨晩の光の魔法少女の名前と同名だったからだ。


もしも……この少女が光の魔法少女だとしたら、パルの姿を見られた時は大変なことになる危険性がある。


「時雨、そんなところに立ち尽くしてないで中に入りなよぉ」


「あ、うん……それじゃあ、改めましてお邪魔します……」


「うん!」


時雨は緊張した趣で家の中に入ると、こんなことを呟いた。


「あ、千夏の匂いがする……」


「そうかなぁ?」


千夏は着ている服の匂いと、周りの空気の匂いをクンクンと嗅いで比較したが、家の匂いの方があまり感じ取れず、首を傾げる。


と、


そんな妹が時雨と楽しそうに会話をしている姿を見てやっと思い出した。


昨日、光の魔法少女が名を名乗った時に……何故 “中村 時雨” と聞いて何処かで聞いたことがあると思ったのか……。

妹の仲の良い友達に、同名の人物がいたからだ……。


俺は時雨の姿をじっとガン見した。

すると一瞬空間に、目を枯らさないと見えない程ちいさな渦が浮き上がった。


「あ、今は出て着たら駄目……」


時雨が小さくそう呟くと渦は静かに消えていった。


それを見た俺は確信した。

我が妹、千夏と仲が良い友達の “中村 時雨” が、昨晩の光の魔法少女だと……。


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