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なぜ俺が闇の魔法少女?  作者: めーる
第1章 仲間探し編
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1章 第3話 『兎のぬいぐるみ ②』

「な、なんか今外に居たよな……?  でも、此処は二階だぞ……」


 俺はそう言ってまた窓の前まで戻り、空に広がる星々へ指をさす。


「未知の宇宙生命体が円盤を飛ばせるほどのスペースは無いな……。うん、星で埋め尽くされているな……その前に例のぬいぐるみは宇宙人なのか?  てか、そもそもそんな者居るわけないな」


 鼻で笑いながら、手をひらひらとさせてその存在を否定した。


 ーーーその瞬間


 そいつは突如、前触れもなく、俺の部屋のドアをすり抜け現れた。


 そいつの見た目は、全長三十センチぐらいのウサギのぬいぐるみだ。


(おい、おい……窓からじゃなくて戸から出現とか反則だろ……!!)


 俺が現状に驚き硬直していると、そいつはこう言ってきた。


「ねぇ、僕を使い魔にしてよ!」


 俺は何も言えずにまだ硬直している。


 身体の震えと手汗が止まらない……。


 そして、そいつは俺にどんどん近づいてくる。


 焦った俺は尻餅をつきながら言う。


「良いよ!!  使い魔にしてやる!!!  だから、命だけは……!!!!」


 そいつは今の言葉を聞いて急停止したかと思った途端に多量の紫色の光を全身から放った。


 瞬間、俺はその多量の光に包まれた……。


「あぁぁああああああっ?!」


 途端の激しい熱と痛みで、床に寝転び、もがき苦しむ俺の上に、あの兎の声が降ってきた。


(さぁ少年。 その身に秘めている力を解放しよう。 ただし、この光で身が朽ちる前にね!  できなければ、君は此処でくたばる以外の選択肢は無いよ!!)


「なんだよ、身に秘める力って!  俺が死ぬって嘘だろ?!」


 いきなりの通告に七転八倒しながら文句を叫ぶ。


 そうしながらも、幹雄はその身に秘める力とやらを解放しようと全身を力ませていた。

 すると、眼前にドス黒い闇に満ちた光の線が浮かび上がり、ひとつの記号を空中に描き出した。


 描かれたのは、赤ちゃんの顔ひとつ程の大きさはある、『三日月』 の形。

 少なくとも幹雄の目にはそのように見えた。


(お、この刻印は……やっぱり、この少年がチカラを受け継いでいたんだ)


 またも兎の声。 これをつむぐのはぬいぐるみの口元だった。


 同時に『三日月』の形をした線は俺の手のひらサイズまで収縮しゆっくりと胸元の上に降下してきた。

 その後、光の線は服をすり抜けて右胸に刺青の様なアザとして張り付く。


「少年!  第一ステップクリアだね!!  じゃあ次は変身してみようか!!!」


 そう言って、兎は無責任に煽る。


「おい、チョット待ってくれ!  色々と理解が出来ない!  説明してくれ」


「そうだね!  まだ変身の仕方を説明していなかったね」


 まったく話が噛み合っていない……。

 流石に此処まで来ると清々しいな。

 そうして、俺は変身の方法を懸命に聞くことにした。


「まずは胸元の刻印に意識を集中させて」


 俺は目を閉じ、胸元にチカラを入れた。


「そうじゃないよ!  力を抜いて」


 言う通りに力を入れず、胸元に意識を集中させた。

すると、『三日月』の形をしたあざがドス黒い光を放ち始めた。


「いいね、いいね!  やっぱり君は才能があったんだ!!」


「え、俺才能あるの!?」


  “才能” という言葉を “天才”と置き換えて自己満足していると、次の注文がきた。


「じゃあ、次はその刻印の光を身体に流れる血のように全身に行き渡らせて! コレが出来たら変身完了だね!!」


「よし、やってやる!」


 調子の良い返事をして注文通りにやってみる。

 すると、身体の神経全てが消滅してしまったかのように五感が消え、ふんわりと空中に漂う風船みたいな感覚だけを感じた……と思いきや、急に巨人か何かに押しつぶされているかのような感覚に変化した。


「ーーーーーーーーーーーークッ!?  か、身体が重い……く、苦しい、息が出来ない……」


 肺のあたりに違和感を感じる……まるで誰かに握られているかのような……。

 俺が水中で溺れたかのようにもがき苦しんでいる中、兎は何かを言っている。


「……か……が、ぼう……し……ている……」


 耳が霞んでよく聞き取れない。


 一生懸命聞き取ろうとするが、やっぱり耳が

霞んで聞こえない……。


「チカラが暴走している」


(やっと、聞き取れた……)


 そして、幹雄は口から泡を吹いて気絶した。




 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲




 ……

 …………

 ………………

 ……………………

 …………………………


「……きて……おきて……起きて!!」


 聞き覚えのある兎の声が聞こえる。

 ……コレが聞こえるっていうことはまだ死んでいないということか。


 俺は霞む目を開けて、周りを見渡す。

 まず、最初に目に入ったのは、見慣れた部屋の天井と俺の腹の真上でプカプカと漂う兎……ゆっくりと身体を起こし、次に視界に入ったのは、窓に反射する俺の姿?


「って、誰!?  この女性!?!?!?」


 俺は小走りで六畳一間の部屋の片隅に置いてある鏡の前まで行き、自分の姿を三百六十度しっかりと再度何回も確認した。


 手も使って、ペタペタと自分の身体をくまなく身体検査する。


 硬くて勇ましかった胸は、柔らかく優しい胸になり、下半身にぶら下がっていたものが無くなっている。

 しかも、服装が寝巻きから、ほぼ紫色のドレスのような形態の鎧に変わっていた。


「えぇえええええええ!?  なんじゃこりゃやあああああああ!?!?!?!?!?」


 再度、鏡を確認する。


「短く黒かった髪の毛は、淡い水色に変わり腰まで長く伸びて、スタイルは日本人女性の平均の少し上といったところだろうか?  背が少し縮んだのが若干違和感あるな……それに自分の身体なのに、なんか興奮してしまう……というか、この姿でどうやって学校に行けば良いのよ!!  その前に家族にーーー」


『ガッシャッ』


 俺が鏡の前で必死に悩んでいると俺の部屋の扉が開く音がした。


「おにぃちゃんー、うるさくて眠れないよぉ……ってぇ、貴方どちら様!?!?  え、おにぃちゃんの部屋に痴女!?  コレは大変だ!?!?  パパァアアア!!  ママァアアア!!  おにぃちゃんの部屋にぃいいいいいい!!!!!」


 そう叫びながら、俺の妹 “千夏” は俺の部屋の扉を開けるなりすぐに部屋を飛び出していった。



 ………………。



「ってぇ、オォォォオオオオイ!!!!  どうするんだよこの状況!!!」


 俺は能天気にプカプカと浮く兎をガッシリと掴むと、ブンブンと振り回し始めた。


「おいおい、少年よ……いったん落ち着こう……変身を解くんだよ!  変身を解く方法は変身する時の逆だよ!」


「そ、そうなのか?!  よし、戻るか……」


 変身を解こうとした途端、千夏が一階のリビングから両親を引き連れて来た。


「だ、誰なんだ!  お前は!?  幹雄は、俺の息子はどうしたんだ!?  拉致でもしたのか、何が目的なんだ?!?!」


「お、親父……」


 知っている俺の姿が見えないので心配して叫んでいる親父にそう呟くと、背後に見えた窓の鍵を開けて、外へと飛び出した。


「おい、兎!  お前も来い!!」


 右手を伸ばし、兎の身体をしっかり掴むと、窓から飛び降りた。



 ーーーーかくして、俺の平穏な日常は崩れ去った。

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