1章 第29話 『新たな家族』
「ねぇ、起きて……」
「……ぅうぅーんっ」
俺は自部屋のベッド上にて目を覚ましたというか、嫌々起こされた。
「千夏かぁ……?」
眠たい目を擦りながら呟いて、辺りを見回すが誰もいない。
一体誰が俺を起こしたんだ??
視界をベッド横の目覚まし時計に移すと、時刻は早朝四時半だと確認できる。
さすがに、千夏はこんなバカみたいな時刻に俺のことを起こさないよな……?
こんな時間とあって空間は静寂で包まれており、聴こえてくる音は外のカラスが鳴く微かな少音。
それよりも昨晩怪我した所為か、右脚に違和感を感じる。
――グイグイ……
「え?」
布団内から小さく色白な手がスゥーっと伸びてきて、俺の半袖先をグイグイと引っ張ってきた。
おばけ!?
魔法少女がいるんだ。 幽霊が存在していても不思議ではない。
よし……
俺は意を決して布団を身体上からバサっと引っ張り離す。
――えっ!?
目を疑った。
「か、楓!?」
パジャマ姿の楓が右太腿に抱きつきヨダレを垂らし寝そべっていたのだ。
目がパチパチと開閉していることから起きていると確認できる。
右脚の違和感は怪我ではなく、楓が抱きついていたからか……。
「ちょっ楓、お前何してるんだよっ!?」
「え? なにって、甘えてるだけだけど……??」
楓は俺の質問へ対し、首を傾げ当たり前のように答えた。
「いや、なんで当たり前のようにそんなことを言うんだよ!?」
苦笑しながら言うと、
「だって昨晩……」
昨晩??
あ、そうだった……。
楓から返ってきた一言で、寝ぼけていた頭が回転し始める。
――昨晩のこと。
俺は楓を連れて夜中の十一時半ごろに自宅へと帰宅した。
家族みんな帰りが遅い事にとても心配していたのだろう、玄関前で俺の帰りを待ち出迎えていて千夏が真っ先に楓のことに気付く。
時刻は日にちを跨いでいなかったので捜索願を出されることはなかった。
俺はすぐさま楓の家事情を細かに説明し、居候させることに成功。
父さんと母さんが楓のことを可哀想に思ったのか、俺を含め家族みんなに甘えなさいと言い放つ。
結果、だから現在俺に甘えているのだろう。
って、
「そんな甘えたがる性格じゃなかったよなっ!? それにお前の部屋は別にあるだろう!!」
「だって、甘えれって言われたし……」
楓がワザっとらしく更に力を込めて俺の太腿に抱き、眉をひそめる。
「ひええ」
いきなり甘えてくるとか恐怖心しかなく、思わず俺は顔をしかめてしまう。
というか、痛い、痛い、右脚を握る両腕の握力半端ない。
「おい……俺の脚から手を離せっ!!」
脚に纏わりつく者を剥がした後に、俺は二度寝をしようと思ったが……楓の所為で目がスッカリと冴えてしまってしまった。
寝たいという気持ちが心中に残る中、眠気が何処かへと消えてしまっていたのだ。
……はぁ。
この部屋に居ても特にやることは無い、なにより時間をとても無駄にしてしまう気がする。
なので、俺はベッドの上で傷痛む右脚に再びしがみつこうとしている楓を連れて、リビングがある一階へと降りることにしようと思う。
「おい楓、この部屋に居ても特にやることがないから一階に降りる。 お前一人ここに残しておけないから一緒に行くぞ」
そう伝えると、ベッドから床へと足裏を移動させた。
楓はその行動を視界に入れ、
「ヤダよ、なんでよ、布団から出ると寒いのよ!」
さっきまで俺と共同で使っていた布団に全身を隠し、駄々をこねてベッドをギシギシと揺らし始めた。
そんな様子を目にしても俺は躊躇なく言う。
「駄目だ。 お前一人ここに残しておくと何をするか分かったもんじゃない!」
昨日と今日で楓への信頼度数は大きく変化していた。 昨日までは何処となく頼れる奴だったが、現在は何をするか予想がつかない甘えん坊だ。 まぁ、何かをやらかすという予想はなんとなく付くが……。
とにかく、
「お前をこの部屋に一人にしてはいけないと俺のセンサーが働いているんだっ!」
俺は楓が包まる布団を勢い良く引き剥がす。
すると、
「やめてぇー!!」
涙ぐんだ顔で俺の右脚に飛びついて来た。
瞬間に傷口から全身に激痛が走る。
「いってぇぇえええーっ!!!!」
俺はその場で脚から崩れ落ちた。
だが、楓が布団から身を出したので良しとしよう。




