1章 第13話 『厨ニ病少女の実力① 』
「いや、こんな人通りの多い街中で勝負する訳にはいかないだろ……こんな所で変身したらニュースになるわッ! というか、まだ俺の口から、自分は魔法少女なんて言ってないし!!!」
俺は焦りながら、そしてこの状況をどうすれば良いのか困惑しながら、星零に向かって叫んだ。
すると、
星零が肩にしがみつく様に乗っているパンダの様な使い魔の頭を左手の人差し指で優しく撫でながら右手を勢い良く俺に向けて……
「ニャハハハハハハッ!! 何を言っても我に言い訳は無駄デェス……大人しく変身するが良いデェス!!」
(なんだよ、こいつ……予想以上にしつこいのだけれど……)
現状況を切り抜けるのは、もう出来ないと感じた俺は提案した。
「なぁ星零、こんな所で戦ったら周りの通行人の迷惑になるから、空の上でやらないか?」
それを聞いた星零は、
「しかないデェスねぇ〜良いデェスよ!」
と返事をするなり……人目につく住宅街で変身をした後に羽を広げて飛び出そうとしていたので、俺は慌てて完全に星零が変身を終える前にその行動を中断させて、こう言う。
「お前、バカじゃねぇの!?」
それに続いて楓が星零に「バァカ〜、バァカ〜、バァカ〜……」と真顔のまま小声で呟く。
すると、星零の目がだんだん涙目になり……大声をあげて泣いてしまった。
辺り一帯の通行人が、俺たちの方にチラチラと視線を向ける……買い物帰りのおばさん達に至っては手で口を隠しながら何やら俺のことを悪く言っている。
予想外の現状に、俺と楓の二人の一帯に冷めた空気が漂う。
そして、一方的におばさん達の会話のネタにされる俺の額には冷たい汗が浮かんでいた。
(このままじゃ、まずい……)
そう感じ取った俺は星零の手を握りしめて、スタスタと早歩きで元々の目的地の裏山へと向かった。
楓はそんな二人の後を付いていく。
ーー数分すると、いつの間にか星零は泣き止んでいた……逆に表情がニヤついている。
なぜニヤついているのかを不思議に思った俺は、星零に問う。
「おい、なんでそんなにニヤついているんだよ……?」
「え〜? 内緒デェス!!」
そう言われて、「そうか……」と返事を返そうと思ったが、無性に理由が気になってしょうがなかった。
だから、しつこく何度も聞き返しまくる。
すると、星零はクスクスと笑いながら照れ臭そうに、理由を教えてくれた。
「憶えていないデェスか? 昔もこんな風に幹雄に……じゃなくて我がライバルに、我手を引かれて一緒に歩いたこと……」
「………………ごめん、憶えてない」
俺は幼い頃の自分と星零との思い出を振り返ったのちそう答えると、星零は一瞬だけ俯いた……その後、顔を上げると俺にキラキラとした笑顔を見せてどこか悲しみを隠すようにこう言った。
「そうデェスか! 憶えていないのならしょうがないデェスね!!」
ーーそう、しょうがないのだ……記憶にないのだから……なんと言っても星零と俺は今日会うまで、ずっと会っていなかったからな。
正直に言えば今日会う日まで星零の存在すら忘れていた……。
そんなこんな会話をして歩いていると、裏山のすぐ近くまで着いていた。
星零は山を見るなり、「ニャハハッハハハッ!!!!! 懐かしいデェ〜ス!!」と叫びながら、両手を広げて飛行機の真似をしながら山の急斜面を勢い良く駆け登って行った。




