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なぜ俺が闇の魔法少女?  作者: めーる
第1章 仲間探し編
14/31

番外編 『参拝』

あぁ寒い……。

何故だろう……まだ物語的には初夏の筈なのに、いつの間にか雪が積もり年が明けていた。

ということは、神のデスゲームの残り期間は七ヶ月と七日になったということだ……。


(まぁ、今日くらいはそんなこと忘れるか……)


俺、幹雄はため息を軽くつくと、寝癖で鳥の巣のようになっている髪の毛を手で搔きむしってより一層ひどくボサボサにしながら窓辺から寝床へと戻り、毛布に身を隠した。


ーーその時だった。


『ガチャン!!』


部屋の扉がものすごい音を発して開く。 正確には誰かの意思により、人為的行為で開かれたのだが……。

まぁ、その『誰か』はすぐに検討がついた。

軽やかに歩く足音、キーが高い鼻歌、乙女チックな匂い……これだけ証拠的なものが揃えば嫌でも誰が俺の部屋に入ってきたかが検討がつく……。


「ねぇ、お兄ちゃん!! 一緒に神社に参拝行くって約束したじゃん!!!」


その誰かとは、妹の千夏だ。

耳元で叫び、俺の眠りを全力で邪魔をする妹だ。


「おぉ〜オオイ!! 起きろォォオオオ!!!」


千夏は、幹雄の身体の上に跨って無理矢理でも布団を剥がそうする。

この行動は、俺に世話を焼いているのか? それとも甘えているのだろうか?? まぁ、どっちでも良いが……。それよりも今俺は、妹が言う『約束』という言葉が気になった。 参拝に行くなんて約束をした記憶が全く無かったからだ。

俺は自分から暖かい布団から出て、目の前で暴れる人の暴走を止めっーーーーーオフッ!?

妹が来てからというもの、布団の中に身を隠し外界に視界を向けてなかったから分からなかったが……何だこれ、綺麗、いや美しい……これはもう一種の芸術だと呼んでもいいんじゃないか??

鶴の模様が刺繍で施された赤い着物を身に纏い、薄紅色に染められた魅惑の唇…… ーーまさにコレが、ジャパンビューティ〜!!ーー 自分の妹の着物姿に一瞬ときめきを抱いてしまった……そんな自分が情けない。


「なぁにぃ、お兄ちゃん?」


俺にガン見されていることに気づいた妹が、不思議そうに首をかしげる。


「あ、いや……着物似合ってるなって……」


俺が頰を少し赤らめながらそう呟いて褒めると、千夏はでれっと顔をニヤつかせながら手の平を縦に振り、喜びを誤魔化し隠そうとしだした。


「なぁにぃ〜、お兄ちゃん! 今年が始まっていきなりお世辞とかありえないなぁ〜」


(何だよこいつ……世話焼き妹属性だけではなく、弱ツンデレ属性も兼ね備えていたのかよ……)


『ピーンポーン!!』


そんなこんなしているとインターホンの呼鈴が聞こえた。


「誰だよ、こんな朝っぱらに……」


幹雄はふてぶてしく頰を膨らませながら文句を吐くと、ベッドの上から降りて玄関へと向かった。

それに続くように千夏も付いてくる。 その一列に並んで歩く姿は、まるでカルガモの親子のようだ。


玄関の前まで着いた幹雄は、扉についている覗き穴で外に誰が居るのかを確認した。


(げ、マジかよ?!)


外に見えたのは “中村 時雨” だった……。


薄紫色の着物に手には小さな手提げバッグを持っている。

一瞬扉を開くことにためらったが、ここまで来てもらってお断りは可哀想だと思い、ユックリと扉を開いた。


「あのぉ〜〜、朝っぱらからなんですかぁ?」


まぁ、年明けに着物を着付けて家に来る理由なんか明確だが、一応此処に来た理由を尋ねた。


「あ、お兄さん! 明けましておめでとうございます!! 千夏と参拝に行く約束をしていまして……」


「そうか、そうか!!」


俺は年明けの挨拶をそっちのけで、答えを納得するように頷いた時だった。

時雨は頰を赤らめて、こんな提案をして来た。


「あのぉ……お兄さんも一緒に、どうですか??」


「え?」


俺が言葉に詰まる中、妹が代わりに喋るように割り込んで来て、こう言った。


「あ、時雨、私去年お兄ちゃんとも参拝行く約束してたから三人で行こう!!」


「うん!」


時雨は顔中いっぱいに華やかな笑顔を広げて喜びながら返事をした。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「やっぱり、大勢の人で混み合ってるなぁ〜」


徒歩十分という、家の近くにある神社に着いた俺は、目の前に広がる光景を見て嫌気がさした。 あまりにも大量の人が鳥居から賽銭箱までの道に集中して大行列をつくってしまっているからだ。 別に人混みが苦手なわけではないのだが、バーゲンセールと年明けの参拝は例外だ。

行列の最後尾に並ぶと、毎年見ても変わらない景色にため息を吐く。 一月の冷えた大気に霧のような白い息が溶けていく。

と、


「よお、幹雄。 あけおめぇ〜!!」


背後から陽気な声で挨拶されたので、振り返ると定春がいた。 目的は多分俺たちと同じ参拝だろう。


「よぉ、定春。 あけおめ……てか、お前一人か?」


挨拶を返すついでにそう聞いた。


「そうなんだよぉ〜。 俺も一緒に参拝して良いか?」


「別に良いけど……」


俺はそう言いながら千夏達の方に顔を向ける。

すると、時雨と目があった。


「あ、べ、別に良いと思いますよ! 大勢の方が楽しいですしィ!!」


時雨は何故か、リンゴのように顔を真っ赤にし慌てていた。

定春はその様子を見て少しからかった口調でこう言う。


「さてはお前、幹雄のことがウブっガ!?!?」


「定春さん? 空気読みましょうね??」


千夏はニッコリと笑みを浮かべその先を話させまいと両手で定春の口を押さえつけ、その先を話すのを止めに入る。


「ヴブッ!? わかったから口から手を離せ!! 年明け当日に窒息で死んじまうよ!!!」


「あ、ごめんつい……」


千夏から解放されホッと安堵の吐息をついたのち、何処かふてぶてしい眼差しで俺の方を見てこう言った。


「モンスターシスター……」


妹の悪口を言われ少々カチンときた俺は、千夏と同じように定春に絡みつく。


「嘘だって! ごめん、マジごめん!!」


チャラ男が腕の隙間から顔を出して許しを求める。


そんなこんなしていると、いつの間にか賽銭箱の前の最前線にまで着いていた。


「お、意外にここまで来るの早かったな」


俺は独り言を呟く。 その後にズボンのポケットから財布を取り出し、更にその財布から十円玉を取り出した。 すると、俺が手にしている十円玉を見て千夏が何かありえないだろっといった表情で、文句をつけてきた。


「お兄ちゃん! なんで十円なの!?」


「いや、別に良いだろ……」


「良くないよ! ここは『御縁』をかけて五円玉を賽銭するべきだよ!」


「ん、そうか……」


そうして幹雄は妹のくだらない理由のこじつけで十円玉を財布にしまい、その代わり五円玉を取り出した。

それを見た千夏は顔中に満面の笑みを浮かべる。


「それじゃ、願い事決めたか?」


急に定春がその場を仕切り始めた。 その行動を合図がわりに皆んなが賽銭箱へと小銭を投入し、目を閉じると手を合わせるなどをして祈りを開始する。



(魔法少女辞めれますように……)ーー幹雄



(今年も皆んなが幸せに……)ーー千夏



(幹雄さん、幹雄さん、幹雄さん、幹雄さん、幹雄さん、幹雄さん、幹雄さん……)ーー時雨



(彼女出来て、お金持ちになって、頭良くなって、えーと、あとは……)ーー定春



沈黙がしばらく続く……。



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



今年も無事に参拝が終了して、バイトがあるということで定春がメンバーから抜けた。


そして三人は仲良く会話をしながら、ユックリと家までの道のりを歩く。

会話の中で、千夏の口からこんな言葉がでてきた。


「明けましておめでとう!」


俺はそれ聞いて、まだ新年の挨拶をしていないことを思い出した。

だから、俺も言う。


「明けましておめでとう……」


千夏と時雨の二人は俺のその挨拶ににこやかな笑顔で元気よく応えてくれた。


「明けましておめでとうございます!!」










ーー改めまして、 『明けましておめでとうございます!!!!!』



「いや、誰だよ!!」


幹雄は天から地上まで届く謎の声に鋭いツッコミを入れた。

途端、

天から半径十メートルはあるだろう……雷の鉄槌がものすごい破壊音と共に俺を目掛けて落ちてきた。


「うわぁあああ!!!!!?」


理解する暇も無く、目の前が白くなり意識がとんだ。


……

…………

………………

……………………


俺は気がつくと、ベッドの上に横たわっていた。

開いている窓からは初夏の気持ちい微風が部屋へと注ぎ込んでいる。


「ーーなんだ、夢か……」

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