1章 第12話 『厨ニ少女、参上』
楓と出逢ってから十時間程闇の魔法少女探しをしたが、誰一人見つからなかった。
日が暗くなったので、俺は家へと帰宅する為に楓達と明日も捜索する約束をして一旦別れる。
ついでに言っておくが、別れる時にお互いの変身を解いて自分の本当の姿を見せ合った。
待ち合わせの時に本当の姿が分からなければすれ違いになってしまうと思ったからだ。
そして、
矢が刺さった足の怪我は、ダングロスの治癒魔法で綺麗すっかりと治っている。
……その後、俺は魔法少女時の飛行能力を使い、外から二階にある自室の窓を開いて家の中に入ると変身を解き、夕食を食べに一階へ降りようと扉のドアノブを掴んだ時だった。
『ーーガチャ』
ーー!?
部屋の外から、俺ではない誰かが扉を開いた。
目の前に揺らめくセミショートの黒髪をみて、直ぐに扉を開いたのは時雨だと認識した。
直ちに、俺は時雨へと尋ねる。
「急に部屋に入ってきて、どうしたんだ?」
「お兄さん……いえ、幹雄さん。 ご飯できましたよ、と……伝えに来ました」
「そ、そうか……」
まだ、闇の魔法少女だと気づかれていないことだけを確かめると、俺はドアノブを手につかんだ。
瞬間、
「あの、幹雄さん!!」
急に時雨が頰を赤ながら、俺の名前を叫んだ。
それに驚いた幹雄は急いで、時雨の方に首を向けると共に尋ねた。
「どうかしたか?」
「うっ、うううっ……」
帰って来たのは決して言葉とは言えないものだった。 この時、視線が合うと、やけに照れ臭そうに視線を逸らされたり、にっこり微笑みかけてきた。
「なんにも、用事が無いのなら俺は先に食事に行くからな」
そう言って、一階の食卓に向かおうと背を振り返った瞬間だった。
「ダメ!!」
その一言と共にいきなり時雨が背に飛び付いてきた。 バランスを崩した俺はその場に転び倒れる。
「いててっ……」
俺は床に強打し痛めた左肘を抑えながら、ゆっくりと上を見上げる。
其処には、
俺の身体に馬乗りになっている時雨が見える……その顔は林檎の様に真っ赤だ。
綺麗な顔立ちをしているが、妹の友達だと思うと、この状況にも一瞬のときめきを抱かない。
馬乗りになっている時雨の身体を退かすと、立ち上がり食事に向かった。
俺が部屋から退室して扉を閉めたと同時に部屋の空中に小さな渦が巻き、其処からヴィーナが出てきて、時雨に呟く……。
「あららぁ〜、告白失敗しちゃったわね……」
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ーー俺は朝早く起きると、パルを両手で抱きながら昨日楓と待ち合わせ場所に決めた近所の公園へと向かった。 公園で待ち合わせる理由はこうだ……お互いの家がその公園に近いから。 なんと、俺と楓の家は近所だったのだ。
ーー待ち合わせ場所に着いた時間は約束時間の7時ピッタリだった。 しかし、楓の姿がどこにも見えない。
ーー五分後。
淡い桃色の髪を後ろに縛って、ポニーテイルにしている女の子がゆっくりと歩きながら此方へと向かってきた。
ーー楓だ。
俺は自分の存在を知らせる為に大きく手を振る。
すると楓は俺のことに気付き、少しだけ早歩きになり、此方へと向かってきた。
数秒後……。
楓は俺の目の前まで来ると、こう呟く。
「……早過ぎるわよ」
「いや、お前が遅いんだよ!」
俺がそう叫ぶと、こう言われた。
「……五分後行動は当たり前よ」
「いや、普通其処は五分前行動な……」
俺は呆れてそう伝えたが、楓は聴く耳を全く持たなかった。
「まぁ、良いか……」
俺は溜息を吐きながら、ーー人通りが多い此処で空へと飛び立つと色々と面倒なことになりそうなのでーーとりあえず裏山へと、向うことにした。
しばらく歩いていると、道の曲がり角から其奴は現れた。
「ニャァアッハッハッハッーーッ!!! やっと見つけたデェス、我がライバルよデェス!!!!」
地面まで届く長さの紫色マフラーを首に巻き……胸元まで伸びるコズミックカラーのツインテール……少しツリ目の緑眼で、俺の顔を蹴魂笑いと共に睨んでくる女子が現れた。
俺は其奴の姿に覚えがある。
「何を黙っているデェス? 遂にこの私に恐れをなしたデェスかぁ?!」
この中二病的な喋り方と見た目、そしてこの甘い香りは、間違いない……。
「お前、小学生の時に六年間同じクラスだった “吉岡 星零” だよな??」
俺がそう言った途端、星零はいきなり叫びだした。
「な、何を言うデェス?! 私は……いや、我の名は “漆黒の悪魔” デェス!!!」
「……幹雄。 何こいつ?」
俺の背後を付いて来ていた楓がそう聞いてきたので、こう教えた。
「いや、俺の小学の時の友達だよ……」
「友達……?!」
星零が、俺の『友達』という言葉に反応した。
「我とお前の仲は、友達ではないデェス!! ライバルなのデェス!!!!!」
「いや、友達だろ! てか、お前高二にもなってまだヒーローごっことかしているのか?!」
「ヒーローごっこ? 何を甘っちょろい考えを……私は力を手に入れたんデェス!!」
星零はそう言い終わると首のマフラーを取り、叫んだ。
「ニャァアッハッハッハッハッハッ!!! 私は力を手に入れたんデェス!!!!!!」
マフラーを外した星零の首には、雪の紋章が刻まれていた。
「ニャッハッハッハッ!!! お前も選ばれし者なら、早く力をみせるデェスね!!」
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「お、お前……その首の紋章は……?!」
俺は訝しみつつ、ふと星零の首を見て、驚く。
雪の結晶の様な紋章ーー光の魔法少女か、闇の魔法少女かはまだ分からないが、星零は俺達に攻撃を仕掛けてきそうな様子だ……。
「そう、我は “漆黒の悪魔” ながら、天使の力も手に入れたんデェス!! 闇の力と光の力を掛け持つ我こそが最強なのデェス!!!」
「お前……その言い方だと、光の魔法少女なんだな?」
何故俺が、星零が光の魔法少女だと断言したかは次の理由だ。
俺は昔ーー小学生の頃ーー星零と家が隣だったこともあって毎日ヒーローごっこをしていた……その時、星零はいつも自分の事を “漆黒の悪魔” と名乗っていたからだ。
しかし、高二になった現在も自分の事を “漆黒の悪魔 ”と名乗っているとは流石に思わなかったがな……。
「ほう……魔法少女の存在を知っているのデェスか……。 やはり、幹雄も力を持つものなのデェスね!!?」
星零はそう言い切ると、俺の方を目掛けて勢いよく人差し指を伸ばしてきた。
が、
返事は返さなかった。
昔からの顔見知りなので星零の性格はよく知っている……取り敢えずそれらしいことを言っているだけで、本当は何も考えていないのだ。
多分俺のことを魔法少女だとは気づいていないだろう……。
だから、ここは『違う』の一言で俺が魔法少女だということを誤魔化せることが出来るかもしれない。
無駄な戦いで体力は消費したくないからな。
俺が魔法少女だということを否定しようと口を開いた瞬間だった。
「……なんで分かったの?」
楓が少し動揺しながら、そう言ってしまった。
それを聞いた星零は、ニヤリと顔中に笑顔を浮かべる。
「フフッ……やはり私……我と同じ様な力を持つ者デェシタか……」
そう呟き終わったとほぼ同時に自称 “悪魔” は、空に向かって叫び始めた。
「ニャァアッハッハッハッハッ!!!!! さあ、我の視界へと映ることを許可するデェス!! 我、使い魔 “ナガル” !!!!!!」
その大きな声が天に木霊すると共に空が一瞬、血液の様にドス黒い赤色に変わる……その後、白い雲の真ん中が綺麗に二つに裂け、大雲の裂け目から小さな生き物が神々しい光を纏いながら、ゆっくりと降りてきた。
その生き物の容姿は手のひらサイズのパンダだ……星零の使い魔なのだろう。
星零は、目の前まで降臨し空中で漂うパンダを肩に乗せると、動揺している俺達に向かって指をさす。
「その動揺っぷり……やはり闇の魔法少女デェシタか!! 私の目の前に闇の魔法少女がいる限り、光の魔法少女が悪を滅ぼすまでデェス! いざ、勝負デェ〜ス!!」




