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17:00 開園

その汚ならしいチケットには


「裏野ドリームランドへようこそ」と書いてある。

印刷ではなく、赤と黒のクレヨンを何度も塗り重ねて書かれており、下地の画用紙には幾つものシワが刻まれている。手作りにしても、禍々しい字体。出来ることなら、今すぐにでも捨て去りたい所だ。だが、私はそのチケットを手放すことができない。いや、正確に言うなれば、どうすることもできなかった。立ち尽くしていたのだ。


気がつけば、ここに立っていた。

おかしなことに、前後の記憶が全くない。


「裏野ドリームランド」


考えてみると、この名前もおかしい。

私が住んでいる市には「表野」という地名しかない筈だった。「裏野ドリームランド」などという場所も聞いたことはない。

開園時間は、更におかしなことになっている。

「17:00~思い出すまで」…思い出す?何を?私は確か……そう……確か私はダレダ?


そこで、私は自分が誰なのかわからないことに気付いた。あわてて身の回りを確認し、何か持っていないかを確かめる。ポケットに硬い感触、これはスマホだ。他には財布も家の鍵さえ出てこなかった。私はスマホだけを持って、出掛けたのか?。考えても無駄だった。自分の名前すら覚えていないのだから――


スマホをポケットから取り出す。

現在時刻16時55分、電波2本、電池は63%あり、Wi-Fiは検索中。

カメラやライトは正常に作動する。

アドレスに誰の登録もない。自分の連絡先には「オモイダスマデ」というアカウント名。LINEの友達すらいない。理不尽さが口を押し破る。


「誰なんだ。私は」


…今、理解できること。

裏野ドリームランドの開園まであと2分。

私は記憶を失っている。既製品のスマホと手作りのチケットを持っている。LINEの着信音が入り「ウラビット」という人物が友達になったこと。突如、ライトがついたこと。17時になったこと。アトラクションが軋むように動き始めたこと。どこか調子外れのBGM。状況が加速していること。記憶が全く追い付かないこと。息苦しい。気が狂いそうになって、自分が発狂していること。


そして、またLINEの着信


ウラビット「ジェットコースターに来ること」


そう。ここが「遊園地」だということ。

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