余命3ヶ月の花嫁
「一人、最高ッ!」
彼女は一人でヨーロッパを旅をするのが好き。
パリを歩き、イタリアで食べ、スペインで踊る。
バリバリのキャリアウーマン。
趣味も貯蓄も充実。
体を動かすことも好き。
2度目の挑戦で、フルマラソン4時間を切った。
そんな彼女が、余命3ヶ月の花嫁?
「バッカじゃないの?」
神妙に聞いていたが、我慢できなくなった。
「私は元気よッ」
彼女は二の腕をまくり、力こぶを出してみせる。
「それに結婚なんかしないわ」
彼女はきっぱりと言い切った。
「そんなことない。そんなこと・・・」
彼女はドキっとした。
夜一人でいると、涙が落ちることがある。
彼女は無意識に両手で、自分の肩を抱きしめていた。
再度の問いに、
「寂し・・・かも・・・」
と本音を吐いた。
それから、彼女はうつむいたまま話を聞き続けた。
時折、頷く。
その確信が彼女の心をえぐった。
20分後、彼女は席を立った。
部屋を出ると、スマホを出した。
『明日ならいいわ』
ラインの返事を返した。
同期の男性から食事に誘われていた。
彼女は少し笑顔になった。
「あなたは、このままの生活だとずっと独身です。
貯蓄が十分あるから、優雅な老後を過ごせるでしょう。
ただ、あなたの男性運は良くありません。
思い当たる節はありますね。
高齢で結婚し、財産を奪われると出ています。
最悪、殺されるかもしれません。
3ヶ月で」
と言われれば無理もない。
新宿一の占い師に。
しかし、彼女は占いなんて、と鼻で笑った。
でも、次々に自分の事を当てられた。
かつて悩んでいたこと、
別れた彼がストーカーっぽくなったこと、
仕事の悩み、
最近、天職と思われる仕事を得たことなど。
最後には信じることにしたのだ。
しかし、新宿一よく当たると噂の占い師はそうでもなかった。
占いのことではない。いや、そうか。
とにかく、占い師ではなかった。
実は国家公務員。
政府の特命を帯びた。
日本政府は追い詰められていた。
それは、少子化問題。
出生率は1.0を割り込んだ。
このままでは数十年には日本の人口が5000万人を切ると言う。
もう、手を駒ねいていることはできなくなった。
そこでよく当たる占い師を各地に配置した。
あたるのも当然である。
生年月日、氏名が分かれば、個人情報をいろいろ検索できる。
納税記録を見れば転職していることも分かるし、
警察のデータベースにアクセスすれば、ストーカーから被害を受けたことも分かる。
とにかく信用させる。
そして、結婚に導く。
それが、彼らに与えられた使命だった。
今日も彼らは使命に燃える。
独身を謳歌している女性の前で、眉間にシワを寄せる。
そして、今のままでは良くないと、投げかけるのだった。




