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昔の仲間との出逢い  作者: ニケ
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それからしばらく慌ただしくなりました。私は監禁されたように貴族の部屋に閉じ込められ、何やら周りが騒がしいのです。



部屋の外でガヤガヤと大勢の人があつまる音と、太い大きな声が何かをお願いする声。閉じ込められている部屋を見渡して、私は彼のいる場所の暗さを思い出しました。



どうして牢屋というものは暗いんだろう。床だって優しさが感じられない。罪を犯した者はぞんざいに扱われていいのだろうか。



貴族の部屋にある柔らかいベットを見つめながら、どうして彼のいる場所と自分の場所はこうも違うのだろうと何とも言えない気持ちになりました。



絵を描いていていつも疑問に思っていました。なぜ人は住んでいる場所が違うのだろうと。ある者は粉ばかり巻き上がる灰色の床に寝そべり、ある者は綺麗に磨かれた美しい瑠璃色の床に寝そべることを嫌う。



なぜ生きているのに住む環境が違うのか。



騒がしい外が静かになり、ゆっくりと扉が開きました。外から鍵をかけられていたので、これでようやく外に出れる、助かったと私は安堵しました。同じところで暮らすのは性に合わなかったのです。



前にやってきた静かな身なりのしっかりした老人が真っ青な顔をして私の手を握りました。



「殺人鬼に会ってくれないか。いや、遠くからでも来てくれればいいんだ。絶対に危害を加えられない距離でいいから。でないと看守たちがいなくなってしまう」



ガタガタと震える手が見かけよりも冷たくて、私は眉をひそめました。どうしてこんなに位の高い人が冷たい手をしているんだろう。いつも暖炉のそばで温かいだろうに。彼に初めて会ったときと同じ違和感を感じました。



聞いたところによると、彼はどういうわけか看守はおろか、鉄格子をこじ開け片っ端から殺しているそうです。今までおとなしかったのに人が変わったようでした。



捕まった時もおとなしく、じっと繋がれていたのに。振り返れば殺したのは描こうとした画家たちと担当した看守たちのみだったそうです。



「あいつを連れてこないと殺す、だから連れてこい」



そう抑揚のない声で彼に言われたような不思議な感覚が私のなかに広がりました。私は彼が殺すのはなんとなく、なぜかわかったような気がしました。



彼は何かを訴えている。そして、何かを叫んでいる。理不尽なことへの彼なりの叫びなのか、とも思いましたが、彼の殺人はもっと深い真摯なものが隠されているような気がしました。



とても神聖なもの。亡くなった人には悪いけれど、ある一筋の光の帯を見たような気がしました。



彼に殺されるのは怖くない。ただ、彼の何かとても強く、揺るがない何かに触れて彼の光がなくなっていくのが私は嫌だと思いました。



彼の邪魔をしたくない。そう、強く思いました。



「わかりました。会います。一つお願いがあるんですが」



震えていた老人の手が少しずつ温もりを取り戻していくような、周りの凍りついた時が、ゆるゆると動き出しているような、安堵の息が周りを包み込みました。



「彼と同じ場所にいさせてください」



やっとの思いで温かくなった時間が、またさらに寒さを増して凍りつくのを感じました。

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