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最終話 三度の戦い

 陰謀に巻き込まれそうになっていた6回戦を終え、少しの時間がたった。

 学内トーナメントの決勝戦当日。

 リングには豪とソフィの姿があった。

 長く激しい戦いの頂点が、この2人によって決せられようとしていた。


「豪! お前とは3度目の戦いだ、今日こそ必ず勝つ!」

「俺も負ける気はないから」

 勝負が始まる前から、二人は自分を鼓舞する。

 これは決勝戦。現在の学園ナンバー1を決める戦いだ。


 思えば豪の学園初日、不幸な事故から戦った二人。

 その二人が学園の頂点に立とうとする二人になろうとは、誰が予想できただろうか?

 知らぬ間に巻き込まれた陰謀、そのことにも二人は気が付いていない。

 二人の保護者的立ち位置の神木が、二人には話していないから知る余地もない。


 神木は自身の失態を隠したかったのだろうか?

 いや、子供にいらぬ気苦労をかけたくはない。そう思ってのことだ。

 しかし、学園長の狂行は明るみに出ることはなく、未だに暗闇で胎動を続けている。

 第二第三の卯月が、豪に襲い掛かるのもそう遠いことはないだろう。

 それを知ってはいても、豪やソフィにも話すのが躊躇われるのは、せめて今だけはという想いも少なからずあるのだろう。


 そんな事をつゆほども知らない二人は、アームズ・デバイスを展開し試合開始を今か今かと待ちうけていた。

 ソフィにとっては0勝2敗、三敗目は決定的な負けになるだろう。

 所謂勝負付けと言われる戦いになると予想していた。

 万が一負けてしまえば、ファイターとして一流には成り切れない。なぜなら同世代には自分が生涯勝てないかのしれない豪が立ちふさがるからだ。


 そんな人生の大勝負においても、ソフィは楽しいと感じていた。

 豪と言うでたらめな、恐らく歴史上存在しえない強豪が目の前に立ちふさがり、それを乗り越える機会が巡ってきたからだろう。

 そんな試練を受けられるなら、自分と言う存在も捨てたものではいのではないかと思えるからだ。


 今日ここで、豪と言う強豪に打ち勝つ。

 そう強く心に言い聞かせて試合開始を待つ。


 豪は逆に緊張をしていた。

 女子生徒と戦うのは、初めてではない。

 しかし、自分を良く知るソフィが相手となると、いささか巡り合わせが悪いとも感じる。

 口では強気なことを言ってはみたものの、正直ソフィに対して苦手意識が植え付けられていた。


 事あるごとに、豪のギフトの事故に巻き込まれてきたソフィが事故の後行ってきた行為、鉄拳制裁が豪の脳裏には焼き付いていた。

 度重なるメディカルルーム送りが、豪には条件反射の域まで刷り込まれていることを自覚していたのだ。


 もしかしたら、リング上で事故が起きてしまうかもしれない。

 生死に関わる事故ではない、日常的な事故がリング上で発生してしまう可能性が、豪の心配を掻き立てる。

 

 精神状態が正反対の二人が、心からと強がっての違いはあるが、笑みを浮かべて対峙している。

 

 観客たちも合図を今か今かと待ちわびていた。

 互いに本選出場を決めている二人が戦うのは、ただ単に名誉のため。

 学園で当代最強という、ただの称号をかけた試合が楽しみでならないのだ。

 

 何より血と汗の世界に降り立った、幸運だけで戦う異形のファイターがこれから先どこまで行くのかが楽しみでならないのだ。

 

 熱気が最高潮に達した瞬間、そのブザーは鳴り始める。


 会場に鳴り響く足音が、声援が二人のファイターを鼓舞するかのように音の津波にになって二人に降り注ぐ。


「行くぞ! 豪!」

「ああ、来い!」


 今この時だけは、しがらみから解き放たれた二人が交錯する。

 

 行く先がどんなに暗く見通すことができなくとも、今は只互いだけを瞳に留めて。

 ただ、お互いだけを想い合って。

 二人の戦いが始まった。



   完

これにて終了となります。

短い間ですが読んで頂きありがとうございました。

時間をおいて次回作を投稿したいと思います。

宜しければそちらもお願いします。

では、次回投稿で。

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