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37話 地下研究所

 豪がソフィからパンツを剥ぎ取りシバキ倒されている頃、豪の目の前でもがき苦しんでいた卯月はベッドで寝息を立てていた。

 パッと見は病院のようにも見えるが、ベッド周囲にある機材や部屋の上部に併設されている観察ルームが病院ではにことを示している。

 

 目を開けず、身じろぎもしない卯月の周囲には数多くのスタッフが慌ただしく動いている。

 モニターの数値を観察する者、卯月自身を観察する者、そしてサンプルとなる血液などを採取していく者、それらが異常事態を感じさせるほどせわしなく動いている。

 ある意味手厚い治療を受けているかのような光景でもある。


 ここは学園のメディカルルームの地下に置かれている所謂研究施設となる。

 そしてその存在を熟知している人間が、卯月のベッドを観察ルームから覗き込んでいた。

「ちょっと、負荷が強すぎましたかねぇ?」

「許容範囲内と言うことですが」

「数値的にはそうでしょう、でも実践では予期しないことも起きるものです」

「高く設定し直しますか?」

「負けてしまっては意味がないですからねぇ、このままいきましょう」

「はい」


 卯月を薄い笑みを浮かべながらのぞき込む人物、この学園の学園長がそこにいた。

 そして、いつもの秘書もそばに控えている。

 そして白衣の男性が数人、同室している。


「さて、主な原因は・・・・・・いつものですか?」

「はい、後天的なギフト付与。即ち人口特課(スペシャル)製造による後遺症ではないかと」

「付与が原因ですか・・・・・・彼の性格もでしたっけ?」

「はあ、脳も付与術の工程の中で一部手が入っていますので、致し方ないかと」

「致し方ないですかぁ」


 学園長は説明を受けながら、所々で声色を変える。

 その声が白衣を着た者たちには、恐ろしく聞こえるようでその度に体を震わせる。

 そして、自分達の方を見ようとしない学園長の態度が、より一層緊張を押し上げる。


「彼の復帰は?」

「可能です、しかし再調整を行うのでしたら、時間が足りません」

「調整するとしたら、どれくらい必要ですか」

「二週間、安全を担保するのでしたら三週間は」

「はぁ、じゃあこのまま復帰してもらうしかないですねぇ」


 学園長が手のひらを見せると、秘書は持っていた資料を学園長に渡す。

 それを見ながら、学園長は白衣の男たちに指示を出す。

「サンプルのデータは?」

「解析中です」

「では、早急に。それを彼に反映してください」

「ですがっ!」

「老人たちも何やらやっているようですし、時間はありいませんよ? 早急に」

「は、はい。・・・・・・わかりました」


 それだけを伝えると、白衣の男たちは退室していく。

 後に残された学園長は、まだ資料に目を向けている。

 そこにはある言葉が書かれていた。

『後天的特課製造と管理、育成実験 実験体 第7861号』


 特課とは未来予知など発現確率の低いギフト保有者の総称である。

 ギフトの発現率が低い時代、奇病の様に思われたその能力を解明しようとする者は少なくなかった。

 その時に、先ずは分類が行われた。

 発現したギフトを観察して、類似性から発生原因を模索しようとしたグループは発現したギフトの中で極端に少ない傾向のギフトが存在することに気が付く。

 それが今でいう特課に相当するギフトである。

 能力の強弱ではなく、発現率の数のみで分類されたカテゴリー。

 それが特課である。


 この研究施設で行われているのは、人工的にその特課を創りだそうというものだ。

 卯月に行われている実験は、後天的なギフトの付与。

 即ち、二つのギフトを発現させる実験。

 それの被験者と言うことになる。


 他にも特課にカテゴライズされているギフトを発現させようと、様々な実験が行われているが、卯月の変調に対する対応と施設内での手厚さが、成功率の低さを物語っている。


「卯月君は、難しそうですねぇ」

「ええ、プロジェクトAには耐えられないかと」

「そうですか・・・・・・彼はどうでしょうね?」

「天然ものですから、素材にしてしまうのは些か」

「ですよねぇ、上手くいかないものですね。世の中って」

「はい」

「それと、ここでプロジェクトの名前は出さないようにお願いしますね」

「っ! も、申し訳ありません!!」


 この地下で行っている実験だけでも、露見すれば学園の危機になる無いようであるのに、その施設内でも名前も出してはいけないプロジェクトがあるようだ。

 そしてその素材となる人間もアタリを付けている様子だ。


 ここはファイターを育成する学園。

 公益ギャンブルのような扱いではあるが、周知されている競技の育成校で何が行われているのか。

 その謎は深まるばかりである。


 豪とソフィたちが所属する学園の地下で、そのようなことが行われていることは学園の教師であっても知っているものは少ない。

 そして学園長がいう老人たちと言う言葉。

 それが何を指すのか・・・・・・以前の学園長の言葉と同じ意味を指しているなら、それはトーナメント開催事務局のことを指すものになる。


 そちらはそちらで、何やら行っているかのようなことを学園長は匂わせている。

 豪の目指すトーナメントの奥底で、何が行われようとしているのか?

 それは未だ闇の中であった。

次回投稿は2/11 2:00を予定しております。

では、次回投稿で。

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