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29話 休養日 昼

 学園周囲には、商業施設が多い。そのわけはギフト所有者である生徒たちの行動抑制を意味している。

 能力を把握する、一か所に集める、本人たちの意志で行動制限を行わせる。

 それを目的に学園とその周囲の街のモデリングされた檻のない監獄、それが学園を有する街、左河合市だ。

 日本の北関東に位置する、前時代には学園都市として有名だった某市の東に位置する都市。


 その地域には、各流派や団体の本部を置くことで、成人したギフト保有者も多くとどまり続けられるようにともデザインもされている。

 政府としては暴動を恐れるあまり、遠くに置くことも近くに置くこともできず苦肉の策でこの地域が選ばれた。

 この地は、ギフトオブギフトが誕生した土地でもあり、彼を狂信するトーナメント開催本部からも近いと言うのも大きな理由となっている。


 多くの年月が流れ、ギフト保有者が社会に貢献している今でも、ギフト所有者に対する一般の感情には、根底に恐怖があるのかもしれない。

 ただし、そんなことを知る由もない生徒たちは、この都市を気に入っている。

 なにせ、ここには沢山の商業施設が立ち並び、下手に遠くの都市に行くよりも断然安上がりだし、何より学園のポイントで施設の利用や、買い物も行える。


 現金の収入方法が乏しい学生たちにとって、これ以上ない遊び場である。

 そして何より、ギフトの使用についても寛容である事から、卒業後もこの地域に住み着くことを望む生徒も多い。

 そうした経緯もあり、この地域にはギフト所有者が多くそして、ギフト所有者がギフト所有者を互いに助け合い、監視することで防犯にも役に立っている。


 当然、生徒の情報も地域にはすでに伝わっていて、豪と一緒に歩く美少女と仮面美少女は注目を集めることになる。


 街行く人々に好機の目を向けられる豪は、少し落ち着きがない。

 何より、豪の両隣を互いに占拠して歩かれると、自分の影がどこかに連れ去られる宇宙人のようなシルエットになっている。

 いくらモテたい、美女を侍らせたいと願ってこの地に来たとしても、コンプレックスの身長差をまざまざと見せつけられる状況は精神的にキツイ。


 豪は色々と思い悩む15歳なのだ。

 当然の悩みと言って良いだろう。

 しかし、豪の頭越しに牽制を続けている二人にはさして重要ではないようだ。

 相手の好きにはさせない。それが今最大に重要な項目なのだから。


「栗栖院先輩? 有名人がこんなところ見られたらファンクラブの方が嘆きますよ? 一緒なのはいいですけど少し距離を開けた方がいいのでは?」

「有名なのはあなたも同じでしょう? ゴリ帝さん」

「ギフトせいで目立つんですから、自重してくださいね。二回戦落ち先輩」


 顔だけはにこやかではあるが、その言葉は棘しか見えない。

 男冥利に尽きる状況なのかもしれないが、経験が皆無の豪にとってはコンプレックスを見せつけられるのと同じようにキツイ。

 

 しかし、怪我の功名と言えるのだろうか、豪は次戦の対戦相手への対策などは気にする余裕のなくなっていた。

 下手の考え休むに似たり、豪は相手を気にするあまり答えのない迷宮に嵌りかけていた。

 体格差はどうにもできない、年月が流れてもそれが埋まるとは限らない。まして翌日に控えた試合に間に合う道理はない。

 地力の違う相手には、付け焼刃が通用することはほぼ無いと言って良い。

 今なにを準備すかではない、これまでになにを準備できたかが重要なのだ。

 準備してきた中で、相手とどう戦うかそれが分からない内は、相手を知った内に入らない。

 神木はそれを豪に伝えたかったのかもしれない。

 

 そんなこととは関係なく、豪は神木の出した答えに気付かず辿り着いた。

 幸運によって今の豪は作られている。神木の言ったことに間違いはないのかもしれない。

 

 そうこうしているうちに、豪たちは遊戯施設に到達していた。

 何やらこの後の予定をめぐり、ボーリング対決をする流れになったらしい。

 豪の意志とは関係なくそうなった。

 

 ちなみに女性陣二人は、普段通り制服姿であるがもちろん、スカートをはいている。

 そして、豪は同学年の男子よりも身長のせいで視線が低い。座高も低いので待ち時間のときにも視線も低いままだ。

 ボーリングとは、フォロースルーの時に足をあげる。

 ソフィと栗栖院も例に漏れずちゃんとしたフォームを採用している。

 

 その結果豪の目に何が見えたのだろうか。

 幸運を持ち得ている豪の目に何が映っていたのだろうか?

 それを知るのは、豪本人以外にはいない。

 たとえ神の如き視点を持っていようとも、知る由もない。


「勝ったあー!!」

 対決の結果は、僅差でソフィが勝ち喜びを全身で表現している。

 その横で悔しそうな栗栖院が、ソフィを睨んでいる。

「眼福」

 ボソッと呟いた豪の言葉は、二人には届かず空気に溶ける。


「豪! 近くにプールがあるから泳ぎに行くぞ」

 満面の笑みでそう告げるソフィ、それを聞いて満更でもない栗栖院。

 そして、なるべく表情を変えない事を意識しながら、心の中でガッツポーズをとる豪。

 

「その前に軽く食事でもしていこう!!」

 勝ったことに上機嫌のソフィは、この時の自分を激しく後悔することになる。

 豪の幸運が、プールでどのように作用するかをソフィが思い知るのは、もう少し後での出来事であった。

登場する地名は架空のものです。本当にある地名だったらすいません。

次回投稿は1/26 2:00を予定しております。

では、次回投稿で。

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