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第八姉嫁 外伝『遥か彼方の物語 そのよん』

外伝です。

主人公交代なんてしないぜ!

 カラン♪


「いらっしゃいませ~。」

「こんにちわ!」

「はい、こんにちわ。」

「おかあさん!げんぶさんぱんかって!」

「あなたこれ好きねぇ。」

「だってかめさんのかたちしててかわいいんだもん!」

「はいはい。じゃあこれでお願いします。」

「はい、確かに。」

「おじちゃんまたねー!」

「またねー。」


 母娘が店を出て行く。

 ふぅ。今日はこれで終わりかな。

 あ、皆さんこんにちわ。初月緋色 (アラフォー)です。

 なんか久しぶりだねこのやりとりも。

 いやー、あれから色々ありましたよ。ドラゴン退治とかもしたし。

 そんな俺もいまや二児のパパですよ。異世界転移パワーかなにか知らんけど、全然老けてないけどな!

 あと、この『ベーカリーウイヅキ』の店主でもあります!

 アルゼンだけでなく色んな街からお客さんがくるくらいで、午前中には大体売り切れちゃう人気店ですYO!

 人気の秘密はパン生地に俺の≪聖杯水アクアホーリー≫を練りこんだ魔法パンをウリにしてるのと、個数限定で購入意欲を煽る限定商法です。ぐへへ。

 うちの一番人気はウイヅキ名物ブタコ焼きそばパンだが、子供たちはデフォルメされた玄武さんの形をした玄武さんパンでキャッチザハート!


「さーて、本日の営業はこれで終了っと。片付け片付け~」


 カラン♪


 おあ、お客さん来ちゃった。

 ・・・ん? ずいぶんきっちりした格好の人だな。


「すいませーん、今日はもう売り切れで閉店なんですよー。せっかく来ていただいて申し訳ないんですけど、またのご来店お待ちしておりますー。」

「・・・いえ、パンを買いに来たわけではなく、あなたに用があって来ました。元A級冒険者『該博深淵ライブラリ』ヒイロ・ウイヅキさん。」

「・・・フッ。懐かしい呼び名ですね。それと、一応訂正しておきますけど、私はB級ですよ?」

「ご謙遜を。」


 謙遜っていうか、事実なんだけど。

 さきねぇと一緒に色んな事件に首突っ込んでたらギルドからA級昇格の打診もらったんだけど、断っちゃったんだよね。

 だって俺、B級冒険者の中でも上の下くらいの実力しかないのにA級なんて、とてもじゃないが務まらないっすよ。

 よくラノベとかだとA級冒険者なんてかませ犬の雑魚扱いが多いけど、とんでもねーよ。化け物揃いです。

 あ、『該博深淵』は俺の二つ名です。いぇーい。一部の人しか知らない超マイナー二つ名だけどな~。

 おい、二つ名まで地味とか言うな。この二つ名をもらうだけなのに、それが大陸全土を巻き込む大事件になっちゃったんだぜ?

 まぁそれについてはまた今度で。


「さて、ご依頼内容を聞きましょうか。」

「はい。私はイルドアム王国のとある貴族の方にお仕えしております。その我が主からの依頼になります。」

「ほぉ、イルドアム王国。他国からわざわざこんな田舎まで足を運ぶとは。」

「これはあなたにしか頼めないことなのです。」


 フッ、頼れる男はつらいぜ。

 すると男は一枚の厚紙を取り出した。

 そして。


「ぜひ、『破軍炎剣バーニングピアス』様のサインをいただきたいのです!」

「・・・・・・・・・はぁ。」


 まただよ。

 この前はさきねぇのサインだったし、今回はノエルさんのサイン。

 本人に直接言えよめんどくせぇな。

 まぁさきねぇはその時の気分でサインしてくれることもあるけど、ノエルさんは『サインとかめんどい』で基本NGなんだけどね。


「一応聞きますけど、報酬は?」

「成功報酬で5万パル出します。」


 1パル=10円くらいの価値で考えると、サイン一枚で約50万円か・・・ノエルさんパネェな。

 まぁでも。


「話になりませんね。」

「・・・では、一体いくらなら引き受けてくださいますか。」

「前金で魔剣一本。びた一文まけません。」

「ま、魔剣!? ふ・・・ふざけるな!」


 まぁ普通そうだよね。

 魔剣なんてどんなに雑魚いやつでも50万パル、つまり日本円にして500万円~が相場だし。

 でも申し訳ないけど、お金とかノエルさん一人で街まるごと買い取れるくらいあるんですよね。

 だったら魔剣収集するほうが実用的。


「いや、別にいいですよ。ノエルさんのサインの価値が魔剣より下だっていうならそれはそれで。別に私がサイン買い取ってほしいわけじゃないし?」

「ぐ・・・」


 なんか俺がすごい嫌なやつみたいに見えるけど、こうでもしないと人がいっぱいきちゃうのよ。

 そしてその相手をするのは俺なのよ。めんどいのよ!仕事の邪魔になるし!

 なので、断固たる態度で挑むのだ!家族との時間を確保するために!!


「・・・で、では後日改めて魔剣をお持ちしますので、本日サインをいた「絶対にノゥ!」


 正式な契約書すら『部下が勝手にやったことでーす。私知りませーん。』とか言って反故にする貴族いるからな。クソが。

 貴族とかマジ六法全書で顔面殴りつけたい。ポケット六法じゃなくてガチ六法で。

 俺が法律というものを身をもって教えてくれるわ!


「・・・・・・・・・わかりました。魔剣を確保したらすぐに参ります。」

「お待ちしてまーす。あ、サインの宛名はなんて書けばいいかだんな様に聞いておいてくださいね!」


 ガックリと肩を落とし去っていく男性。

 きっと主人に怒られるんだろうな。かわいそう。

 でも俺の家族との時間を奪われるほうがかわいそうだよね。仕方ないよね。


「さて、片付けを・・・」


 カラン♪


 またかい。今度は誰やねん。


「おじ様ー!こんにちわなのです!」

「お、リィナちゃん!久しぶりー!あれ、一人かい?」


 店に入ってきたのは金髪の美少女だった。

 見る人によっては金髪の美少年にも見える不思議な女の子だ。


「今日は馬車を乗り継いで一人で来たのです!」

「え、王都からここまで一人できたの!? すごい行動力だな・・・」


 ちなみに、この美少女と俺がどんな関係かというと・・・


「このクリフレッド家の誇る天才!リィナ・ウル・クリフレッドにかかればこの程度、造作もないこと!なのです!」


 自信満々に胸の前で両腕を組むリィナちゃん。

 この名乗りを聞けばわかると思うが、俺の愛弟子であるクリスの娘である。

 俺の子供たちより二つ年上で、姉妹弟のように仲が良い。

 というよりも。


「おじ様!ボクのダーリンはどこにいるのです?」


 この通り、俺の息子に惚れている。

 俺の息子に魅かれて惚れているのならいいんだが、これはクリスの教育せんのうのせいなのだ。

 双子の姉弟が生まれたことを知ったクリスが『ぜひボクの娘をお師匠様のご子息の妻に!』とか言い出したんだが、飲みの席だったから社交辞令的なアレだと思って『気がはえぇよクリス~!まぁお前の娘だったらそれもいいかもな~わははは!』って答えたんだ。


 次にうち来た時はもう手遅れだった。

 ちっちゃな子供が赤ん坊に向かって『わたしがあなたのつまです。よろしくおねがいします。』と頭を下げた時は衝撃を受けたね。

 久々にファンタジー異世界すげぇ!って思った。


「あー、うちの子たちは今森にいってるよ。お昼ご飯には帰ってくるから待ってるといい。」

「ではダーリンの妻としてご近所にご挨拶周りをしてくるのです!」

「お前本当に十二歳か!?」


 いや、まぁこの子が生まれてすぐお祝いにいってるから知ってるけどさ。


「ではお昼ごろにまたお伺いするのです!」

「あいよ、いってらっしゃーい。」


 トコトコと歩いて店を出て行くリィナちゃん。

 普通は子供の一人歩きなんて危険だが、我らがアルゼンは大陸屈指の治安の良さを誇るから平気なのだ。

 特にノエル一家の身内ともなれば、街の住人全員が味方みたいなもんだからな。

 リィナちゃん自体も魔法力D・魔法量Cと天才を自称するだけはあるし。


「さーて、ほんとに早く片付け」


 カラン♪


「片付けさせてよ!!」

「何が!?」

「あ、なんださきねぇか。おかー。」

「ただーまー!からの~・・・チュ!」


 ムラサキの投げキッス!

 ミス!ヒイロはすでに魅了されている!


「そしてダイブッ!」

「キャッチザハート!」


 さきねぇが胸に飛び込んできたので両手で抱きしめる。

 そのまま一回転してさきねぇを下ろす。

 結婚して二十年近く経つけど、いまだにこんな感じでバカップルやってます!


「そういや、スレイなんだって?」

「あいつ、生意気にも『頼むから貴族を殴るのは勘弁してください』とか説教してきたからさ。みんなの前でヒザカックンしてやったわ。」

「スレイももう副支部長っていう偉い立場なんだからさ。もうちょっと威厳をもたせてあげないと。」


 説教って言うか、哀願だっただろうなきっと。

 でもさきねぇが貴族を殴るときって大抵セクハラされた時とかケンカ売られた時だからな。

 夫として、弟として、それを止めようとは思いません。

 どんまいスレイ!

 そう考えていると、さきねぇが急に明後日の方向を向く。


「? どったの?」

「この波動・・・私たちのかわいいベイビーズは今日森にいってるんだっけ?」

「確か森でグリーンハーブ採ってくるっていってたけど。なんで?」

「いや~さすが我が娘だと思ってね。やるじゃん。」

「???」


 なぜ娘の話になるんだ?

 するとニヤニヤしていたさきねぇが突然真顔になる。


「今度は何?」

「これは・・・駄馬? いや、駄馬にしては強すぎるな・・・でも朱雀ちゃんよりは雑魚ね。なんだこいつ? ちょっといくか。ヒロ、すぐに森に集合!」


 言うや否や、風のように外に飛び出すさきねぇ。

 ・・・もしや子供たちの身に何か!? こうしちゃおれん!

 俺は魔法袋から装備を取り出し身に着けると、全力でさきねぇの後を追ったのだった。



 続く?

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


ヒロくん本人は自分をB級冒険者と名乗り、冒険者ギルドはA級として扱い、B級以上の上位冒険者たちは「ヒイロはA級」「いや、B級だろ」「B級だけどA級相当じゃね?」と人によって判断がまちまちなので、C級以下の冒険者たちはけっこう困惑してます(笑


次回更新は来月になると思います。

新作のチョイスが難しい~

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