第七十二姉嫁 外伝『ヒイロの幸せなためいき そのさん』
多くの感想をいただきました。ありがとうございます。
様々な意見があるとは思いますが、マリーシアを祝福してくださると作者として嬉しいです。
しかし、おっさんとおばさんがおじさんを巡って白昼堂々争うの図。
ここは地獄かな?
「当然ダーリンが一番なのですが、それでもあなた方よりボクの方がおじ様を好きなのです!」
「さっきから何なんですかあなた達は!! 私が一番お父様を好きに決まっているじゃないですか!!」
そこに参戦する実娘と義娘(予定)。
おっさんとおばさんとこどもとこどもがおじさんを巡って白昼堂々争うの図。
さっきのが地獄なら今は最終地獄かな?
そんなことを思いながら現実逃避していると、何の前触れもなく、まるで死神の鎌を喉元に押し付けられているかのような凄まじい悪寒に晒される。
そして。
バァァァァァァァァァァン!
遠くの空で巨大な火の玉が打ち上げられ花火のように爆発した。
周囲の人間はなんだあれ?と不思議がっているが、俺はあれをやった人間が誰だか知っている。
あんなことをできる人間はノエルさんを除けば一人しかいない・・・
よく見るとさっきまでギャーギャー騒いでいた四人も真っ青な顔をしていた。
「この話はこれで終わりにしよう?」
「「「「賛成です・・・」」」」
もちろん誰からも異論はでないのであった。
マリーシアさんがキョロキョロしながら別の話題を探す。
「えーっと・・・あ、ムラサキさん抜きの行動もなかなか珍しいですけど、この三人の組み合わせも珍しいですね。何してるんです?」
「散歩です。」「デートなのです!」「監視です。」
「え、なんで三人全員違う答えが返ってくるんですか怖い。」
とりあえずかくかくしかじか。
「はぁ。三人とも言ってることは合ってるといえば合ってるんですねぇ。すごい。」
「お二人はどちらへ?」
「これから商工会の集まりがありまして。よければ会長もご一緒しませんか?」
「いや、俺、この子達のめんどうみなきゃならんから遠慮します。」
「そうですか、残念です・・・」
ほんとに残念そうな顔をするソルト。
いや、残念がられても、俺、商工会と何の関係もないし・・・
「・・・ん? あれ、じゃあ小洒落たレストラーンでランチどころか、ここで世間話してる時間とかなくね?」
「いえ、会合より会長と小洒落たレストラーンでのランチの方が大事ですので、もし行かれるのでしたら会合をキャンセルします。」
おいアルゼンの最高権力者。
『当然です』みたいなドヤ顔してるけど、会合を優先してください。
「最悪の場合はコレを代理でいかせます。馬車は私達が使うので歩きで。いや、歩いたら遅れるかもしれんな。おい、走れよ。」
「お前が走れ!」
お互いアーン?アーンと?メンチを切り合う二人。
仲良し、ということにしておこう。
その時、マリーシアさんが何かを思い出したようにこちらを向いた。
「そういえばヒイロさん。うちのバヵ、マル見ませんでした?」
今バカって言いかけなかった?
ちなみにマルちゃんはマリーシアさんの娘さんであり、アルゼンでは【Mを継ぐ者】【Mの再来】【復活のM】などの異名で知られている。
もちろん異名をつけたのも広めたのもうちの姉奥様だが。
本来は街長の娘でお嬢様なんだが成人(とはいえ15歳だけど)になってなお『パパ、ママ。私、ヒイロさんか、もしくは金持ちで才能溢れる優しいイケメンと結婚したいから色々ヨロシクゥ!』とか言って実家でゴロゴロしていることにマリーシアさんがブチギレ。
『テメーコノヤロー私だって色々苦労したんだからお前も苦労しろよアァン!?』と実家を叩き出され、仕方なく冒険者をやっているという生粋のマリーシアムーブをかましている子だ。
「マルちゃんですか? いえ、見てないですね。」
「そうですか・・・まぁヤツのことだから絶対ヒイロさんの目の前に姿を現すでしょうから言付けお願いできます?」
「はぁ、まぁいいですけど。」
「『殺しはしない、大人しく投降しろ』とだけ伝えてください。」
「何事ですかそれ・・・」
何があったら家族間でそんな伝言残す自体になるんだよ・・・
「聞いてくださいよヒイロさん! ひどいんですよ! いきなり家に私の名前の入った請求書が送られてきまして! 覚えがなかったので調べたらあのバカ娘が飲み食いした代金を私宛でツケてたんですよ!」
「人様の娘さんにこういっちゃあなんですが、マジでバカ娘ですねぇ・・・」
ため息をついてしまう俺。
うちの子を見習っていただきたいですね。
真白の顔を見る。
「どうされましたお父様?」
小首をかしげ、キョトン顔の真白。かわいい。
『私、かわいいですか?』なんて聞かれたら『宇宙で二番目にかわいいよー!!』って叫ぶ自信があるね。
一番はさきねぇ。子どもたちには済まないが、それだけは譲れないのだ。
「と、いうわけであのバカ娘とは一度しっかりOHANASHIしないといけないと思いましてね! ほんと誰に似たんでしょうね!?」
シュッシュとシャドーボクシングをするマリーシアさん。
大丈夫だよ。誰に聞いたとしてもあなたの子だって口を揃えて言うから。
「しかしマリーシアさん、よく自分の飲み代じゃないってわかりましたね。色んなところで飲んでツケてるのに。」
「え? あははは、当たり前じゃないですか。私は経費をちょろまかして酒代にするのはもっとわかりにくくやってますからね! 小娘の浅知恵と同じに考えてもらっちゃあ困りますよ!」
「・・・ほぅ。面白い話だな。詳しく聞かせてもらおうか?」
手をボキボキと鳴らしているソルトと『やべ、しまった!?』という顔をしているマリーシアさん。
「・・・逃げるが勝ちで「逃がすか。」グェー!」
そして脱走しようと走り出そうとするが、襟首を掴まれ変な鳥みたいな鳴き声を上げる。
「会長、申し訳ありませんが、このバカとOHANASHIすることもできたので今日はこれで失礼します。」
「お疲れ様。頑張ってね。」
マリーシアさんが『助けてー!』だの『殺されるー!』だの叫んでるけど華麗にスルー。
そのままソルトに引き摺られ馬車の中に放り投げられ、叫び声とともに馬車は急発進したのだった。
「はぁ・・・おば様は相変わらずですね。」
「ボクは面白くてマリーシアおばさま好きなのですよ?」
「まぁ面白いといえば面白いですけどね。」
子どもたちにまで『近所の面白おばさん』扱いされてるマリーシアさん。哀れなり。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
今回のマル秘キーワード『マルちゃん』
物語に何か関係が……?




