第七十一姉嫁 外伝『ヒイロの幸せなためいき そのに』
感想と評価頂きました。ありがとうございます。
まだ読んでくれている人がいる、嬉しいことです。
今回の話はあねおれ読者さんにとっては衝撃の展開が待ってます。
作者も悩みに悩んだ末の決断でしたが、ついにGOサインを出しました。
よろしくお願いします。
娘相手にボケまくるの、たーのしー。
きっとさきねぇもこんな感じだったのかねぇ。
『全く、お父様ってば・・・』とためいきをつく真白と、よくわかってない顔のリィナちゃん。
ごめんね、変な家族でごめんね。
散歩を再開して少しすると、リィナちゃんがポンと手を叩く。
「あ、そうなのです! お義姉さま、良かったらあとで手合わせを所望するのです!」
「手合わせ、ですか?」
「なのです! 王都だと同年代の人たちは雑魚すぎて相手にならないのです。かといってそこそこ強いレベルの人たちだと『クリフレッド家のご令嬢に怪我でもさせたらヤバい』って言って手を抜かれるか避けられるのです!」
手を腰にやってぷんすかしているリィナちゃん。
いやまぁそりゃそうでしょ。名門貴族のお嬢様に怪我させたらって思ったら全力で戦えるかっての。
俺だってそんな依頼あっても避けるわ。
「でもボクが相手にならないほど強い方となるとさすがにお金がかかりすぎるし、そんなに時間をとれる人もいないのです。そこでお義姉さまなのです! ボクが全力でやっても死なないですし、手加減なんてしないで全力でやってくれるのです!」
「まぁ、全力でやってくれと言われればやりますけど・・・」
「もしボクが怪我をしたとしても大丈夫なのです! 骨の一本や二本どうってことないのですし、最悪片目くらいなら潰れてもしゃーなしなのです!」
「「しゃーなくないよ!?」」
ハモって叫ぶ俺と真白。
この子、いくらなんでも武闘派すぎるでしょ・・・
三国志の夏侯惇の転生体かなにかなのですか?
「・・・なのです?」
「「なのです!!」」
『そう? 何か変なこと言ってる?』とでも言いたげなリィナちゃん。
考え方が恐ろしいわ。
この頭のネジのぶっ飛び具合、さすがさきねぇのお気にいりだよ・・・
その時、俺たちの横を豪華な装飾の馬車が通る。
そして通り過ぎたその馬車からでかい声が響いてきた。
「ちょっと止まってください! いいから! 止まって! 止ま、えぇい止まれぇ! ぶっ飛ばしますよ!」
ガン!となにかを殴ったかのような音が響くと馬車が止まり、中から一人の女性が転がるように出てきた。
そしてダッシュでこっちに近づき、キキキィー!と足ブレーキをかけて俺の目の前に止まった。
「ヒイロさんお久しぶりです! お元気でしたか!? 私はヒイロさんに会えなくてすっごく寂しかったですよぉー!」
「あはは、久しぶりっていっても一週間くらい前にも会ったじゃないですか。こんにちわ、マリーシアさん。」
「はい、こんにちわです!」
無駄にテンション高く元気の良いこの女性こそ、アルゼンで悪名高きマリーシアさん(○○歳)その人である。
ノエルさんを除けばこっちの世界に来てから一番付き合いが長く仲も良い人であり、さきねぇの数少ない親友(?)でもある。
「あら、マシロちゃん、にリィナちゃんもいたのね。こんにちわ!」
「こんにちわ、マリおば様。」「こんにちわなのです!」
クリスの娘なのでマリーシアさんも一応顔見知りである。
マリーシアさんが少し屈み、真白と目線を合わせる。
「マシロちゃん、ヒイロさんの娘なら私の娘といっても過言ではないし、何かあったらいつでもこのマリーシアお姉さんに言ってね?」
「はい。思いっきり過言ですけど、ありがとうございますマリおば様。」
「・・・・・・」ジトー
「・・・・・・」ニッコリ
ジト目のマリーシアさんとニコニコ笑顔の真白。
なんか相性悪いんだよなぁこの二人。なんでだろうなぁ?(すっとぼけ)
マリーシアさんがキョロキョロしながら俺に話しかける。
「あれ、ムラサキさんはいないんですか?」
「さきねぇはなんか琥珀連れて修行の度に出ました。数日もすれば帰ってくるプチ修行でしょうけど。」
俺のその言葉に、マリーシアさんの目がキラーン!と輝く。
「チャーンス! ヒイロさん! もしこの後予定がなかったら二人で小洒落たレストラーンで早めのランチなんていかがですか!? マシロちゃんもリィナちゃんもお二人でどうぞって言ってくれてますし!」
「言ってないです。」「言ってないのです!」
「ちょ、ちょっと! 気を使ってくれたっていいじゃないですか! 私達のな「フンッ!」グハァ!?」
突如現れたダンディなおじさまにローキックを喰らい、『す、すねがぁぁぁ・・・!』とか言いながら地面をゴロゴロ転がるマリーシアさん。
「全く・・・うちのマリーシアが申し訳ありません、会長。」
「あはは、相変わらず惚れ惚れするようなローだなソルト。いや、アルゼン街長殿。」
マリーシアさんに華麗なローキックをかましたおじさまはソルト・レイク。
かつてムラサキファンクラブ、通称MFCの会員番号『22』、いわゆるゾロ目組と呼ばれた幹部の一人で、情報収集や組織運営に長けていたため俺の腹心としてMFC運営に大いに貢献してくれた人物だ。
(詳しくは第百四十六姉参照!すごい昔だね!)
そのソルトも今やこのアルゼンで街長を務めるにまで出世したんだから大したもんである。
そしてソルトはアルゼン内では【アルゼン史上最高の漢】としても知られている。
なぜなら・・・
「ちょっと! 痛いじゃない! お情けで結婚してやったくらいで亭主面しないでくれませんかねぇ!?」
「殺すぞ。むしろこっちのセリフだ。お情けで結婚してやったくらいで妻面するな。」
「ちょっと、聞きましたヒイロさん今の! この男、妻に向かって殺すとか言いましたよ!? こわーい!」
「黙れ。」
「グォッ!?」
ソルト の するどいローキック !
マリーシア に こうかは ばつぐんだ !
「ま、またすねをぉぉぉ・・・」
「大変お見苦しいものをお見せして申し訳ありません。」
「いやいや、相変わらず仲良しそうでなによりですよ。」
「仲良くないです。」「仲良くありません!」
そう、なんとこのソルト、マリーシアさんと結婚した剛の者なのである。
・・・この二人が結婚した経緯? 一応聞く? まぁいいけど。
それは俺たち姉弟がC級になったくらいまでに遡る。
俺たちがラムサス支部長の頼みで一ヶ月ほどアルゼンから離れていた時、マリーシアさんはとてつもなく暇だったらしい。
そんなある日、マリーシアさんが酒場で大量のアルコールを摂取していると、隣の席の男性も同じようにガバガバ飲んでいた。それがソルトだったらしい。
元々MFC関連で顔見知りだったことに加え、お互い初月姉弟が好きなこと、酒が強いこと、商人の出であったことなどに共感を覚えすぐに飲み友達になったらしい。
そしたら飲みすぎた次の日、起きたら二人ともベッドの上で裸だったらしい。
いわゆる朝チュンというやつである。
その後はまぁお互い色々あって結婚したが、夫婦というより仕事の相棒という感じのほど良い距離感で付き合っているらしい。
なんか『~~らしい』ばっかりだが、二人の話を聞いた上で要約した感じなので許してほしい。
普通は妻が他の男に気のある素振りでもしたらイラッとしそうなものなのだが・・・
「会長と小洒落たレストラーンで早めのランチをするのは私だ。もちろんマシロさんやリナさんもご一緒に。」
「はぁ? なんで私じゃなくてソルトがヒイロさんと一緒にご飯食べるわけ?」
「私の方が会長をお慕いしているからだ。」
「はぁ~? 意味わかんないしぃ~。私のほうが好きだしぃ~。」
「私の方がお慕いしている。」
「私!」
「私だ。」
「「グヌヌヌ・・・!」」
顔を突き合わせにらみ合うマリーシアさんとソルト。
このようにソルトも俺のこと大好き人間なので特に問題はないらしい。
(正確には初月姉弟ラブ勢だが)
というか、なんで俺は身内と男と変態と子供と動物にしかモテないんだろう?
一番重要なところがぽっかり空いてますよ? おかしいですね・・・?
しかし、おっさんとおばさんがおじさんを巡って白昼堂々争うの図。
ここは地獄かな?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
はい、というわけでマリさんご結婚おめでとうございます。
作中でも言ってましたが夫婦というよりは相棒的な感じで楽しくやってます。
でも未だにヒロくんの追っかけやってる感じです(苦笑)
マリさんの幸せを祝ってもらえると嬉しい藤原でした。




