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第七姉嫁 サキガケ!ムラサキ塾!!の巻 そのに

ブクマは増えてないのに評価してくださった方が何人も。ありがとうございます。

ちょいちょい更新できるようにがんばりたいと思います。


 かわいい。

 俺の姉で奥さんかわいい。




「わかりました・・・ムラサキさんでいいです・・・」

「納得してくれてよかったわ!じゃあ私が男性役で演技をするので、まりすけはそれに対応してね!」

「・・・・・・はい。」


 大丈夫か、マリーシアさんのHPが一桁台になってるけど。


「いくわよ!・・・マリーシア、今日はキミにプレゼントがあるんだ。」

「プ、プレゼントですか?わぁー嬉しいなー?」


 棒読みにもほどがある・・・


「これを受け取ってほしい!」

「こ、これは!?」


 さきねぇは手のひらに乗るほどの小箱をマリーシアさんに渡す。


「あ、開けていいですか?」

「ああ、気に入ってもらえると嬉しいな。」


 マリーシアさんは震えながらも小箱を開ける。

 あの震えは『何が入ってるのか怖い』が七割で『例え女性からだったとしても結婚指輪を渡されるとかちょっと嬉しいと思ってしまう自分が悔しい』三割だな。

 小箱をパカッと開ける。

 そこには。



 そこらへんに落ちてそうな普通の小石が入っていた。


「・・・・・・・・・・・・ん?」


 小首を傾げるマリーシアさん。その他の女性陣もハテナ顔である。

 まぁ『プレゼントされた小箱を開けたら小石が入ってました』とか普通に生きてたらまず経験しないだろうからな。


「えっと・・・・・・・・・わ、わぁー!素敵な指輪ー!ありがとうございますぅー!」


 マリーシア、アレを指輪と判断して猿芝居を続行するようです。


「え、これどう見ても石ころじゃない。これが指輪に見えるってやばいわよ? お医者さんいく?」

「私はどうすればいいんですかぁぁぁぁぁぁ!」


 さきねぇの残酷な言葉に全力で小石を地面に叩きつけるマリーシアさん。

 すると、パンパンと手を叩くさきねぇ。


「はい、これが超愛フルラブを持たない人の反応でーす。」

「普通の反応ですよ!むしろ顔目掛けて投げつけなかっただけ優しいですよ私!!」

「愛を知らぬゆえに哀しみが見えぬのだ・・・」

「ぜんっぜん意味わかんないですけど!何がしたいんですか!? 私をバカにしたいだけですか!?」


 荒ぶるマリーシアさん。

 気持ちはわからんでもないが。


「では超愛フルラブを持つ私たち夫婦・・・フーフ!がお手本を見せてあげましょう。夫婦!である私たちが!」


 夫婦を強調しつつ、くねくねしてるさきねぇ。うちの姉嫁はほんとかわいいなしかし。

 ニヤニヤしながらさきねぇを見つめていると、周囲の『さっさとしろよクソリア充どもが・・・』という不穏なオーラを感じ取ったので石ころを拾って小箱に収めてから芝居を始める。


「んんっ!・・・ムラサキ、今日はキミにプレゼントがあるんだ。」

「ほんとに? 嬉しい!」

「これを受け取ってほしい!」

「まぁ、何かしら!開けていい?」

「うん、どうぞ。」


 さきねぇが小箱を開けると、そこには。

 真っ赤なルビーが・・・・・・・入っていた・・・・・


「まぁ、きれ「「「「「なんで!?」」」」」


 さきねぇの声が周囲のツッコミにかき消される。


「なんで!? さっき小箱に石ころ入れてましたよね!? なんで宝石が入ってるんですか!?」

「絶対入れてたよね!?」

「入れてた!私見てたもん!」

「え、どうやったんですか!?」


 女性冒険者たちが俺たちに殺到する。


「「てじなーにゃ!」」

「「「「「意味わかんないし!?」」」」」


 この手品のすり替え技術だけは子供のころめっちゃ練習したからな。

 異世界の住人たちには衝撃だったろう。

 まぁめっちゃ練習した結果、これしかさきねぇと同じくらい上手にできる手品がなかったんだけど・・・


「えっと、つまり超愛フルラブを持ってると石ころが宝石に変わるんですか?」

「違います。」

「じゃあなんでやったんですか!?」


 やってみたかっただけ。今は反省している。


「えー、すいません、茶目っ気を出してしまいました。テイクツーお願いします。」


 気を取り直してもう一度。


「ムラサキ、今日はキミにプレゼントがあるんだ。」

「ほんとに? 嬉しい!」

「これを受け取ってほしい!」

「まぁ、何かしら!開けていい?」

「うん、どうぞ。」


 さきねぇが小箱を開ける。

 今度はちゃんと小石が入っていた。


「まぁかわいい小石!この丸みと艶がいい味を醸し出してるわ!素敵!大切にするわね!」

「ダウトォォォォォ!」


 マリーシアさんの絶叫が響き渡る。


「さっきからうっさいわねぇ。なんなの?」

「なんなのってこっちの台詞ですよ!絶っっっ対嘘だ!」

「何が嘘よ。こちとら真面目にやってるっちゅーねん。」

「ムラサキさんがそんな殊勝なこと言うはずないじゃないですか!小箱開けて中身が小石だった瞬間ハンマー振りかぶってフルスイングしてるはずです!」


 女性冒険者さんたちはマリーシアさんの訴えに無言の同意をしている。

『何か言って被害を受けたら嫌だからマリーシアさんに盾になってもらって全部言ってもらおう』って感じだ。

 クレバーやね。


「それにですね!小石をプレゼントされて喜んで大切にする人間なんて存在するは「俺持ってますけど。」・・・ず?」

「俺、子供のころさきねぇにプレゼントされた石、(地球の実家の)自分の部屋の緋色ボックスに大事にしまってありますよ。」

「・・・・・・そ、それは小石っぽい宝石ってオチなんじゃないですか?」

「いや、そのへんに落ちてた普通の石ですよ。」


 当時のさきねぇ曰く『このいしすごくない!?まるいしひらべったいしつやつやしてる!すごいいいしゅりけんになりそうだけど、とくべつにヒロにあげる!』ということだった。

 懐かしいぜ。


「乙女・・・」「乙女だ・・・」「ヒイロさんマジ乙女・・・」

「うるさいよ。」


 ちなみにさきねぇからもらったものはほぼ全てとってある。

 そのため、俺の大事なもの入れ、通称『緋色ボックス』は三畳ほどある納戸を丸々使っており、すでにボックスというレベルではなくなっている。

 自分で言うのもなんだが、乙女か。


「そ、それは初月姉弟が特別なんですよ!この大陸で初月姉弟以外にそんな人が存在するはずが「あのー・・・」


 いまだに吠えてるマリーシアさんの言葉をカチュアさんが手を挙げ遮る。


「なんです?」

「・・・・すいません、私も子供のころに兄からもらった石・・・持ってます。」

「なん、だと・・・?」


 顔を真っ赤にしながら手で覆うカチュアさん。


「さすがちゅーべえ。アルゼンで最も超愛フルラブに近い女と言われるだけあるわね。」

「私そんな風に言われてたんですか!?」


 大丈夫、言われてないから。多分今日から言われると思うけど。


「・・・ムラサキさんヒイロさんペアとカチュアさんヴォルフさんペアといえば、アルゼンを代表するラブラブバカップルの両翼。この二組が経験してるということは、もしかして本当に石の贈りあいには何かしらの効果が・・・?」

「石? 時代は石なの?」「やってみる価値はある、か?」「どんな石贈ればいいのかしら?」


 リムルちゃんの呟きに触発されたのか、他の女性冒険者さんたちも乗り気になってきた。

 こいつら、さきねぇに影響されすぎだろ・・・


「じゃあそのへんから適当に石をひろ「バカモノ!!適当に選んだものをプレゼントされてあんたは嬉しいのか!そんなだからスレイと進展がないのよ!」

「バ、バラさないでくださいよ!?」


 リムルちゃんの発言にさきねぇが激オコだ。


「みんな聞きなさい!目を皿のようにして探しなさい!自分が納得できる素晴らしい石を見つけて贈らない限り、相手に何を言われようと何をされようと文句を言う資格はないわ!」

「「「「「なるほど・・・」」」」」


 塾生一同が深く頷き、さきねぇに尊敬の眼差しを贈っている。

 なにこれ宗教?


「よし、これから石探しツアーにでるわよ!ついてきなさい!」

「「「「「おぉー!」」」」」


 さきねぇを先頭に走り去る塾生たち。

 残ったのは俺とカチュアさんだけだ。


「・・・えっと、ヒイロさん、どうします?」

「ん~・・・ここ片付けたら俺も石探そうかな。石をもらったことはあっても贈ったことはないし。」

「そうですね・・・じゃあ私も片付け終わったら探すことにします。」

「カチュアさんも大変ですね。」

「ふふっ。でも楽しんでますから。」

「ならよかった。」


 そして、カチュアさんと二人で倉庫の後片付けを始めるのだった。




 後日。

 俺のところに『なんか女性から石ころをプレゼントされたんだけど、これはどういう意味なんだろうか』という悩み相談を持ちかける男性冒険者が続出した。

 なんと答えればよいか悩んだ結果、『サキガケ!ヒイロ塾!!』が開かれることになったとさ。

 めでたくもあり、めでたくもなし。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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