第六十九姉嫁 あねおれSS『ノエルさん今昔物語~時代に埋もれた黒歴史~』
皆さんお久しぶりです、藤原ロングウェイです。
世間が色々大変ですが、こういう時こそ楽しい話で少しでもホッコリクスクスしてもらうべきなのでは!?と突然思い立ち、一話完結のSSを頑張って書きました。
内容は短いですが楽しんでいただけたら幸いです。
今回はノエルさんの過去話ですが、一番尖ってた時期のノエルさんなので口調が荒いです。ご注意を!
あと作者の力量の無さ故に前半部分は三人称、後半部分は一人称というクソ仕様です。読みにくくて大変申し訳ないです。
生きとし生けるものたちと全てを滅ぼそうとする魔獣たちとの決戦、いわゆる生魔大戦が起こる少し前のこと。
冴えないおっさんと美少幼女が森の中を歩いていた。
「あーめんどくさい。」
「俺は別についてきてくれなんて一言もいってないんだが?」
「お前一人だとしくじるかもしれないからこの私がわざわざついてきてやってんだよアホ。ありがたく思え。」
「カカカカ! すげぇ上から目線なのだよ。」
口の悪い美少幼女に変な笑い方をする冴えないおっさん。
美少幼女が気だるそうに指で髪の毛をクルクルしながらおっさんに話しかけた。
「んで、何するんだっけ?」
「森に逃げ込んだ盗賊の捕縛なのだよ。説明したはずだが?」
「あーめんどいから聞いてなかったわ。」
「カカカカ、こいつめ。」
「ふむ・・・とりあえず森に火ぃつけるか」
「つけるな! なんでそうなる!!」
美少幼女の恐ろしい言葉に戦慄する冴えないおっさん。
美少幼女が自信満々!といった表情で上機嫌に語りだす。
「相変わらずバカだなお前は。盗賊どもも森に火ぃつけばアジトから逃げ出すだろ。そこを待ち伏せしてガツンよ。」
「逃げ切れなくて焼け死んだらどうするのだよ・・・」
「別に盗賊の一人や二十、死んでもよくないか?」
「依頼内容は捕縛なんだっつーの。依頼主の家から奪われた家宝の隠し場所を聞き出さないといかんのだよ。」
「めんどくせ、あーめんどくせ。」
「カカカカ。じゃあ帰っていいぞノエルちゃんよ。」
「おいおいおいおい、ツレナイこと言うなよエドちゃんよ~。クソ忙しい中ついてきてやったこのノエル様の優しさに泣いて感謝すべきだろう? あー?」
変な笑い方をする冴えないおっさんことエドに対し、ガンつける口の悪い美少幼女ことノエル。
「カカカカ、まるでチンピラだイテェ!?」
「誰がチンピラだボケ。殴るぞ。」
「ローキックかました後に言うな!」
「今のは蹴ったんだよ。追加で殴るぞって意味だ。理解れよアホ。」
「マジで恐ろしいエルフなのだよ・・・人類史上最凶の冒険者なのだよ・・・」
そんな感じでキックとパンチを繰り出しながら森を進んでいくノエルとエド。
しばらくするとまたノエルがダルそうにエドに語りかける。
「んで、盗賊どものアジトの目星はついてるのか?」
「んー、常識的に考えれば防御を固めやすい森の中央部だろうな。加えて近くに水源があるだろうからそこらへんを探して虱潰しだ。」
「っかー、めんどくせー。やっぱ燃やそう。」
「だから燃やさないっつーの。あとエルフのくせに森を燃やそうとか言うな。頭おかしいのだよ。」
「おかしくねぇよ。私が『法』で私が『正義』なんだよ。」
「カカカカ! 相変わらずヤバすぎなのだよお前さんは。」
『あーダリー』とか言いながら歩くノエルとエド。
しばらくするとまたまたノエルが口を開く。
「つーかさ、もう死んだら死んだで仕方なくないか? 依頼主には『私達が見つけた時には盗賊どもはすで死んでました!』って言えばいいだろ。家宝は諦めろ。」
「カカカカ! ダメダメ。この依頼は失敗できんのだよ。」
「あん? なんでだよ。」
「これはシナサスのギルド長から紹介された依頼だからな。成功すればデートしてくれる約束なのだよ!」
「はぁ・・・また女か。もう死ねよお前。」
エドの言い分に呆れ顔のノエル。
「カカカカ! 死んだら依頼失敗ではないか。美人の依頼を失敗することなどできんのだよ!」
「くっだらねぇ・・・はぁ。ほら、森を燃やさないんだったらさっさと盗賊どものアジトを見つけて死なない程度に痛めつけて連れ帰るぞ。」
「カカカカ! ノエル、俺は良いやつだから忠告してやろう。お前、見た目は良くてもその口の悪さと短気っぷりを直さないとモテなイテェ!!」
「私はすでにモテている。モテモテだ。だからその話題はやめろ。」
ノエルにハラパンを決められ蹲るエド。
「うぅ、わざわざ魔法で腕力強化して殴るとかありえんのだよ・・・」
「ほら、さっさといくぞ!」
「全く、こんな様子じゃノエルの将来が心配で夜も眠れないのだよ。」
「超巨大なお世話だ。つーか夜寝れないなら昼間寝ればいいだろ。何も問題はないな。」
「カカカカ!」
そうして二人はそのまま森の奥へと入っていくのだった。
~それから数十年後のある日のお話~
「あーめんどくせぇ」
「まぁまぁ、そう言わずに。」
私、ノエル・エルメリアはヒイロとムラサキが受けた依頼を見学するために二人の少し後ろを歩いて会話を聞いていた。
なぜ? 依頼達成した後にすぐ『ちゃんと出来たな!』って褒めてあげなきゃいけないだろ!!
「んで、何するんだっけ?」
「森に逃げ込んだ盗賊の捕縛だって。ラムサスさんがちゃんと説明してくれたでしょ。」
「カツラムサスのカツラが気になって聞いてなかったわ?」
「お姉さま・・・」
ムラサキのアホっぷりにヒイロも苦笑いだ。
全く、誰に似たんだか・・・
「ふむ・・・ピコーン! お姉ちゃん閃きました! とりあえず森に火をつけましょ♪」
「つけないよ!? なぜそうなる!?」
「いい、ヒロ? 盗賊どもも森に火がついたらアジトから逃げ出すでしょ? そこを待ち伏せしてガツンよ。」
「逃げ切れなくて焼け死んだらどうすんのよ・・・」
「ん~・・・別に盗賊の一人や二十、死んでもよくない?」
ムラサキの言い分には納得できる部分が多々ある。
しかし発想がやや野蛮だな。
ほんとに誰に似たんだ。
「まぁ俺もそう思うけどさ。でも依頼内容が盗賊の捕縛になってんだよね。なんか貴族様の家から奪われた家宝の隠し場所を聞き出さないといけないとかなんとか。」
「めんどくせー、あーめんどくせー。息をするのもめんどくせぇー!」
「どこのエリアボスだよ。」
よくわからない踊りを踊りながら先を進むムラサキと、その横で困りながらも嬉しそうな顔でムラサキを見ているヒイロ。
ほんとにヒイロはムラサキのことが好きなんだな・・・
「んで、盗賊どものアジトの目星とかついてる系?」
「んー、常識的に考えれば防御を固めやすい森の中央部だろうね。加えて近くに水源があるだろうからそこらへんを探して虱潰しかなー」
「めーんーどーくーさーいー。やっぱ燃やそ☆」
「だから燃やさないっつーの! かわいく言ってもダメ! 落ち着け!」
「落ち着いてるわよ? でもほら、私が『法』で私が『正義』みたいなとこあるじゃない? にゃん?」
「あるあ・・・ねーよ。かわいさに騙されるところだったよ。」
・・・あれ? なんだろう、すごい既視感があるぞ。
なぜだか昔、同じような会話をどこかで聞いた覚えが・・・
「つーかさー、もう死んだら死んだで仕方なくない? 依頼主には『私達が見つけた時には盗賊どもはすでに死んでました! 犯人は一体・・・キィー、バタン! ネクスツコナンズヒンツ!』とか言えばいいじゃん。家宝は諦メロン。」
「口でコナン再現すんなし。つーかラムサスさん紹介の依頼だから失敗したらラムサスさんの顔潰しちゃうことになるからダメー。」
うーむ、聞いた覚えというか、いつかに自分の口からそんなようなことを話したことがあるような・・・
まさか・・・確かあれは・・・
「・・・ちょっとー、エルエルはどう思うー?」
思考の海に沈んでいると、突然ムラサキが話を降ってくる。
よくわからんがとりあえずヒイロの意見が正しいだろう。
「・・・ん? ああ、そうだな。話聞いてなかったけどヒイロの意見でいいんじゃないか? それが正しい。内容はわからんが私がその正しさを保証しよう。」
「でたわよこの親バカ。母親はすぐ息子贔屓するのよね。あーやだやだ。」
「誰が母親だ!」
全く・・・しかし、ヒイロとムラサキの話を聞いていたら完全にあの時のことを思い出してしまった。
今から考えるとなんというか、驚くべきことに、あの当時の私はムラサキと同レベルだったらしい。
・・・なんか嫌だな。ムラサキと一緒にしてほしくない。
私は空を仰ぐ。
「天国のエドよ。あー、なんだ。その、悪かったな。あの当時は色々迷惑かけた。すまん。」
ふふ、まさかこの私がエドに向かって謝罪する日が来るなんてな。
そう思い目を閉じた瞬間。
『カカカカ! いいってことなのだよ』
私は驚き、目を開けて後ろを振り返る。
そこにはただ木々が生えているだけであった。
「・・・・・・」
「エルエル、どしたん?」「ノエルさん、どうしたんですか?」
前を向くと、キョトンとした顔の二人がいた。
「・・・フフ、なんでもない。さぁ、さっさと盗賊たちを見つけて死なない程度に痛めつけて連れ帰るか!」
「ウェーイ!」
「うーん、言ってること自体は正論なのに、なぜこんなにもしっくりこないのか・・・」
エド、それに皆、すまんな。
私はまだまだソッチにいくことはできん。
その代わり、私がソッチにいったら面白い話をいっぱい聞かせてやる。
だから、それまで私とこの二人を見守っていてくれ。
そうして私達三人はそのまま森の奥へと入っていくのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
ただのノエルさん黒歴史話かと思わせて、最後にちょっと良い話大作戦。
自分の作品に限らず、なんかこういう演出大好きなんですよね。
あと誰が得するのかよくわからないエドさんのプロフィール置いておきます。
『エド・シャベルーマ』
本編でも名前だけはたまにちょろっと出ていた、ノエルにエクスカリバーを叩き折られた人。
ケンカは強いが女と酒と賭博には弱い、30代半ばくらいの冴えないおっさん風冒険者でノエルの戦友。
典型的なダメ男風味だが面倒見は良く、当時はぐれ狼のようだったノエルを心配してちょくちょく世話を焼いていたため、周囲からは『出来の悪い兄と反抗期の妹』のように見られていた。
変な笑い方と「なのだよ」が口癖。あねおれ本編時では故人。




