第六十八姉嫁 マリーシアを救え!愛と友情のデストロイ大作戦!!の巻 そのろく
デストロイ大作戦編の最終話でございます。
ちょこちょこ雑なところもありますが、この粗っぽさもあねおれっぽいかな~と思ったり?と自己防衛システムを起動させておきます(苦笑)
「ちょっとお話がー、つか何やってんすか。」
「なんかむーさんのバトル観戦も飽きちゃったからおやつ食べてます。」
くっちゃくっちゃとスルメイカっぽいものを食べながら答えるマリーシアさん。
なんか脱力ですわ。
「ギルバートくんって知ってます? なんか昔会ったことあるらしいんすけど。」
「ギルバート? ふむ・・・あ、あれかな。マイセン商会のところの子かな? 昔ちょっとめんどう見てあげたことがありますね。」
「なんかマリーシアさんの婚約者、あそこのおっさんじゃなくてそのギルバートくんらしいっすよ。」
「え!? マジで!?」
驚きのマリーシアさん。
その口から『マイセン商会か・・・』とか『年下・・・』とかのつぶやきが聞こえる。
「マジです。しかもなんかマリーシアさんが初恋の人らしいっすよ。」
「えぇー!?!? マジでぇー!?!?」
「マジでマジで。どうします? 追い返します? 会います?」
「うむむむむむ・・・か、かっこいいですか?」
結局顔なんですかそうですか。
やはり女性は姉か二次元だな・・・
「なかなかのフェイスでしたよ。少なくともブサイクではないかと。」
「・・・ではマリーシアとしてではなく、極悪野盗団【みどりのたぬき】の首領としてちょっとお話聞きましょうか。」
マリーシアさんをギルバートくんのところまで連れて行く。
「首領を連れてきたぞ。アルゼンにいきたいならこの人と話を通してもらおうか。」
「あ、ありがとうございます!」
頭を下げるギルバートくん。
まぁ本来は俺らがイチャモンつけて通せんぼしてるだけなんだがね・・・
ごめんね。
「私が極悪野盗団【みどりのたぬき】の首領です。なんでもお見合いに来たとか?」
「は、はい! そうなんです!」
「その初恋の人っていうのは、どんな人なんです?」
「はい! 僕が幼いころにその人に可愛がってもらったことがありまして! 美しくて優しくて奥ゆかしくて笑顔が素敵で誰からも好かれるその人に当時の幼い僕は恋してしまったんです!」
「ほぅ!」
チラッとこっちを見てドヤ顔するマリーシアさん。
こっち見んな。
「僕が幼いながら商店を継ぐことに悩んでいた時期があったんです。その時に彼女がこう言ってくれたんです。『人には生まれながら、家柄や血筋などの因縁がある。それを受け入れた上で運命に立ち向かい自ら道を切り開いてこそ人の魂は輝く』と。その言葉で僕は立派な商人になろうと決心することができたんです!」
「ほぅほぅ!!」
またチラッとこっちを見てドヤ顔するマリーシアさん。
だからこっち見んな。
「大きくなっていつか立派な商人になったら彼女に結婚を申し込もうと思っていたんですが、その後に着の身着のままで家を飛び出したという噂を聞いて心配していたんです。」
「ほぅほぅほぅほぅ!!」
またまたチラッとこっちを見てドヤ顔するマリーシアさん。
だからこっち見んなっつってんだろ。さきねぇ呼ぶぞ。
「なるほどなるほど。そんなにもその美しくて優しくて奥ゆかしくて笑顔が素敵で誰からも好かれるマリーシアさんとかいう聖女と結婚したい、そういうことですね?」
「そうなんです!」
・・・これ、詐欺で訴えたら勝てそうな気がするな。
「あなたの気持ちはわかりました。」
「ほ、ほんとですか!?」
「そのお見合いですが「え、なに、仲良くトークしてるってことはもう終わった系? じゃあもう覆面とっちゃうわよ蒸れるし。」
マリーシアさんをセリフを遮って、いつのまにかヴォルフを倒してこっちに来ていたさきねぇがよっこいしょとかいって覆面を脱ぎ、その御尊顔が顕になる。
我が姉ながら、相変わらずふつくしい・・・
すると。
「あぁ!? マリーシアさんですね! お久しぶりです! 僕です! ギルバート・マイセンです!」
「誰がまりすけだボケェ!」
「ゲフゥ!?」
突如錯乱したギルバートくんに殺人キックをお見舞いするさきねぇ。
・・・もしや彼は心の病気なのでは?
「その美しさ! 僕の知っているマリーシアさんがさらに美しく成長した姿に違いません!」
「・・・あの、髪の色とか違いますけど、そこんところどう思います?」
「年月が経てば髪の色くらい変わるでしょう。」
「・・・・・・そうですか。」
俺のツッコミに『何言ってんの?』みたいな顔をするギルバートくん。
いつもならブチギレてフルボッコにしているところだけど、なんかもう病気の彼が不憫すぎて・・・
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!
とりあえずこの美少女はマリーシアさんではなくうちの姉だということを説明する。
「そうだったんですか・・・いや、それでもいです! 一目惚れです僕と結婚してください!」
「するかボケェ!!」「何言い出してんだボケェ!!」
突然さきねぇにプロポーズしだしたギルバートくんはさきねぇとマリーシアさんの愛と友情のツープラトンが決まる。
5Hit・・・10Hit・・・20Hit・・・バカな、まだコンボ数が増えるだと!?
「10年早いのよー!!」「受付嬢なめんなー!!」
「ゲブラッ!」
二人のフィニッシュ技が同時に決まり、ボロ雑巾のように吹っ飛ぶギルバートくん。
お薬だしときますねーお大事にー。
「ほんと失礼すぎですよもう! おととい来やがれですよ! ペッ!」
「なんかもう疲れたし飽きたからもう帰らない?」
「帰りましょ帰りましょ。まったく、クソみたいな一日でしたねー」
「そのクソみたいな一日につき合わされた私達の身にもなりなさいよねー?」
「すいませんねぇ。アルゼンに戻ったら酒場でパーッとやりましょう!」
「いいわね!」
さきねぇとマリーシアさんはすでに帰り支度を始めていた。
なにこのグダグダな感じ・・・
「あのー、大丈夫ですか?」
するとぶっ飛ばされて地面に倒れているギルバートくんをカチュアさんが助け起こした。
相変わらずお優しいこと。
「あ、ありがとう・・・! なんて優しい人なんだ! 僕と結婚してください!」
「節操なしですかー!!」
「グハァ!?」
突然カチュアさんにプロポーズしだしたギルバートくんだったが、カチュアさんの怒りのアッパーによって宙に浮く。
さらに。
「女の敵ぃぃぃぃぃ! 死すべしぃぃぃぃぃ!!」
「ギャァァァァァァァ!」
狂気のアウロラちゃんがギルバートくんを空中でつかみ、伝家の宝刀である風魔法を利用した超投擲で投げつける!
そして茂みに頭から突っ込んで動かなくなった。
なんか漫画だったら『ゴミはゴミ箱に!バァーン!』みたいなフキダシついてそうな光景だわ。
「さっさとアルゼン帰るわよー! 宴会じゃー!」
「はーい!」
「すぐ参ります・・・」
さきねぇから声がかかると、カチュアさんもアウロラちゃんも何事もなかったように小走りで合流しにいった。
その場に残ったのは、俺と疲れた顔をしたおっさんだけだ。
おっさんが呟く。
「はぁ・・・やっぱりこうなったか・・・だから嫌だったんだよ・・・」
「あのー、お疲れ様です。大丈夫ですか?」
「え? ああ、ありがとうございます。ギルバートぼっちゃんは惚れっぽくて、今回みたいなことをもう何度も繰り返していて・・・いい加減疲れました。」
「大変ですねぇ・・・」
どこの世界も中間管理職って大変なんだね。嫌な世の中だよ。
「とりあえず、今回のお話はなかったことでいいですか?」
「はい、こちらとしてもそれでお願いできれば助かります。」
愚痴を少し話した後、おっさんはギルバートくんを回収して去っていった。
そして俺の心には満足感も充足感もなく、ただただ疲労感と徒労感でいっぱいなのだった・・・
「ヒーロさーん! 早く帰って飲みましょー! 今日は私の奢りですよー!」
少し離れたところで笑顔のマリーシアさんが手を降っている。
・・・ふむ、まぁもしマリーシアさんが結婚してアルゼンからいなくなったら少し寂しいしな。
これでよしとしておこうか。
「はーい、今行きますよー!」
そうして俺も皆のところへ走っていったのだった。
・・・あ、クリス忘れてた。回収せねば。
だが、マリーシアはまだ知らなかった。
ここからが本当の地獄だということを。
ヒイロとムラサキ、ヴォルフとカチュア、クリスとアウロラはカップルであり、ガチ独身なのは自分一人だけだということを。
年下の六人はいちゃついているのに自分だけガチ独身という恐怖の宴の始まりはすぐそこまで迫っていた・・・
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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