第六十七姉嫁 マリーシアを救え!愛と友情のデストロイ大作戦!!の巻 そのご
間に合ったZE!
えー、書き上げたオチの展開に納得できずに急遽書き直し、今日の更新に間に合うように頑張った結果、全五話だったはずでしたがなぜか全六話になりました(笑)
なんででしょうね……?
「・・・もういちどだけ言います。帰ってもらって、いいですか?」
俺はムキッ!とマッスルポーズをとって商人に威嚇する。
あまり私を怒らせない方がいい・・・
「うぅ・・・ギルバートぼっちゃん! どうしましょう!?」
商人があせったように馬車の中に声をかける。
・・・ギルバートぼっちゃん?
すると中から若くてそこそこかっこいい兄ちゃんが出てきた。
「あの人に会わずに帰るなんてでき・・・変態だ!?」
「もうええっちゅーねん。」
出てきた若い兄ちゃんが俺の姿を見てビックリしている。
そんな? そんな変か? 俺の感性が麻痺してしまっているのか?
「うう、こんな変態と話すの嫌だなぁ・・・あのー、ちょっといいですか? お金を払いますからここを通してもらえないでしょうか?」
「残念ながらここは極悪野盗団【みどりのたぬき】の縄張りなんでねぇ。そもそもどうしてアルゼンに?」
「・・・お見合いに来たんです。ですから通していただきたいんです!」
・・・お見合い?
もしやマリーシアさんのお見合い相手はこの小太りのおっさんではなく、こっちの若い兄ちゃんなのか?
この世界基準でいったらマリーシア26歳とかおばさんやぞ。(失礼)
「お見合い、ねぇ。相手はどんな人なの?」
「実は、僕の初恋の人なんです。」
あ、ちげーわ。マリーシアさんじゃないわ。だって初恋の人だし。
「僕が幼いころにその人に可愛がってもらったことがありまして。美しくて優しくて奥ゆかしくて笑顔が素敵で誰からも好かれるその人に当時の幼い僕は恋してしまったんです。」
どう考えてもマリーシアさんじゃないね。(確信)
「僕が幼いながら商店を継ぐことに悩んでいた時期があったんです。その時に彼女がこう言ってくれたんです。『人には生まれながら、家柄や血筋などの因縁がある。それを受け入れた上で運命に立ち向かい自ら道を切り開いてこそ人の魂は輝く』と。その言葉で僕は立派な商人になろうと決心することができたんです!」
「素敵な方ですね。」
「でしょう!?」
目を輝かせながら熱弁するギルバートぼっちゃん。
マリーシアさんも見習ってほしいわ・・・
「大きくなっていつか立派な商人になったら彼女に結婚を申し込もうと思っていたんですが、その後に着の身着のままで家を飛び出したという噂を聞いて心配していたんです。」
「ふむ、何があったんでしょうね?」
「わかりません・・・彼女のことだから大陸の崩壊を防ぐために自らの身を犠牲にしようと考えたとしてもおかしくありません。」
そこまで来るともう聖女やん。メインヒロインかよ。
「ですが、先日ついにアルゼンにいると情報が入ったんです。そしてこちらからぜひお見合いを!とホルン商会にお願いしまして。」
「はぁ、なるほどー」
・・・ホルン商会?
なんか聞き覚えがあるような、ないような?
「ああ、早くマリーシアさんにお会いしたいです!」
「ストップ。おいちょっとカメラ止めろ。」
「え?」
はー話聞いて損したわーマジ損したわー時間の無駄だったわーとんでもない茶番だったわー。
「え? なんだって?」
「な、何が?」
「名前だよ名前。そのすんばらしーお見合い相手の。言ってみ?」
「マ、マリーシア・ホルンさんですが・・・」
「よし、トポリス王国第四王女ミレイユ・ヴァン・ガスト・トポリスの御名において、お前を虚偽申告罪で逮捕する。」
「なぜ!?」
「罪状はたった今伝えたばかりだが?」
はーヤダヤダ。困ったもんだよほんと。
しかしどうしたもんか。驚くべきことにマジで言ってるっぽいんだよな。
でもどう考えても彼の中のマリーシアさん像は思い出補正バリバリなんだよなぁ。
今のマリーシアさんの現状を伝えて素直に信じてもらえるか、受け入れてもらえるかが心配だが・・・
自然な感じでちょっと聞いてみるか。
「つかぬことをお伺いしますが。」
「はい? なんでしょうか。」
「酒場でお酒を飲んで酔っ払って騒ぎまくって椅子ぶっ壊したり人殴ったりして、最終的にゲロを吐いて床に転がったまま朝を迎えるような女性とかどう思いますか?」
「なんですかその女性。アルゼンにはそんな女性がいるんですか?」
怪訝な顔をするギルバートくん。
お前の大好きなマリーシアさんのことだよ。
「ええ、まぁ・・・どう思います?」
「正直ムリですね。僕は家事ができないとか人の話を聞かないとか就寝中の歯ぎしりがすごいとか大抵のことは許せますけど、お酒にだらしない女性だけは絶対我慢できないです。マリーシアさんを見習ってほしいですよ全く。」
「ア、ハイ。」
バッターアウッ! ゲームセッ!
うん、会わなくていいねこれ。つーか会わせない方がいいね。
マリーシアさんは『体はジョッキで出来ている。血潮は酒で、心はたこわさ。』ってくらいのアルコールモンスターだからね。
本人も酒場で一気飲みしながら『ヒイロさん聞いてますぅ!? 酒と書いていのちと読んですよぉ!! アヒャヒャヒャヒャ!!』とか言ってたし。
良き思い出は良き思い出のままにしておきたい、んだがなぁ。
ひょっとしたらマリーシアさんに春が訪れる可能性が(限りなく低いが)ゼロではないから無断で追い払うのもなんか気がひけるんだよなぁ。
「どうでしょう、通してもらえませんか?」
「ふむぅ~ん・・・」
・・・うむ、相談しよう。そうしよう。
そうすれば俺だけの責任ではなくなるからね。リスク分散は基本ですよね。
さきねぇとヴォルフは・・・まだ戦ってんのかよ。バトルジャンキーですか。
クリスは馬に乗せられて気絶してるから起こすのも忍びない。
ということは。
「ちょっとそこで待っててもらっていい? 二人、集合!」
俺の呼びかけに仲良しになったらしく楽しそうにお話していたカチュアさんとアウロラちゃんが近寄り、三人で頭をつき合わせる。
「あのぼっちゃん、マリーシアさんに異常で過剰な幻想を抱いているみたいだけど、追い返すべきか、マリーシアさんと会わせるべきか。卿らの意見を求む。」
「うーん・・・一応マリーシアさんにお伝えしたほうがよいのでは?」
「私はどんな内容だろうとお兄様の意見に従います。」
控えめなカチュアさんの意見と初月姉弟絶対主義みたいなアウロラちゃんの意見。
ふむ・・・ここは俺の考えよりも女性の意見を参考にしたほうが良いか。
特にカチュアさんはこの世界では数少ない常識人枠だからね。
「ではカチュアさんの意見を採用します。拍手。」
俺の発言にパチパチと手を叩くアウロラちゃんと、それに少し照れたようなカチュアさん。
やばい、ちょっとかわいいな。
そんなこと口に出したら聖戦が発動してしまうから口が裂けても言えんが。
少し離れた場所で『なんで三人で話してるんだ? 知り合いなのか?』みたいな顔をしているギルバートくんの元に向かう。
勘のいいガキは嫌いだよ・・・
「そこのぼっちゃん。ちょっと首領に聞いてみっから待ってろ。」
「は、はい! よろしくお願いします!」
周囲をキョロキョロと見回すと、岩の隅っこの方でじっと座っているマリーシアさんがいた。
「首領ーマリ首領ー。」
「・・・ん? ああ、どうしたんですかひーさん。」
「ちょっとお話がー、つか何やってんすか。」
「なんかむーさんのバトル観戦も飽きちゃったからおやつ食べてます。」
くっちゃくっちゃとスルメイカっぽいものを食べながら答えるマリーシアさん。
なんか脱力ですわ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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