第六十五姉嫁 マリーシアを救え!愛と友情のデストロイ大作戦!!の巻 そのさん
評価人数100人突破しました~、と書いたらもっと増えてる!
久しぶりに日間ランキングにあねおれの名前が載ってほっこり(笑)
感謝……圧倒的感謝……!
さきねぇが何か言いたげだったのでアイコンタクトで『ちょっと黙って』とメッセージを送ると『E・D・F! E・D・F!』と返ってきた。
よくわからないけどわかってくれたみたいでよかった。
「それで、どうしたんだい?」
「実はですね・・・・・・」
~かくかくしかじかしかくいむーぶ~
「・・・というわけなんですが、ラムサスさん的にどうなんです?」
「うーん・・・まぁいいんじゃない?」
ええんか。
「別に殺すとか金品奪うとか誘拐して身代金を要求するとかじゃなんだろう?」
「ええ、今のところのマリーシアさんの話では。」
「なら多分大丈夫。黒よりのグレーってやつだけど。」
黒よりのグレーって、どちらかと言うと大丈夫じゃなくね?
「あの、俺ら野盗扱いで討伐対象になったりしません?」
「野盗っていうのは人を襲って殺したり金品奪ったり誘拐したりするやつらだからね。今回に関してはそれをしなければそこまで大事にはならないと思うよ。」
「そんなもんなんですか?」
俺の疑問にチッチッと指をふるラムサスさん。
くそ、この人ぱっと見だとダンディに見えるから動作もかっこよく見えるな。
普段はアレな人だが。
「旅の途中で襲われた。でも殺されてないし金品も奪われてないし誘拐もされてない。この時点で野盗じゃなくてこの件には何かあると考えるのが普通。襲われた者を調べたらお見合いの旅行の最中だった、となれば『ああ、妨害工作ね』となって終わりさ。」
「妨害工作されたってわかったらダメなんじゃ・・・?」
「いや、昔からお見合いの妨害ってないわけじゃないから。大体が花婿か花嫁どちらかがどちらかを試すって形で。『この試験を乗り越えられないならお見合いは破談!』的なね。」
「なるほど。」
「そしたら私達はどこまでやればいいのかしら?」
頬に指をやり首をかしげるさきねぇ。かわいい。
そして嫌な顔をするラムサスさん。
「・・・できれば怪我させずに追い返すのが最善。怪我させてもかすり傷程度なら次善。骨折くらいまでやっちゃうと向こうが怒って何かしらの行動を起こす可能性があるからおすすめしない。」
「つまり、カツラムサス支部長の話を統合すると・・・殺したり何か奪ったりしなければ何してもおk?」
「話聞けや! 怪我させずに追い返すのが最善だっつってんだろが!! 俺の話のどこをどう統合したらそうなんだよ、アホ!!」
「それじゃ襲撃にならないじゃないのよこのハゲ!」
「はぁ!? ハゲちゃうわ! お前マジでいっぺん叩き潰したろかボケ!!」
「やんのかァア!? お前明日の朝刊載ったゾ!?」
某雑誌のように頭に『!?』マークをつけながら胸ぐらをつかみ合い罵り合うさきねぇとラムサスさん。
こえぇーよヤンキーかよ。
「違うでしょ。襲撃が目的じゃないでしょ。お見合いの破談が目的でしょ。」
「チッ。じゃあ脅しかー。脅しはもう飽きたなー。」
「飽きるくらい脅したことあるんですか? お二人はやっぱり罪を犯してアルゼンまで逃げてきたんですか?」
「何がやっぱりなのかしらね?」
「痛い痛い痛い痛い! アイアンクローが! アイアンクローが私の頭にぃ!?」
また無駄なことを言いアイアンクローを決められるマリーシアさん。
何が彼女をそうさせるのか・・・
「まぁマリーシアとお見合いするくらいだからそこいらの弱小商会のドラ息子とかこ汚いおっさんとかだろう。ちょっと脅せばすぐ逃げ帰る程度の小物さ。」
「そうですね、マリーシアさんとお見合いするレベルですもんね。」
「おっとー? 流れるようにさらっと私がディスられてますよー?」
ちなみに『ディスる』『ディスられる』はこの世界になかった言葉だが、さきねぇ発信のオリジナル言語として無駄に受けてしまいアルゼンで広く使われるようになってしまった。
異世界文化への外来生物混入の瞬間であった。
「まぁ僕の立場的にガンガンやっちゃっていいよ、とは言えないけど見て見ぬ振りをさせてもらうよ。うちとしても急に職員が抜けられるのはちょっと困るからね。」
「ふっふっふ、私は冒険者ギルドアルゼン支部の中でも飛び抜けて優秀、私でこのギルドは保ってる的なところありますからね!」
「いや、ただ単に人員確保の問題だけど。補充要員が来てくれれば明日いなくなってもなんとかなるよ。」
「またまたぁ~!」
ニヤニヤ顔のマリーシアさんに対して真顔のラムサスさん。
つらたん。
「それに、だ。」
「?」
「・・・大変なのはヒイロくんであって僕は関係ないし。」
「おい待てや。」
「信頼してるよヒイロくん! ハッハッハッハ!」
「ハッハッハッハ!」
馬鹿笑いしているラムサスさんとマリーシアさんに若干の殺意を覚える俺であった。
「では、支部長の許可も下りたところで具体的な計画を詰めましょうか!」
「言いたいことは二つ。一つ、俺は許可は出していない。勝手にやれ。俺は知らん。一つ、計画を詰めるのはいいが、俺の部屋でやるな。以上。」
というようなやりとりがつい先日ありまして、それから冒頭の馬車襲撃事件発生直後の今に至るわけです。はい。
ね? 俺悪くないでしょ?
「な、なにごとだ!」
襲撃を受けてか、馬車の中から小太りのおっさんが出てくる。
なんか偉そうな感じだし、恐らくあれがマリーシアさんの婚約者なんだろう。
さすがにあれと強制結婚はかわいそうだな・・・少しは頑張るか。
「な、なんか変態たちが襲ってきて・・・!
「は? 変態? そんなバカな、って変態だぁぁぁ!?」
「「失敬な。」」
俺たちの姿を見た馬車の御者さんとおっさんが悲鳴をあげる。
ちなみの俺たちはそんな変な格好はしていない。
身元がばれないように黒い布に目と口の部分だけ切り取った、由緒正しいオーソドックスな強盗覆面をかぶっているだけだ。
同じ覆面をしたマリーシアさんにコソッと聞いてみる。
「・・・この格好、そんな変ですか?」
「正直、襲撃をお願いした私でも引くくらい変態的な格好です。」
「マジすか・・・」
俺もさきねぇもこれしか思いつかなかったけど、異世界ではアンフォーマルらしい。
つーかだったら計画時に言ってくれよ。言うのおせぇよ。
「さっさと消えないなら、この妖刀ノエルンルンの刃が真っ赤に染まっちまうゾォ?」
おっさんたちに向かって、アルゴスさんのとこで売ってた安物のショトートソードを舐めながらヘッヘッヘと笑うさきねぇ。
ノエルンルンて。ネーミングひどくない?
「このムーさんに敵対しようなんて思わないことだなぁ! この人は気に入らないことがあれば蹴るは殴るは当たり前、よくわからない変な武術決めてきたり電気バリバリ流す、それはそれは恐ろしいやつなんだゼェ!?」
ノリノリのマリーシアさん。実体験からか例えが的確ですね。
あと小物臭すごい。
「せ、先生! 賊、っていうか変態がでました! お願いします!」
「・・・チッ、めんどいがしゃあねぇ、やってやるか。」
馬車の奥から人影がのそっと出てくる。
この声は・・・!?
「アルゼン近辺で悪事を働こうたぁおめでたいアホど・・・変態だな!?」
「兄さん、そんな・・・変態ですね!?」
現れたのは俺たちがよく知る獣人兄妹、ヴォルフとカチュアさんだった。
つーか変態変態うるせぇわ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




