第六十三姉嫁 マリーシアを救え!愛と友情のデストロイ大作戦!!の巻 そのいち
まだ俺のターンは終わってねーぜ!スキル≪追撃≫発動!
手札から『久しぶりの最新話』を特殊召喚!読者さんにダイレクトアタック!
というわけで久方ぶりの最新話です。
全五話の予定ですが、ぶっちゃけ現在進行形で五話目を執筆中なのでどうなるかわかりません(笑)
全三話の予定だったのに……おかしい……
あと感想いっぱいいただきました。
まだあねおれを楽しみにしてくれている読者さんが残っていることに驚きつつ、とても嬉しかったです。
ありがとー!
「いよーう、そこの小粋な馬車に乗ってる商人さん。痛い目にあいたくなかったらここから失せな!」
「ひ、ひぃ! 野盗だ!」
どうもみなさんこんにちわ。初月緋色です。
今の会話を聞いていただければわかるように、現在『異世界で頻繁に起こるイベントランキング』のトップスリーに入るであろう野盗襲撃イベントの真っ最中です。
ほんとならね、俺がチートでTUEEEして助けた女の子に惚れられるフラグが立つところなんだけどね。
そんなことは起こりえないわけですよ。
まぁ俺がさきねぇ以外に興味ないっていうのが大きいけど、それを抜きにしてもフラグは絶対に立ちません。
なぜなら・・・
「この悪の大首領、〝賄賂上等〟の二つ名でお馴染みのマリシーア率いる極悪野盗団【みどりのたぬき】に逆らって生きて帰れると思わないことね!」
「ちょっとムラサ、むーさん! 名前! 私の名前出さないで!」
「素人ねぇ、偽名って言うのは本名に近いほうが使い勝手いいのよ?」
「いや、近いっていうかほぼ実名ですよね!?」
うん、まぁ、なんだ・・・その、俺たち、野盗側なんだよね。すまない。
襲撃してる方だからフラグの立ちようないよね。
ああ、別に俺たち姉弟が畜生道に落ちたとか金に困ったとかそういうわけでもない。
勘違いはしないでほしい。ちゃんと理由があるんだ。ぜひ聞いてほしい。
実はあの馬車は悪者で運んでる荷物は違法の品とか誘拐犯とか、だと思うでしょ?
残念! ただの普通の商人さんでした!
・・・・・・つまり、今の俺たちは普通の商業馬車を襲っています。
待って。ひかないで。お願い。ほんとに理由があるんだ。
それは・・・
「あれ、どうしたんですかヒイ、ひーさん。そんな熱い視線で見つめられたら私、妊娠しちゃうかも!」
「死ね。」「殺すぞ。」
「姉弟揃って無感情無表情で恐ろしい言葉を吐かないでくださいよ!? 暗殺者ですか!?」
全ての元凶はこのポンコツ受付嬢にあるのだ・・・
「今日はどする?」
「なんか面白い依頼とかイベントないかしらねー。」
さきねぇとアルゼンの街を歩きながら今日の予定を考える。
一応ギルドにいく予定なんだけど、最近はあんまりパッとしたクエストもないんだよね。
まぁ平和なのはいいことなんだけどさ。
「・・・アレね、隕石とか落ちてこないかしら。」
「それ面白イベントですまないよね!?」
「隕石っていってもほどほどの大きさのやつよ。それで落下した隕石を調べると中から記憶喪失のおじいちゃんが出てきて。」
「ああ、そんな感じのやつね。てかそれ世界規模の話になっちゃうじゃん。アルゼンから長く離れちゃうことになっちゃうよ?」
「あー・・・じゃあアレでいこう。記憶喪失のおじいちゃんは実は組織のナンバー3でさ。」
「それも世界規模じゃん・・・よく考えるとRPGってスケールでかいね。」
「世界を救うわけだからね。さもありなん。」
クソどうでもいい話をしながらギルドに到着する。
結局何も決まってない。
「ちょりっすー。」
「あ、ムラサキさん! チィーッス!」「おはようございます!」「おはざーす!」
軽い挨拶をしながら我が物顔で歩くさきねぇに周囲の冒険者たちが一斉に挨拶する。
ベテラン風吹かしてるけど、俺らまだ冒険者社会で見ると新人とあんま変わらん活動年数だからね・・・
「今日も美人っすね!」
「あっはっは。褒めるな褒めるな。当然のことで。」
「どうやったらムラサキさんみたいな素敵な美人になれますか?」
「守るべき者を見つけ、愛を育てなさい。HP回復量もアップするわ。」
「今日の運勢を占ってください!」
「小吉。待ち人来ず、されど小銭を拾うと出たわ。ラッキーアイテムは虹色の魔剣。」
いろんな人がいろんな話を振ってくるが、ちょう適当に答えるさきねぇ。
まぁみんなこの適当さが面白くて適当な話題を振ってるだけなのでウィンウィンなのだ。
つーかラッキーアイテムのハードルくっそ高いな。どこにあんだよそんなの。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「!?」
突然おたけびが聞こえると、こっちに向かって走ってくるマリーシアさんの姿があった。
そしてキキキーっと音が鳴るレベルの急ブレーキで俺の前に止まった。
「ヒイロさん、ようこそいらっしゃいました! ウェルカーム!」
「帰ります。」
「待って待って待って待って。」
クルリときびすを返して帰ろうとするが、マリーシアさんに服を引っ張られる。
「いやー、実はヒイロさんに美味しい話を持ってきたんですよ!」
「帰ります。」
「まぁまぁまぁまぁ。」
クルリときびすを返して帰ろうとするが、マリーシアさんに服を引っ張られる。(二回目)
「まりすけ、さっきからヒロにベタベタしすぎじゃない? 錆びたノコギリで手首切り落とすわよ?」
「こわっ!? 殺人鬼ですか!?」
さきねぇがギコギコとノコギリをひく真似をすると、マリーシアさんが俺の後ろにサッと隠れる。
「・・・ふっふっふ。これを聞いてもそんな態度がとれますかね?」
「なによ。」
「暇をもてあましているお二人に朗報です! なんと、特別クエストの依頼があります!」
「「帰ります。」」
「嘘でしょ!?」
クルリときびすを返して帰ろうとするが、マリーシアさんに服を引っ張られる。(三回目)
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくださいよ! いつもだったら特別クエストっていったらほかのやつらなぎ倒してでも受けようとするじゃないですか! なんで今日だけそんな塩対応なんですか!?」
だって嫌な予感しかしないし・・・
「特別クエスト、受けたいでしょ? 受けたいですよね? さぁ受けよう!」
「ノー。」
「即答! もうちょっと考えて!」
「・・・決めたわ。」
「ほ、ほんとですか!?」
「ええ・・・アンブレラを、ぶっ潰すのさ!」
「意味がわからない!! そんなの私と関係ないところで勝手にぶっ潰してくださいよ!!」
この人達の頭、大丈夫かな。
「つーかさー、なんでそんなクエスト受けさせたいのよ。」
「いやー・・・その、実はですね。その特別クエスト依頼したの、何を隠そう私なんですよね。てへっ!」
「「帰ります。」」
「なんで!?」
クルリときびすを返して帰ろうとするが、マリーシアさんに服を引っ張られる。(四回目)
「いや、私の依頼ですよ!? ムラサキさんの唯一無二の親友とも言える私の! そこは『なんだって!? それは大変だ、詳細なんか聞かずに喜んで依頼を受けよう! 報酬もいらない!』ってなるところじゃないですか?」
百歩譲って依頼を受けるとしても、報酬はいるでしょ常識的に考えて。
俺ら冒険者ですからね。
「とのことですが、姉上。どうします?」
「ふふっ、何言ってるのよヒロ。私の唯一無二の親友とも言えるまりすけの依頼なのよ? 詳細なんか聞く必要ないじゃない。」
「ム、ムラサキさん!」
「断る!」
「知ってましたー。ええ、これでもけっこう長い付き合いですからね。ムラサキさんなら絶っ対そう言うと思ってました。だからヒイロさんにお願いしてるんですぅ! べー!」
胸を張り拒絶の意思を示すさきねぇに対し、あっかんべーをするマリーシア26歳・・・ちょっとキツイな。
まぁマリーシアさんとは仲良しだし、こんな怪しい仕事を引き受けるのも俺たちくらいしかいないだろうし、仕方ないか。
「・・・はぁ。とりあえず聞くだけ聞きましょう。」
「ありがとうございますヒイロさん! じゃあさっそくクエスト受注しますね!」
「待てや。とりあえず話を聞くっつったろうが。話はそれからだ。」
「チッ。しょうがないですね、まずは別室に移動しましょうか。」
マリーシアさんが俺とさきねぇの手をぎゅっと握って空いている部屋にひっぱる。
はぁ・・・なんかすげぇめんどくさそうなことに巻き込まれそうな予感。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
あねおれの最終兵器マリさん。
ただのモブ受付嬢だったが破格の使いやすさにより準レギュラーを獲得した女傑。




