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第六十姉嫁 姉がリトルでリトルが俺で、の巻 そのろく

「決まってるでしょ。いつ元に戻るかわからないし、目指すはあそこしかないわ。」

「ですよねー。」


 二人で目的地を目指して歩くことしばし。

 俺たちの前にはお馴染みといっても過言ではない場所、冒険者ギルドがあった。




「うぃーっす。」「こんちゃーす。」


 二人でいつものようにギルドの中に入るが、まわりの冒険者たちからめっちゃ見られてる。

 まぁそりゃそうだが。


「マリすけの姿が見えないわね。」

「ほんとだ。今日お休みなのかもね。残念。」

「いえ、今日はシフトに入ってる日だから絶対出勤してるわ。」

「・・・なんでシフト知ってんの?」

「本人から『この週の何曜日はギルドいますよー』って伝えられてるから。」


 仲良すぎだろ。

 まぁ地球むこうではさきねぇにここまで仲の良い友人はいなかったから弟的にちょっと嬉しい。

 俺にべったりだったから俺を置いてどっかに遊びにいくってことがまずなかったからな・・・

 こっちではたまに女子会とかも開いてるみたいだし喜ばしい限りです。


「お、ラウルのおっさんいんじゃん。どうせ暇だろうしやつに聞くか。」


 真昼間から一人で酒を飲んでいるダメ男に近づいていくさきねぇ。


「すいませぇん! まりーしあおばさんどこにいるかしりませんかぁ?」

「・・・ん? なんだお嬢ちゃん。マリーシアの知り合いか? それにしてはえらい鈍器姉弟にそっくりだな。」

「いいからさっさとこたえなさいよ。」

「「口悪っ!」」


 ついラウルさんとハモってしまった。


「マジでムラサキみたいな女の子だな・・・マリーシアおばさんならそこの受付窓口にいるよ。」


 ラウルさんが『あんま関わらないようにしよう』みたいな顔で一つの窓口を指差す。

 あれ、でもそこの窓口は『×』の看板が置いてあるけど・・・


「ん? ああ、よくわかってない感じか。ちっちぇえもんな。よし、こっち来な。」


 窓口前までいき、小さい俺たちが見やすいようにその辺から切り株のイスを持ってきてくれるラウルさん。

 この人、なんだかんだいって面倒見いいんだよな。

 じゃなかったらただのセクハラおじさんとして始末されてるだろうが。

 ・・・あれ、受付窓口からなんか変な音が聞こえるぞ?


「ほれ。よく見てみな。まぁ見なくても音でわかるだろうが。んじゃな。」


 ラウルさんが運んできてくれた切り株イスに飛び乗るさきねぇと俺。

 窓口に置いてある『×』の看板をどかすと、そこには。



「ンゴゴゴゴゴゴゴ! フスー・・・ンゴゴゴゴゴゴゴ! フスー・・・」



 アイマスクをしたまま足を開いてイスにもたれかかり、周囲にイビキを撒き散らしながら寝ているマリーシアさんの姿があった。

 以前に俺があげたアイマスクがこんな堂々とした居眠りのために使われるとは・・・

 しかもアイマスクにはご丁寧に漫画みたいなパッチリおめめが書いてあるし。ナメんな。


「姉様、アレから強い妖気を感じます。」

「うむ。あれは恐らく悪名高きアルゼン妖怪『(シゴト)バック(レ)ベアード』じゃ! 仕事はちょくちょくサボるくせに賃金向上や有休消化を声高に叫ぶ悪しき妖怪じゃ!」

「なんて恐ろしい・・・」


 そしてさきねぇの『じゃ!』の語尾がちょっとかわいい。さすが俺のさきねぇ。

 さて、さすがに起こすべきなんだろうが、ここまで堂々と居眠りされるとそういう任務なんじゃないかと邪推してしまいそうだ。

 そう思っていると、スリープ中のマリーシアさんがニヤニヤしはじめた。


「グヘヘヘヘヘ。」

「・・・ねぇ、ヤバくない?」

「なんかアブナイ薬打ってラリってるみたいにも見えるわね・・・」


 なんかキモいを通り越して怖いの領域に達している。

 さすがのさきねぇもあまりの不気味さにちょっと引き気味だ。


「グヘ、グヘヘ・・・もうやだ~、ヒイロさんのえっち~。」

「目潰し!」

「ぎぃやぁぁぁぁぁ!!」

「やはり『(シゴト)バック(レ)ベアード』の弱点は目だったわね。」


 マリーシアさんが気味の悪い寝言を言い出した瞬間、さきねぇの目潰しが襲い掛かった。

 つーか弱点も何も、アイマスクをしていたとしても熟睡してる最中にいきなり目潰し食らったら誰であってもクリティカルヒットみたいなもんだろ。


「なななな何事ですか!? 私の快眠を邪魔するとは、支部長と副支部長以外なら許しませんよ!」


 偉い人なら許すのか。さすが権力に弱いことで定評のあるマリーシアさんっす。

 そして俺たちを見ると、キョトンとした顔をする。


「って子供? なに、君たちここで何してるの?」


 困惑しているマリーシアさん。

 俺たちの正体には気付いていないようだ。

 すぐに正体を看破したタイチョーさんはさすがアルゼン防衛隊長の一人なだけはあるな。


「んん? っていうか君たち、なんか私の友人と未来の旦那様にそっくりね?」

「目潰し!」

「ぐぉぉぉぉぉ!」


 今度はアイマスクなしの直で目潰しを食らい床をのたうち回るマリーシアさん。

 NGワードに早く気付くんだマリーシアさん! そのうち失明するぞ!

 はぁ・・・一応声だけかけるか。


「あのー、大丈夫ですか?」

「はっ!? その私を心の底から心配しているかのような優しい口調は、ヒイロさん!」


 二度の目潰しの影響からか、まだ目を開けられないマリーシアさん。

 ん~、そこまで心配してないかな。あなた頑丈だし。


「あれ、でもヒイロさん、なんか今日声高くありません?って・・・アレ?」


 やっとこさ目を開けたマリーシアさんだが、まだ俺たちの正体に気付かないようだ。

 目をゴシゴシしながらパチクリさせている。

 そのマリーシアさんの目の前に笑顔のさきねぇが立ち塞がる!


「まりーしあおばさん! はじめまして! ひいろとむらさきのむすめですまりーしあおばさん!」

「・・・・・・・・・え?」

「どうしたのまりーしあおばさん! だいじょうぶまりーしあおばさん! まりーしあおばさん! まりおば! まりおば!」


 無駄に『マリーシアおばさん』を連呼するさきねぇ。

 これをいいたいがためにこの姿でここまで来たというのか。

 一方のマリーシアさんはというと。


「・・・・・・・・・・・・・・・ぐぅ。」


 寝やがった! 現実逃避にもほどがある!


「マリーシアさーん! 起きてくださーい! 仕事中ですよー!」

「ハッ!? 夢か・・・ムラサキさんの娘を自称する悪魔に目潰しをされる夢を見るなんて、何かの前兆かしら・・・」


 ぜぃぜぃと荒い息を吐きながら額をぬぐう仕草をするマリーシアさん。


「・・・ん?」

「・・・どうも。」


 マリーシアさんと目が合う。

 俺も挨拶しておくか。


「はじめまして。ひいろとむらさきのむすこです。よろしくおねがいします。」

「・・・・・・・・・」


 ぺこりとお辞儀をすると、俺を凝視するマリーシアさん。

 そして。


「・・・・・・・・・ぐぅ。」

「もうええっちゅーねん。」

「あばばばばばばば!!」


 さきねぇ の でんきショック !

 マリーシアおばさん に こうかは ばつぐんだ !


「っていやいやいやいや。こうかはばつぐんだ!とか言ってる場合じゃないだろ俺。」


 自分でノリツッコミをしてしまった。


「さきねぇ、さすがにちょっとやりすぎじゃない? いくらマリーシアさんでも電撃は・・・」

「あーびっくりしたぁ。完璧に目が覚めちゃいましたよ! なんなんですかいったい!」

「お前の存在がなんなんだよ! 絶対元D級冒険者じゃないだろ!」


 電撃食らってビックリするだけとか生命力と防御力高すぎだろ!

 冒険者続けてもタンク役で絶対活躍できたよあなた!


「そのツッコミ・・・まさか、ヒイロさんなんですか!?」

「ツッコミでわかるんかーい・・・」

「じゃあ先ほどの、気持ちよく昼寝してたらヒイロさんとムラサキさんの子供を名乗る悪魔たちから目潰しされた上に電撃をお見舞いされるという悪夢は、正夢?」


 正夢ってそういうものじゃないと思う。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


今回は「マリすけからむと筆がサクサク進むわ~マリすけいいわ~」とか言いながら一人でニヤニヤしながら書いてました(笑)

電撃はマリすけが強いのではなく、ムラサキさんが手加減して低出力でビリビリしているからノーダメだっただけです。イジメ、かっこわるい!

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