第六姉嫁 サキガケ!ムラサキ塾!!の巻 そのいち
皆様お久しぶりです。
新作の戦記書いてたんですけど色々あって全没にしました!HAHAHA!
というわけで今回の更新は三話分と短い感じですがよろしくお願いします。
あねおれ最終話から数週間後のお話です。
「私がムラサキ塾塾長、ムラサキ・ウイヅキである!!」
さきねぇが大声で宣言する。
その前には十数人の女性冒険者たちが。
さてさて、どうなることやら。
まずはこの謎の集会『ムラサキ塾』について説明せねばならないだろう。
そのためにはさきねぇの人となりから話さないといけない。
初月紫。
俺の姉であり、奥さん。嫁。ワイフ。
美人で巨乳なうえ、家事全般得意でスポーツ万能、ダンスに音楽、はては生け花や着付けまでできるスーパーお姉ちゃん。
もちろんここまで色々極めていると当然のように人気も抜群である。
だが、普通はここまで完璧であり男性人気もあるとなると同性からは嫌われるのが常であろう。
しかし、うちのお姉様は女性人気も高い。
理由としては
・男に一切媚びない毅然とした態度。
・弟一筋で他の男に目もくれないストレートな愛情。
・権力者から酔っ払いまで、どんな人が相手であろうとセクハラを許さない力強さ(暴力的な意味で)。
・(弟に関係がなければ)たいていの事は笑って済ます器の大きさ。
・同性ですら魅了する弾けるような笑顔
などなど、これ以外にも色々あるが大体こういった感じで好かれており、今や自他共に認めるアルゼン女性冒険者のリーダー的存在になっている。
そんなさきねぇであるから、実は女性から相談を受けることも多い。
そしてこのムラサキ塾はそこから始まっている。
一番最初はカチュアさんのファッションセンスを鍛え上げ、色々コーディネートしたことだった。
知らないかもしれないが、基本的に冒険者の格好はダサい。
まず、D級以下の冒険者はお金がない者が多い。
そのため、装備品はほぼ店で売られている大量生産の既製品に頼ることになる。
そして、有用な装備は広く知られ、多くの冒険者が愛用している。
つまり、服装がそっくりカブるのである。
想像してみてほしい。
人通りで賑わう繁華街にいったら、ほとんどの人間が同じ形、同じ色の上下シマ○ラ装備だったら、と。
たとえば、アルゼンで冒険者をしているE級以下の人の三人に一人は全身レザー装備である。
通りで石を投げたら、高確率でレザー装備の冒険者に当たるのだ。
もちろんこれは仕方がない。レザー装備は安いし軽いし使いやすいとお得な装備だから。
なので、格好がカブるとしてもレザー装備を使う者は多い。仕方ないのだ。実用的なのだから。
・・・だが、冒険者がそれに納得しているかどうかは別問題である。
そこで我らがお姉様、さきねぇの出番である。
カチュアさんのありふれたハードレザー装備に対して、行動に支障がない範囲でリボンを飾ったり刺繍を入れたりとおしゃれな改造を施したのである。
すると、アラ不思議。
『あら、あの獣人の女の子のレザー装備、ちょっとかわいいんだけど。』
『あ、ほんとだ!かわいい小物でアクセントつけてる!』
『そっくりな装備が多いから、ワンポイントがすごいいい感じに目立つわね・・・』
と、カチュアさんの格好が女性冒険者の目に留まるようになったのである!
そしてカチュアさんは真面目なので、服装について聞かれるたびに『ムラサキさんに教えてもらって・・・』と律儀に答えた。
すると多くの女性冒険者がさきねぇに『私もお願いします!』とファッションチェックを頼むようになった。
その人数が余りに多かったためぶち切れたさきねぇが開催した企画がこの『サキガケ!ムラサキ塾!!』である。
ファッションについて、料理についてなど女性冒険者からのリクエストやその時の気分で内容が決まるのだが、今回の議題は・・・
「では!素敵な旦那様をゲットしたこの私、ムラサキ塾長による絶対運命黙示録恋愛講座を始めます!」
「起立・・・礼!よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
カチュアさんの号令により女性冒険者さんたちが一斉に立ち上がり頭を下げる。
ちなみに、カチュアさんは塾長補佐として毎回(強制)参加している。
カチュアさんは(ファッション以外では)女子力がかなり高いので有能だし、本人自身もこのムラサキ塾を通じて色んな人と仲良くなれるのが嬉しいらしいので無問題。
「みんなー!結婚したいかー!?」
「「「「「おぉー!」」」」」
「素敵な男性と結婚したいかー!?」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
建物がビリビリ震える。すげぇパワーだなおい。
まぁここは商工会所有の倉庫でそれなりに大きいので人もたくさん入れるので、多少騒いだところで文句も言われない。
ちなみに、MFCの解散集会が開かれたのもここである。
解散したはずなのになぜか今でも活動が続いている謎の組織だ。
俺、名誉会長だけど。
「結婚に必要なもの、それは・・・超愛である!」
「フ、フルラブ・・・?」ザワザワ
さきねぇの言葉にざわめく一同。
グーグル先生に尋ねても答えが返ってこないような単語ですね。
「先生!フルラブとは一体なんなのですか!」
「いいでしょう、口で言ってもわからないでしょうから実演してあげましょう。まりすけかもん!」
「・・・え!? 私!?」
最前列で食い入るように話を聞いていたマリーシアさんがキョドる。
「ええ、超愛を持たないもの日本代表としてあなたを招集するわ!」
「すごい悪意ある指名方法!てゆーかそもそもニホンってなんですか?」
「じゃあ私が男性役やるから、まりすけはそこ立ってて。」
さきねぇ、安定のスルー。
「え、男性役なら別にムラサキさんがやらなくてもそこにいるヒイロさんにおねガッ!」
いきなり奇声を発するマリーシアさん。
ヌルポ?
二人の足元に目をやると、さきねぇがかかとでマリーシアさんのくつをグリグリしていた。
恐ろしあ・・・
「え? なんだって?」
「ヒ、ヒイロざんにおねがいじたいんですげど・・・」
「え? なんだって?」
「ひぎぃぃぃ!」
さきねぇのくつグリグリの速度があがった。
なんかもう靴で火を起こそうとしているかのようだ。
マリーシアさんの顔からは汗がダラダラ垂れている。
何があなたをそこまで駆り立てるんだマリーシアさん・・・
「・・・・・・ふぅ。わかったわ。私もヒロの新妻として、夫を貸し出すこともやぶさかじゃないわ。なんてったってまりすけだものね。」
「さきねぇ!?」「ムラサキさん!?」
俺たち以外の人間も驚いている。
あの弟に近づく女ぶっ殺すマシーンだったさきねぇが、他の女に俺を貸し出すとは・・・
大人になったもんだ。ちょっと寂しい。
「じゃあいくわよ。んん・・・『これでいいかなマリーシアさん。』」
「「「「「こわっ!?」」」」」
さきねぇの口から俺そっくりの声が発声される。
いつのまに声帯模写スキルまで手に入れたんだ・・・
「いやいやいやいや、ムラサキさんの口からヒイロさんの声が聞こえるとか怖すぎなんですけど!?」
「『うるせーな凡乳。』」
「ヒ、ヒイロさんはそんなこと言わない!」
ぶるぶる震えながらも抗議するマリーシアさん。
「『マリーシアさん、昨日吐いたゲロのにおいがまだ残ってますよ(笑)』」
「ぐはぁ! ちゃ、ちゃんとお風呂入ったし!臭くないし!」
「『あれ? ワンワンと犬の鳴き声が聞こえるぞ? ああ、負け犬の遠吠えだったか(笑)』」
「もうやめてぇ!ヒイロさんの声でそんなこと言わないでぇ!」
がっくりヒザをつくマリーシアさんと、勝ち誇った顔をするさきねぇ。
「いや、さきねぇ、さすがにマリーシアさんがかわいそうな上に俺の株も下がりそうだからそろそろやめない?」
「せっかく身に着けたスキルだけど使う場面がなかったから、つい。テヘ!」
かわいい。
俺の姉で奥さんかわいい。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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